転ばぬ先の杖
面倒臭がり屋の物臭な性格だからこそ、
放置して何もしないで余計に面倒臭い事になるのを回避する為に奔走すると思うんだ←
昼食をサイゼリヤで済ませた後。
正樹は直ぐに帰宅し、自室に戻ると窓の前に赴いて窓を上げ、シャッターを閉めた。
光源たる陽の光が遮られて部屋が暗くなると、正樹は部屋の電灯を灯してボヤく。
「面倒な事になりそうだ」
辟易すると共にボヤキを漏らした正樹はプライベート用と仕事用。
その2つのスマートフォンを机に置くと、バッテリーを抜き取り始めた。
「本当なら叩き壊して棄てておきたい所なんだけどな……」
慣れた手付きで2つのスマートフォンからバッテリーを抜き取った正樹はボヤくと、仕事用のスマートフォンからSIMカードも抜いた。
SIMカードをハサミでチョキンと切断すれば、2つに別れて使い物にならなくなったSIMカードをズボンのポケットに入れ、机の引き出しへと手を伸ばす。
引き出しを開けた正樹は何故か引き出しの中に手を入れず、外に出た引き出しの下へと手を伸ばしていた。
引き出しの裏とも言える所には、1枚の小さな黒いビニールテープが貼り付けられていた。
テープを剥がすと、其処にはSIMカードがあった。
「なーんで、帰ってからもこんな事をしてんだろ……」
呆れと共にボヤキを漏らす正樹はSIMカードを取ると、用済みのビニールテープをゴミ箱に棄てる。
それから程無くすると、突如として部屋の中央に扉が現れた。
現れた扉が開くと、涼子が部屋に入って来る。
「おじゃましまーす」
暢気な声と共に現れた涼子に正樹は謝罪する。
「悪いな。休みにしたのに無理言って……あ、 スマホはどうした?」
謝罪と共にスマートフォンをどうしたか?
正樹に問われると、涼子は答える。
「スマホなら指示通りにバッテリー抜いた。もち、仕事用の方もSIMカードを抜いて処分したわ」
涼子が答えれば、正樹はコレからする事を告げる。
「なら良い。さて、コレから"犬小屋"を放棄する為の作業するぞ」
正樹から告げられた瞬間、涼子の表情が険しいものとなった。
「"犬小屋"を放棄するの?」
"犬小屋"。
もとい、セーフハウスを放棄する事を選んだ正樹に確認すれば、正樹は肯定すると共に理由の一端を答えた。
「嫌な予感がする。だから、先ずは法律に触れるヤベェ物を向こうにある君のバンカーに運び込む……そうすれば、ガサ入れされた時にも逮捕される理由が無くなる」
正樹の答えた理由に涼子は納得する。
「成る程ね。つまり、放棄の下準備を……ん?何でガサ入れ対策が理由に入ってるの?」
だが、同時に疑問も覚えた。
その疑問に対し、正樹は答える。
「連中はサツと繋がりもある」
正樹から返ってきた答えに涼子は益々渋面を浮かべてしまった。
「最悪じゃない。警察と繋がりがあるって……そうなると……目的は私等の逮捕かしら?」
涼子が警察と繋がりのある件の尾行者達の目的が、自分達の逮捕なのか?
意見すれば、正樹は真剣な眼差しと共に告げる。
「何れにしろ、さっさと証拠隠滅を図らざる獲ない状況である事に変わりはない……」
「なら、当面は作戦会議もしない方が良いわね」
「接触も極力避けざる獲ない……つーわけで、早速だが始めるぞ」
正樹の言葉と共に引越し作業が始まった。
正樹は涼子と共に武器庫へ赴くと、複数の銃器が格納された大型のPELICANケースを幾つか。
それと、弾薬が詰まったアモ缶や爆薬が詰まった木箱等をリビングへと運び出して行く。
そうして、リビングに武器庫に収めていた全ての銃器と弾薬。
それに爆薬類を運び出し始めた。
銃器の詰まった重いPELICANケースと、多数の銃弾が詰まったアモ缶。
それから、C4爆薬や手榴弾類と言った爆薬類が詰まった木箱等が次々に武器庫から運び出されていく。
2人はキビキビと動く度、武器庫の中身はドンドン減っていく。
そうして武器庫が空になると、向こうへ運び出す前の点検が始まった。
「中身の確認するぞー。ケースに中身を書いた紙貼っつけてあるから、ソレ通りなのを確認してくれ」
「了解、隊長さん」
茶化す様に言えば、正樹から「なら、そっちの左半分頼むわ」と、返された涼子は中身の確認を始める。
2人はPELICANケースに貼られた紙に記された具体的な銃器の名前と数を確認すると、ケースを開けて中身を確認していく。
「確認が済んだ毎に、そっちの離れた方に退かせ。二度手間を避けたい」
「了解」
正樹が現場監督宜しく、的確に指示を飛ばせば涼子は確認を続ける。
程無くして1つ目のPELICANケース内を目視で確認を済ませれば、ケースを閉じて正樹が指定した所へケースを運んだ。
正樹も同様に目視による点検を済ませると、ケースを閉じて別の個所へと運んでいく。
そんな地味な作業が30分ほど続いた。
其処から更に20分後。
2人による確認作業が終わった。
「数は全て揃ってるわ!」
「じゃあ、向こうに運ぶぞ」
正樹から次の作業が告げられれば、涼子は向こうと繋がる扉を召喚する。
その後、扉を開ければ、正樹は涼子と共同で全ての銃器と弾薬ならびに爆薬類を扉の向こう……
異世界にある涼子の地下バンカーへと運び出し始めた。
2人がキビキビと素早く行動する度。
リビングに集積されていた銃器と弾薬、爆薬類は次々に地下バンカーへと運び込まれていく。
そうして30分もすれば、リビングに集積されていた爆薬類も含めた武器弾薬は全て、"犬小屋"から完全に消えた。
「ふぅぅ……コレで逮捕される理由の1つは消えた」
心地良い疲労感と達成感と共に正樹が言えば、涼子は尋ねる。
「次はどうするの?」
「次か?作業部屋の機材の運び出しだ」
正樹が次の作業内容を答えると、涼子はふと気になった事を尋ねた。
「気になったんだけどさ……プロの悪党とかテロリストとかが隠れ家を慌てて引き払う時ってどうするの?」
ミリタリー趣味者としての好奇心から聴いて来た涼子に正樹はつまらなさそうに答えた。
「大概は隠れ家を爆破するなり、燃やすなりする」
「証拠隠滅の為に?」
その問いに正樹は肯定する。
「当たり前だ。重要書類や通信機材とかも可能な限り回収。それか、処分した上で焼き払って其処で追手の追跡の糸口をキッチリ始末しないと恐い奴等に寝首を掻かれる」
「なら、此処も爆破なり、燃やすなりするの?」
涼子に問われると、正樹は否定した。
「いや、流石に日本でソレは不味い。幸いにもサツは未だ俺達を引っ張る予定は無いみたいだからな……だから、目立たない様に証拠を可能な限り始末して掃除するだけだ」
予想に反した答えが、ソレをしない理由と共に返されれば、涼子は納得した。
「確かにそうね……大量の爆薬を用いて爆破。ガソリン等の燃料を蒔いて放火。どっちもニュースとか新聞の一面を飾りかねない事件になるわね……」
「だから、切羽詰まった状況にならない限りは穏便に証拠隠滅して痕跡を消すだけに留めたいんだ。それに……いや、コレはどうでも良いな」
「何よ?気になるから言いなさいよ」
涼子から詰問されれば、正樹は言うのを辞めようとしていた事を答えた。
「セーフハウスを燃やすなり、爆破するなりするってのはニュースや新聞に載る大きな事件だろ?だから、敢えてニュースになる様にする事で潜伏してる同志達への警告つうかアラームにする目的があるんだ」
「成る程ね。味方への警報も兼ねてる訳ね……そうなると、フィクションとかで突入したらもぬけの殻で、少しした後に爆発するのとかは?」
そう問われると、正樹は答える。
「アレも警報つうかアラームと同じだ。敵……敢えて、政府機関も引っ括めてそう表現するが……敵が自分達の近くまで迫ってるから逃げろって意味合いが強いな。俺の経験則的にな?後、敵に損害を与える意味合いも多分あると思う」
正樹が補足説明をすれば、涼子は意外そうな顔をしてしまう。
「貴方の事だから爆破なり、放火なりして完全に証拠隠滅を図ると思ったんだけど、しないのは意外ね……」
涼子は正樹を最初は頭のネジが幾つもブチ切れた。
何なら、母親の腹に大事な頭のネジを忘れたかの様なイカれた男だと思っていた。
だが、実際に行動を共にしていく内にソレが間違いであると、改めて理解せざる得なくなった。
そんな無礼な事を思っている涼子に対し、正樹は気にする事なく返す。
「俺の頭がイカれてるのは事実だ。実際、神話とかにしか出て来ねぇようなヤベェ伝説の魔女に喧嘩売ってんだ。それに必要だってんなら、爆破なり、放火なりも辞さないしな……」
「ソレを差し引いても貴方は意外と……」
其処で言葉を濁す涼子に正樹は代わりに答えた。
「臆病か?」
正樹に言い当てられると、涼子は肯定する。
「悪く言うならね」
「俺は臆病なのは間違ってない。実際、その通りだ。それに……」
「それに?」
「俺は物臭で面倒臭がり屋でもある」
また意外な事を言われると、涼子は「そうは見えないけど?」と、否定する。
正樹は涼子の言葉を呆れ混じりに問うた。
「何処をどうしたらそうなる?」
「だって、今みたいに警察のネットワークを覗き見しながら、こうして証拠隠滅に奔走する姿を見たら……そうは見えないわよ?」
涼子の根拠に正樹は鼻で笑い、否定する。
「それはな……そのまんまにしたら余計に面倒臭い事になるのが目に見えてるからってだけの事だ。そんな面倒を背負ってバカみてぇなリスクを背負うくらいなら、さっさと証拠隠滅して静かに姿を消す方が楽だろ?」
具体的を説明を交えて語れば、涼子は益々、正樹が単なるイカレポンチではないと理解。
同時にプロの思考に感心してしまう。
「プロって其処まで考えるんだ。凄いわね」
「凄くねぇよ。こんくらい、チョイと考えれば誰でも解る事だし、こんなテロリストやら犯罪者の手口やら知ってても日常生活には無関係なんだからよ……」
心底つまらなさそうに返した正樹は涼子に「無駄話は此処までだ」と、告げると証拠隠滅作業を続けるのであった。
後書きと言うか解説的なモノ?
基本的にセーフハウス…俗に言う隠れ家は放棄する事を前提に運用せざる得ない
特に法に触れる悪さをしてるなら尚更である
その為、証拠隠滅しやすい様にしておく必要がある
この場合は逮捕されるリスクを可能な限り無くす為、多数の銃器や爆薬を初めとした違法な品物を他所に移す事でガサ入れされても逮捕理由を無くす為に運び出しやすくしている
テロリストも含むミリタリー関連ならば、作中で正樹が説明した様に重要書類や通信機器等を可能な限り処分する
場合によっては放火なり、爆破なりして痕跡も始末する
そうする事で証拠隠滅を図ると共に仲間への警報とする
もぬけの殻なのに踏み込めた場合は直ぐに逃げた方が良い可能性が高い
正樹が語った様に警報またはアラームも兼ねた此処まで迫って来た追手を処理する為に置き土産( がある可能性が高いので←
だけど、今回は未だ警察が本気で動いてないと官のネットワークから確認したからこそ穏便レベルの証拠隠滅だけで終わらせてる
流石に放火や爆破なんかしたら一面記事を飾って嫌な目立ち方をしてしまうから
そうなると、警察も本気で捜査する
だから、そうならない様に静かにコッソリと処理する方を作中で語った通りに選んだのである
まぁ、ハエの皆さんにカマしたいんなら置き土産( は残しておくべきなんだけど……
未だ本格的に敵対してないのにしたら、一気に面倒臭い事極まりない事待ったナシ確定なので、敢えてせずに大人しくする
敵対してたら?
そりゃ、C4がギッチリ詰まった梱包爆薬を5個とかガソリンの詰まった携行缶を幾つかセットして派手にやりますわよ←
あ、スマホのSIMカードに関しては万が一に備えて使ってる回線を閉所する為ね
後、スマホからバッテリー抜いて自室に置いていったのは動きをトレースされない為って感じで←




