初見殺しは使われたら対応不可能だからこそ、初見殺しなのである
すまねぇ…未だ、正樹はヤマ踏まねぇ
その日の涼子は正樹の好意に甘える事にした。
昨晩の虐殺が無かったかの様に涼しい顔で何時もの様に学校に通い、美嘉や明日香。
それに陽子と言った何時もの面子で楽しく駄弁ったり、共に昼食を食べたりと平和で平穏な学校生活を過ごしていた。
そうして、楽しく学校生活が放課後を迎えれば、部活のある美嘉と明日香と別れた涼子は陽子と共に校舎を後にした。
涼子にマグナムリボルバーを向けられた時の恐怖が無かった。
そんな様子の陽子は友として変わらずに涼子と付き合いを続け、涼子はソレに内心で感謝しながら他愛の無い話をしながら歩みを進めていく。
だが、そんな涼子を熱い視線と共に見詰める者達が居た。
涼子は堂々と後ろを振り向いて熱い視線を向けて来る者達を一瞥する。
数は3人。
3人とも背の高い女。
1人は白人。
2人はアジア系……と、言う事はチャイマ側の刺客と見た方が良さそうね。
3人の熱い視線を向けて来る背の高い女達を一瞥した涼子はそう分析すると、陽子に申し訳無さそうに告げる。
「陽子。ゴメン……ちょっと用事が出来ちゃったわ」
申し訳無さそうに告げる涼子に陽子は何かを察したのだろう。
涼子の謝罪を受け入れてくれた。
「私は真っ直ぐ帰った方が良いかしら?」
その問いは涼子がコレから危険な事をする。
ソレを察したものであった。
そんな問いを投げて来た陽子に涼子は肯定する。
「えぇ、その方が良いわ。後、危なくなったら110番した方が良いわね」
「解ったわ。気を付けてね」
その言葉と共に涼子と陽子は別れた。
陽子が駅に真っ直ぐ向かうと、涼子はショッピングモールの方へと歩みを進める。
すると、3人の背の高い女達も静かに涼子の後を追って来た。
マジで大概にしろよ。
私の聖域を犯して来やがるとかさぁ……
喧嘩売ってるのはよーく解った。
「そんなに血が見たいなら見せてやるわよ」
ポツリと小さな声で呟いた涼子は3人を仕留める為、ショッピングモールへと歩みを進める。
3人は静かに涼子の後を追う。
涼子と一定の距離を保ったまま歩みを進めると、大きい方のショッピングモールまでやって来た。
そんな3人に涼子はボヤく。
「私みたいなのを相手にするんなら、ありとあらゆる所を警戒しないと死ぬわよ」
そのボヤキを漏らした瞬間。
突如として3人はアスファルトの地面に崩れ落ち、倒れた。
3人は全身をビクンビクンと痙攣させるだけで動かない。
そんな3人に気付いた通行人は3人が突然倒れた事に驚いてしまう。
通行人達は大いに困惑してしまう。
だが、中には勇敢で優しい通行人も居た。
「大丈夫ですか!?しっかりして下さい!!誰か救急車を!!」
倒れた3人に駆け寄った1人の男は大きな声で語りかける。
しかし、3人は全身を痙攣させるだけで何も答えられずに居た。
3人の様子に助けようと駆け寄った男は急いで自分のスマートフォンを取り出すと、119番に通報する。
慌ただしい様子を遠くから眺める涼子は3匹の小さな蚊が掌に乗ると、心の中で3人に語り掛ける様にボヤいた。
私みたいなロクデナシが臨戦態勢入ってる時はね、何時でも殺れる様にしてるのよ。
今回は人目が沢山あるから、久しぶりに蚊を使ったわ。
涼子の掌にジッと動く事なく止まっている3匹の蚊は涼子の使い魔であった。
涼子は歩きながら3匹の蚊を放ち、蚊は音も無く3人の身体。
もとい、首筋にくっついて涼子特製の猛毒を注入した。
涼子の用いた猛毒は、ほんの僅か。
コンマ零点数マイクログラムと微量ながらも体内に摂取されれば、2メートルを超す筋肉ダルマな大男や3メートル以上のオーガであってもキッカリ30秒後には効果を発揮する。
30秒後には摂取した者の全身の機能が内臓も含めて停止し、喋る事や立つ事すらも困難になる。
勿論、呼吸器官も停止する。
そして、息が出来ぬ苦しさの果てには心臓も止まる。
解毒剤は無い。
その上、毒に耐性がある者や加護で護られてる者であっても、大量に摂取すれば許容限界を起こして効果を発揮する。
それこそが当時の涼子が創り上げた必殺の猛毒であり、3人が気付く事無く死を迎えた理由でもあった。
3つの死体に助かって欲しい。
そんな切なる強い願いと共に必死な形相で心臓マッサージを断行する勇敢な彼に敬意を払いながらも、涼子は3匹の蝿を模した使い魔を飛ばす。
そして、蝿が3つの死体に止まると共に脳をハッキングして、未だ残る情報を抜き取った。
涼子は用が済むと、ざわつく群衆達を尻目にショッピングモールを通って駅へと向かうのであった。
約1時間半後。
帰宅して着替えを済ませた涼子は"犬小屋"に来ていた。
"犬小屋"に入ると、人の気配があった。
気配を辿って工房とも言える作業部屋へ行くと、正樹が真剣な表情でボルトアクション式の大きなライフルに向かって作業している姿があった。
すると、涼子の気配に気付いたのだろう。
正樹は作業の手を止め、入口に立つ涼子に向けて尋ねる。
「どうした?」
「学校帰りに仕掛けられそうになった」
返って来た答えに正樹は呆れ混じりに言う。
「学校帰りに襲われるとか、君は人気者だな」
皮肉を交じえる正樹に涼子はウンザリとした様子で返す。
「お陰で最悪な気分が益々最悪になったわ」
平和な学校生活の帰りに仕掛けられるのは誰でも最悪な気分となる。
特に相手がマフィア等の裏社会関係者であれば、尚更だ。
そんな涼子に正樹は他人事の様に返す。
「まぁ、それでも向こうが動く前に殺れたんだろ?なら、良いじゃねぇか……」
「良くねぇわ。あのボケ共を皆殺しにしないと私の平和な生活が台無しになるんだからさぁ……コレで学校に居る時に仕掛けて来られたらマジで洒落になんないわよ」
実際問題として、その可能性は捨てきれなかった。
それ故、平和で平穏な生活を一時的に取り戻す為に連中を火急的速やかに皆殺しにする必殺に迫られていた。
そんな涼子の想いを察した上で正樹は言う。
「そうしたいのは解るけどよ、連中の巣穴が解らなきゃ無理だ。地獄に叩き落としてやりたい連中の居場所が解らなきゃ叩き込めねぇだろ?」
正樹の正論に涼子は告げる。
「仕掛けようとしたバカ女共から情報は抜けたわ」
蝿を模した使い魔を介し、攻殻機動隊のゴーストハックよろしく3人の脳内の情報を抜いて来た涼子がそう告げると、正樹は呆れてしまう。
「魔法って付けば何しても良いとかデタラメ過ぎるわ」
至極真っ当な正樹の言葉に涼子はさも当然の様に返す。
「貴方だって出来るなら、やらない理由は見当たらないんじゃない?」
「そりゃそうだ。しっかし、君の魔法は何か攻殻機動隊めいてるよな……使い魔を介して相手の脳内にある情報を抜き出すとか、やってる事がもう攻殻機動隊だろ?」
正樹の言葉に涼子は更に出来る事がある。
そう補足した。
「やろうと思えば、ゴーストハックからの身体コントロールも出来るわよ」
それが意味する事を理解した正樹はゲンナリとしてしまう。
「マジかよ……トンデモねぇな」
「まぁ、基本的にはやらないわよ?でも、相手がノールールで来るんなら、私は卑劣様張りにヤラかしてやるけどね」
「君は卑劣様よりも悍ましい何かだろ?うん?待てよ……確か、あの世界の世界史の出来事に妻と子を愛する皇帝たる父親が乱心して、後宮内の妻達と子達。それに家臣を殺して国が結果的に滅茶苦茶になったってのが有るのを思い出したんだけどよ……」
思い出した事を恐る恐る口にすれば、涼子はアッケラカンに認めて当時の事を笑顔で語った。
「サレスト帝国での出来事なら私がやった。200年ぐらい前の話よ。あのクソ皇帝が私に嘗めた真似してきたから、報復でクソ皇帝が最も大事にしてる者達を皇帝自ら殺す様にした。勿論、意識と感覚は残した上でね……あの時の私は特等席でソレを眺めて愉しんでたわ」
過去の悍ましく、邪悪過ぎる行いに流石の正樹もドン引きしてしまう。
「やっぱ、君って卑劣様より酷い奴なんだな……」
「卑劣様もやろうと思えば、やれるでしょ?つか、殺りそうなんだけどね……まぁ、良い。私が卑劣な事をした結果、栄華を極めていた帝国は滅びを迎える羽目になった。何せ、直系の子孫は子供達だけで先帝の子たる皇帝の兄弟達は皇帝自身が過去に殺してるからねぇ……その後は国が割れて幾つもの軍閥が群雄割拠する内戦を迎えたわ」
たったワンアクションで国を滅ぼした事を嬉々として語る涼子に対し、正樹は目の前に立つ可愛い少女の姿をした魔女が最も悪名高き邪悪な魔女である事を改めて解らされた。
それ故……
「同情する気はブッチャケ起きねぇけどよ。流石にドン引きするし、君を怒らせたバカ共には少しだけ憐れみを覚えちまうな」
「あの頃は嘗められたらブチ殺せが鉄則の野蛮極まりない時代だからね……嘗められ続けたら生きていけなくなる。だったら、嘗めた真似した相手を見せしめに晒してやったり、持ちうる財を人も含めて全て滅茶苦茶にしてやる方が良い。それに言うでしょ?」
「何が?」
涼子の邪悪な一面を見せられ、お腹いっぱいな気持ちになっている正樹に問われると、涼子は問う。
「"敵なら殺せ"ってさ?」
涼子がとあるゲームのセリフを引用すれば、正樹はつまらない様子で返した。。
「敵なら殺せは当たり前だわな。まぁ、人は敵以外も無数に殺しながら生きてるんだから、生きる為に殺すは基本過ぎるわな」
つまらなさそうに肯定した正樹を肯定する様に涼子は言う。
「生きるは喰らう。喰らうは殺す……当たり前の事よね」
生きる為に他の生命を喰らうのは至極当然の事。
肉や魚に限らず、穀物や野菜も生命。
其れ等を喰らうのは生きる為。
同時に、喰らう事は殺す事も意味する。
だからこそ、敵を殺す事も当たり前と2人は論じた。
「それでも殺した後に哀しい気分になる事もあるんだけどね」
昨晩の虐殺に今も心を痛める涼子に対し、正樹はつまらなさそうに他人事の如く言う。
「そりゃなるだろうよ。人間、そんな簡単に割り切れるもんじゃねぇし、感情が有るんだから嫌な気分になるのも当たり前だろ?」
問いながらも実際はそう断じる正樹に涼子は「それもそうね」と、納得すれば気になってる事を尋ねた。
「所でさ、何でスナイパーライフル弄ってるの?」
正樹の目の前にある作業台に固定されるスナイパーライフル……TAC338に関して話題を変える様に問えば、当人である正樹は思い出した様に返す。
「久し振りに射的してみようと思ってよ……丁度、君も来た事だし」
「あー……日本国内じゃ試射が難しいから向こうで試射したいって訳ね?」
日本国内で試射は難しい。
否、不可能だ。
特に違法に軍用銃を持っているなら尚更だ。
それ故、銃を撃っても怒られない異世界で試射をしたい。
そう答えた正樹に涼子は応じた。
「良いわよ。私も気分転換に撃ちたかったし……」
そう言う事になった。
涼子と正樹は今着てる服から黒の戦闘服に着替えると、幾つかの銃器と弾薬を武器庫なってる部屋から運び出して向こうに運び込んだ。
そして、何時しか利用した即席の射撃場に運び込み、人間大のサイズの的を設置し終えれば、涼子は目の前に並べた銃器を眺めていく。
シート上に所狭しと並ぶ多数の銃器を眺め、どれを撃とうか?目移りさせ、悩む涼子に正樹は呆れ混じりにボヤいてしまう。
「アサルトカービンに機関銃。セミのショットガンとソードオフのポンプにポンプ仕様のグレラン……女の子が目移りさせて良い代物じゃねぇな」
「あら?女の子が鉄砲とかミリタリー好きじゃ駄目かしら?」
涼子の問いに正樹は面倒臭そうに返した。
「ノーコメント。俺は問題無く使えるんなら、どの銃だろうが知ったこっちゃない……まぁ、それでも良い奴を選びたいがな」
そう返す正樹に涼子は同意する。
「弘法筆を選ばず……って、言うけど実際の所は弘法筆を選びまくりだし、良い道具を使いたいわ」
涼子の同意する言葉を正樹はぶっきらぼうに肯定した。
「当たり前だ。誰が好き好んでゴミみてぇな道具使いたがるんだよ……」
2人は先人達の残した言葉を盛大にdisる。
実際、何かしらをしたいならば、良い道具を使いたいのが人間。
だからこそ、先人達の言葉を2人は否定する。
閑話休題
涼子は米軍の正式採用銃であるM4A1と呼ばれる軍用小銃と、5.56ミリNATO弾が40発装填された樹脂製の弾倉を手に取った。
正樹は338ラプアマグナムと呼ばれる強力なライフル弾が5発装填された弾倉を幾つか取ると、試射の為に移動する。
2人は異なる射座に立つと、手にする銃に弾倉を叩き込んだ。
そして、構えて狙いを定めると、静かに小さな力で引金を引き絞るのであった。
後書きという名の解説的なモノ…
涼子のやった蚊による毒殺は蚊からのマラリア感染とCG映画版のバイオハザード・デスアイランドに攻殻機動隊から着想を得て作られたモノ
蚊は標的に音も無く接近して標的にプスッとして来る
今回は毒殺であるが、マジカル麻酔で殺さずに無力化にも使えたりする
後、病原菌やウィルス等も仕込めるので疫病と呼ばれたキッカケ時にも用いてたりする
蝿に関しては死体に蝿が集まるのは当たり前の事
だからカモフラージュを狙って蝿にした
で、蝿とのパスを介して相手の脳に接続したら、攻殻機動隊のゴーストハックよろしく脳内のデータを吸い出した
マジでやってる事が攻殻機動隊なんだわよ…魔法って何だろう???
因みにエレオノーレに対しても使った。
結果だけ言うなら、エレオノーレは鋭い勘働きで即座に察して辺り一面を火の海にして蚊を駆除してプスッを回避しました…
その時の涼子は「何で気付くのよ?音させてないし、隠蔽もしたのに…」と言う具合にマジでドン引きした←
悲劇に関しては当時の邪悪な魔女として愉悦と共に大いに愉しんでたりする…
それなのに今は善良に振る舞おうとするコイツって畜生だし、超クソ女じゃん…っていう意見に関しては大いに認める
実際、事実だから残当だからシカタナイネ
だから、それも相まってエレオノーレは今の涼子を腑抜けたな…と、吐き捨てる様に言った訳でもある




