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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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魔女は頑固な子狐に頭を悩ませる


 「ヤクちゃん、何かあったの?」


 その日の昼休み。

 何時ものメンバー。

 勿論、陽子も含めた面子だ。

 彼女等と共に昼食を食べ終えると、開口一番に美嘉が恐る恐る尋ねて来た。

 そんな美嘉に涼子は微笑みと共に返す。


 「何も無いわよ。私、何か不機嫌そうだった?」


 実際は陽子がバカな選択を下そうとしている事に対し、苛立ちと怒りを大いに覚えている。

 だが、それは美嘉や明日香には無関係な話。

 それ故、涼子は2人には気取られない様にポーカーフェイスで惚けた。

 しかし、それでも美嘉と明日の勘は鋭く突き刺して来る。


 「嘘。ヤクちゃんの気配、滅茶苦茶おっかないもん」


 「美嘉の言う通りだ。涼子、何があったんだ?」


 2人からせっつかれると、涼子はポーカーフェイスを降参したのだろう。

 困った様な表情を浮かべ、2人に問うた。


 「愚かな選択をして、道を踏み外そうとしてるバカな友人を辞めさせる説得の方法が浮かばなくて困ってるのよ。何か、良い説得方法無い?」


 その問いは、明らかに陽子の事であった。

 それ故、陽子はバツの悪そうな表情を浮かべてしまう。

 だが、美嘉と明日香の2人は具体的な事情を知らない。

 その為、2人は首を傾げてしまう。

 そんな3人に対し、涼子は「ゴメン。悪いけど、少し愚痴らせて」そう謝罪も兼ねた前置きをすると、語り出す。


 「愚かな行いはオブラートに包んで言うんなら、違法な非合法な活動……この一言に尽きる。で、ソレをやってるバカに救われた奴がさ、バカに殉じたいと強く想ってしまってバカの立つ場所に立とうとしてる」


 涼子が其処で言葉を一端停めると、美嘉は尋ねる。


 「そのバカってヤクちゃんの事?」


 美嘉の言葉を涼子は素っ気無く否定する。


 「違うわよ」


 「でも、ヤク中の語り口調が妙に説得力が滅茶苦茶ある様に感じるんだけど?」


 明らかに涼子が口にしたバカが、涼子本人である。

 そう感じてしまう美嘉を他所に明日香は無言で続きを促せば、涼子は更に語っていく。


 「救われた奴は恩義に報いたい。そう強く想い、願うが故に愚かな選択に進もうとしている。だけど、救ったバカは救った相手が愚かな選択をしないで欲しい。そう、心の底から強く願ってる」


 涼子の悩みの種。

 それの概要を聞けば、明日香は涼子に尋ねる。


 「じっくりと話し合ったのか?」


 「いいえ。じっくりと面と向かって話しては居ないわね」


 実際、涼子はキチンと腰を据えて陽子と向き合って話し合っては居ない。

 そんな涼子に対し、明日香は意見を述べた。


 「なら、その相手とキチンと向き合った上で説得するしか無いんじゃないか?」


 正論とも言える意見に涼子は「やっぱり、そうするのが一番よね」そう返せば、美嘉は言う。


 「ヤクちゃんはその救われた人が間違った道を進んで欲しくない。そう強く願ってるのは解ったけどさ、結局の所として選べるのは、その人だけだよね?」


 美嘉の言葉もその通りと、言えるだろう。

 だが、その選択だけはして欲しくない。

 そう強く願うからこそ、涼子は同意した上で否定する。


 「美嘉の言う通りよ。選ぶのはその人自身なのはね。でもさ、汚い世界で生きなくても良い人間が汚い世界に突き進んで酷い事をするのが日常になって欲しくないと願うのは悪い事かしら?」


 涼子の言葉も正論。

 そう言っても良いだろう。

 だが、選ぶのは陽子自身。

 陽子の人生を否定する権利は、涼子には無い。

 しかし、それでも愚かな選択をして欲しくないと願い、拒絶する事は悪と断じる事は出来ないのも事実と言っても良いだろう。

 悩ましくする涼子に対し、当人である陽子は告げる。


 「その救われた人は救ってくれた恩人からすれば、バカで愚か極まりない選択をしようとしているんだと思う」


 陽子の言葉を涼子は肯定する。


 「えぇ、その通りよ。だからこそ、その選択をしないで欲しいと強く願い、懇願しているわね」


 だが、陽子は突っ撥ねた。


 「その救われた人にとって、今までが地獄だったんだと思う。だからこそ、地獄から救ってくれた恩人の為に己を捧げたいと強く願ってるんじゃないかしら?」


 意見と言う形で涼子の想いを拒絶する陽子に同調する様に美嘉は言う。


 「その救われた人がよー(陽子)ちゃんの言った感じだったら、恩人の為に尽くしたいって気持ちを拒絶するのって駄目だと思うよ」


 美嘉の意見に涼子は首を傾げてしまう。

 そんな涼子に対し、明日香は美嘉の意見を補足する様に意見する。


 「その救われた人が誰を指すのか?解らないが、好意を無碍にするのも不味いんじゃないか?」


 少しだけ苛立ちを覚える涼子は問う。


 「何でかしら?」


 「お前の言うバカが誰かも知らない。だが、聴いた感じだと救った以上は最後まで面倒を見る方が良さそうだぞ?」


 其処で言葉を切った明日香は水筒のお茶を一口飲んで唇を湿らせると、更に言葉を続けた。


 「その救われた人にすれば、恩人であるバカとやらに拒絶されたと感じ、そう思ってしまえば更に酷い状態になり兼ねなく思うぞ」


 明日香の言葉は涼子が危惧している事に他ならなかった。

 実際、陽子は涼子と言う救いの女神に拒絶される事を大いに恐れ、涼子は陽子が愚かな選択以上に愚かな行いをしてしまう事を恐れていた。

 だからなのか?

 涼子は沈黙してしまう。

 だが、直ぐに気を取り直して現実に戻れば、唐突に笑い出した。

 突然、笑い出した涼子に美嘉と明日香。

 それに陽子は大いに困惑してしまう。


 「ヤクちゃん???」


 一頻り笑って満足したのか?

 涼子は笑うのを辞めると、3人に向かって告げる。


 「ゴメンゴメン。実はさぁ、ネット小説書くのにチャレンジしてみようと思っててさぁ……キャラの展開でどうするか?悩んでたのよね」


 「えぇ……」


 涼子の言葉に美嘉は困惑と共に呆れてしまうと、明日香も明日香で呆れ混じりにボヤいてしまう。


  「物語の展開をどうするか?で、迷ってるだけなら最初からそう言え……心配するだろうが」


 責める様に見詰めて来る美嘉と明日香に涼子は申し訳なさそうに謝罪する。


 「だから、ゴメンってば……皆にジュース奢るから許してよ」


 涼子の一言で物語。

 空想内の出来事と知って、呆れ混じりにジト目を向ける美嘉と明日香であった。

 しかし、当事者である陽子は違った。

 だが、この場では言えなかった。

 何故なら……


 『余計な事を言うな。今日はジックリと話をしてやるから』


 涼子から念話で一方的に告げられたからだ。

 それ故、陽子は沈黙した。

 その後、涼子は宣言通りに3人に自動販売機のジュースを奢って和気藹々と他愛の無い日常会話を愉しんだ。

 そして、昼休みが終わる数分前に愉しい語らいを御開きにすれば、午後の授業を受ける支度をするのであった。





 放課後を向かえ、部活動がある者達以外が帰り支度をしている頃。

 手早く帰り支度を済ませた涼子と陽子は教室を後にすると、帰宅部の者達で出来た人の流れに乗って廊下を歩いて行く。

 校舎を出るまでの間。

 2人の間を重苦しい沈黙が支配していた。

 そんな重い空気に耐えられなくなったのだろう。

 陽子は口を開いた。


 「ねぇ、薬師寺さん」


 「何かしら?」


 「昼休みの話だけど……」


 陽子の言葉を涼子は敢えて遮った。


 「続きなら別の場所でしましょう」


 そう言われると、陽子は沈黙せざる獲なかった。

 そんな陽子に涼子は告げる。


 「明日香の言う通り、キチンと腰を据えて真剣に話し合わなければならない。だから、その時まで続きは無しよ」


 涼子からハッキリ告げられれば、陽子は何も言えなかった。

 そんな陽子に涼子は少しばかり意外そうな顔をして言う。


 「それにしても、貴女が昔は私の住んでる所の近所に住んでたとは思わなかったわ」


 話題を無理矢理変える様にして言えば、陽子は答える。


 「私も驚いたわ。まさか、薬師寺さんが近所に住んでるなんて思わなかったし……」


 陽子の言葉に嘘は無かった。

 涼子が正樹に陽子の過去とも言える当時の事を記録上だけ調査させると、当時の陽子は涼子が当時通っていた小学校に通っていた。

 同時に、近所にある築50年以上の古いアパートに母親と住んで居た。

 だからこそ、涼子と陽子は互いに少しばかり驚いてしまった。


 「もしかして、小さい頃に顔を合わせた事があったりするんでしょうね」


 涼子が言うと、陽子は少し残念そうに返す。


 「でも、残念だけど余り覚えてないわ」


 「まぁ、過去は過去だしね……今は、今と未来に目を向けた方が建設的よ」


 そう返した涼子に陽子は言う。


 「駅前のスーパー、未だ残ってて驚いたわ」


 母親と共に暮らしていた小さい頃。

 母親と共に買い物をしたスーパーが未だに営業している事に驚く陽子に涼子は素っ気無く返す。


 「彼処は滅茶苦茶好立地な上に良心的だからねぇ……客足が途絶えてるの見た事無いわ」


 「でも、何か寂れてるよね。周りは……」


 駅前と言っても長閑な住宅街であるが故に、繁華街の様な賑やかさは無かった。

 何せ、駅前のパチンコ屋だった所は10年以上前に潰れて以来、ずっと空きテナントとなっているくらいだ。

 陽子の言う通り、寂れていると言っても過言ではないだろう。


 「まぁ、其処は仕方ないんじゃない?ある意味、田舎と変わらないし」


 本当の人里離れた田舎に住む者達が聞けば、涼子の言葉に怒り狂うだろう。

 そんな涼子に陽子は少しだけ呆れてしまう。


 「でも、電車1本で成田と羽田に行ける時点で田舎って言い難いと思うよ?」


 「そう?まぁ、治安は良い方だし、電車1本で色んな所に行けるんだから田舎じゃないか……」


 共に歩みを進める涼子と陽子は愉しそうに住んでいる近所の話をしていく。

 2人で同じ駅で降りれば、途中まで共に歩みを進めて家路に着いた。

 帰宅後に着替えを済ませて支度をすれば、腰を据えて真剣に話し合う為に"犬小屋"へと向かうのであった。




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