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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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狩りの時 後編


 そうして、沈黙が夜を支配してから程なくすると、祠まで来ていた涼子は未だ地面にへたり込んだままの陽子の元へと歩み寄る。


 「御免なさい。遅くなったわ」


 謝罪と共に手を差し伸べると、陽子はゆっくりと立ち上がって感謝する。


 「あ、ありがとう」


 そんな2人を座して傍観していた九尾は涼子に語り掛ける。


 「御主が今宵の全てを画策した張本人かね?」


 「多分、そうなんじゃない?」


 スットボケる様に肯定する涼子に九尾は更に問う。


 「何日か前から我と我の住処を覗いてたのも御主か?」


 「やっぱり気付かれてた訳ね。でも、それだったら手を出さなかった理由が解らないわ」


 疑問を口にすれば、九尾はアッサリと答える。


 「アレだけ高等な式神(使い魔)を用いる術者に興味が湧いた。今の腐り果てた退魔師では作るのは無理と言っても良いからのう」


 「そう。さて……銃声が止んだ所から察するに戦闘は終わったと見て良いけど、貴方は何がしたいのかしら?」


 涼子の問いから九尾は己と陽子の会話を盗み聞いていた事を察すると、涼子に問う。


 「御主ほどの者ならば、私の真意を気付いてるのではないか?」


 「だとするなら、1つだけ教えてくれるかしら?」


 遠回しに肯定する涼子が尋ねると、九尾は「良かろう」と快諾する。


 「彼女に語った言葉に嘘偽りは無いわね?」


 「嘘を言う理由が無い」


 アッケラカンに返されると、涼子は少しばかり悩ましそうにボヤいてしまう。


 「参ったなぁ……私としては貴方の復讐を止める気は無いのよね。退魔師共がクソ過ぎるから……でも、私は貴方を殺せと命じられているから殺さないとならない」


 狗として命じられた任務を果たさなければならない。

 雇われの身であるからこそ、涼子は少しだけウンザリとしていた。

 そんな涼子に九尾は少しだけ気遣った。


 「気にしなくても良い。我は既に屍と変わらぬ」


 「そう言って貰えると助かるわ」


 気遣いに感謝した涼子はお願いする。


 「始める前に悪いんだけど、私の仲間が来るまで待ってくれないかしら?ほら、お互いにこの娘を死なせたくないみたいだし」


 「良かろう。じゃが、我の願いを聞き入れて貰おう」


 「内容によるわね」


 「貴様の仲間では無い西洋の退魔師達……その者等を貴様と戦う前に喰らわせろ」


 「別に良いわよ」


 九尾の要求をアッサリと当たり前の様に承諾すると、陽子は慌てて止めようとする。


 「待って!!それは……」


 だが、言い終える前に涼子は拒否した。


 「向こうは私の願いを聞き入れた。なら、私も願いを聞き入れなければフェアじゃないわ……」


 「でも!だからって!」


 一歩も引こうとせぬ善良で優しい陽子に涼子は容赦無く顎を()()()

 不意を突かれる形で涼子によって顎を的確に打ち抜かれると、陽子は糸の切れた操り人形の如くストンと腰を落としながら意識を手放してしまう。

 そんな時だ。

 涼子の不意を突かんと背後から大剣を突き出しながら少年エクソシストが突っ込んで来た。

 だが、涼子を大剣が貫く事は無かった。


 「な!?」


 背中を貫いた。

 そう少年エクソシストは確信していた。

 だが、結果は黒い外套で剣先が止まるだけに終わっていた。

 驚く少年エクソシストに涼子は溜息を漏らす。


 「ハァァァ……その程度で私を殺したいとか嘗めてるの?」


 落胆すると同時。

 目にも留まらぬ速度で振り返った涼子は困惑する少年エクソシストの顎を的確に素早く打ち抜く。

 少年エクソシストが陽子と同じ様に脳震盪と共に崩れ落ちると、涼子は彼の淡い金色の髪を左手で掴んで盾にする。

 そうして、ミートシールドにしながら右手に握り締めたブローニングハイパワーを少年エクソシストの頭に向けながら告げる。


 「お嬢さん出ておいで。さもなきゃ、彼の頭をブチ抜くわよ?」


 しかし、涼子の声に応じる事は無かった。

 そんな少女エクソシストに対し、涼子は更に告げる。


 「貴女達の任務は九尾の殺害でしょ?私は一切邪魔しないでやるから、任務を遂行しなさいよ。九尾に勝ったら、私は喜んで相手してやるわ!」


 その宣言に対し、少女エクソシストは両手を挙げて敵対の意志が無いと示しながら姿を見せて問う。


 「貴女の目的は何?」


 「私の目的は九尾の死。コレに尽きるわね。だから、貴女達が手出ししない限りは私も手出しは一切しない」


 そう告げると、涼子は意識を失ったままの陽子を優しく抱き抱えて歩き出す。


 「逃げる気?」


 「逃げないから安心しなさい」


 そう言い残すと、涼子は陽子を抱き抱えたまま姿を完全に消した。

 祠と祠の周囲の状況を窺うと同時。

 何時でもバックアップチームを殺せる様にしている正樹。

 背後に気配を感じた瞬間。

 振り返ると共にカラシニコフ(AKMS)の銃口を気配の主へと向ける。

 だが、気配の主が陽子を抱き抱える涼子と知れば、直ぐに銃口を下ろした。


 「脅かすなよ」


 「ごめん。彼女を避難させたかったからさ」


 申し訳無さそうに涼子が返すと、正樹は尋ねる。


 「状況は?」


 「任務の3分の2が完結。後は標的を殺れば終わり」


 素っ気無くも簡潔明瞭に答えれば、正樹は更に問う。


 「連中(エクソシスト達)も殺るのか?」


 敵対行動をして来た以上、殺しても良い状況と言える。

 それ故、任務の障害と認定して殺害するのか?

 正樹が兵士として問えば、涼子は興味無さそうに素っ気無く返した。


 「その必要は無いわ」


 「じゃ、どうすんだ?」


 その問いに涼子は答えず、虚空から深紅の槍を召喚する。

 そして、深紅の槍を投擲する為に構えて告げる。


 「標的を始末して首を回収して帰る」


 「は?意味解らん」


 正樹が困惑すると、涼子は沈黙と共に腰と背をを最大まで捻って力と魔力を肉体と槍に溜めながら正樹に命じる。


 「九尾を監視して」


 涼子の体勢と魔導に門外漢の自分でも感じ取れる魔力から命令の意図を察すると、正樹は九尾の方を見る。

 九尾は2人の若きエクソシストと戦っていた。

 2人の若きエクソシストが死力を尽くし、任務を果たさんと九尾を相手に戦う姿を見ながら正樹はボヤく様に言う。


 「死闘に水を差すのって駄目じゃね?」


 男の子として、死力を尽くして強敵と戦う2人の若きエクソシスト達の真剣勝負に水を指すのは駄目。

 そうボヤく正樹に涼子は素っ気無く返す。


 「任務第一って事で」


 「なら仕方ない」


 任務優先。

 その一言で気持ちを正樹はアッサリ投げ棄てて九尾を改めて見る。

 九尾は余裕と共に2人の若きエクソシスト達を圧倒していた。

 だが、涼子の強大な魔力を察すると同時。

 真剣な形相を顕に此方を向くと共に両手を前に突き出し、多重に結界を張り始めた。

 そんな九尾から感じ取れる妖力に涼子はペストマスクの中で微笑む。


 流石は大妖怪。

 私に気付いたか。


 微笑みと共に涼子は溜めていた力を一気に解放し、深紅の槍を放った。

 耳を劈く轟音と共に放たれた深紅の槍がソニックブームとも言える衝撃波を響かせながら、真っ直ぐ九尾へと飛んでいく。

 瞬く間に九尾の目の前へ飛来した深紅の槍は、多重に張られた強大な結界を一瞬の内に全て容易く貫いた。

 そして、九尾を完全に貫くと共に吹っ飛ばし、後ろの木々に串刺しにした結果を齎した。


 「命中……なんつう威力だよ」


 涼子の一撃に呆れるしか無かった。

 そんな正樹に涼子は「先に下山してて。私は後始末して来る」と言い残して姿を消した。

 独り残された正樹は「しゃあねぇ」とボヤくと、未だ意識を失ったままの陽子を優しく抱き抱えて立ち去るのであった。


 「今何が起きたの?」


 「何が起きたんだ?」


 2人の若きエクソシストは目の前で何が起きたのか?解らなかった。

 そんな2人を他所に涼子は串刺しにされた九尾の前に立つと、少しだけ不満そうにボヤく。


 「やっぱり腕落ちてる。心臓狙ったのに外してる」


 自分の一撃が必殺にならなかった事に少しばかりショックを受ける涼子へ、九尾は口から血を垂らしながら言う。


 「見事なり」


 賞賛する九尾に涼子は少しだけ申し訳無さそうに返す。


 「不意討ちしたのに称賛される覚えは無いわ」


 だが、九尾は満足そうに答える。


 「コレは(ルール)無き死合(殺し合い)。それに我は全力で結界を張ったのに関わらず、こうして貫かれている。褒めこそしても責める理由が無い」


 「そう言って貰えるなら心が休まるわ」


 気を遣って貰った事に涼子が感謝すると、九尾は要求する。


 「我の首と引き換えに頼みがある」


 「叶えられる範囲でなら聴くわ」


 要求を可能な範囲で応じる。

 そう返せば、九尾は要求する。


 「御主ほどの術者ならば、我の力を陽子に与えられるだろう?我の力を陽子に与えて欲しい」


 父親として愛した(ひと)との娘たる陽子へ何かを遺したい。

 そう告げられると、涼子は条件付きで承諾した。


 「受け取るか?どうかは、あの娘の意志に委ねるなら良いわよ」


 「それで構わぬ」


 九尾が承諾すれば、涼子は右手で九尾の胸を貫く。

 そして、未だ脈動する心臓を掴むと、九尾の胎内にある全ての妖力を吸収すると共に圧縮しながら収束させていく。

 強大過ぎる威力の魔弾を創る時の様に心臓を媒体に妖力の結晶を創り上げれば、涼子は血に染まる右手を九尾から抜き出した。

 そうして、妖怪にとって生命の核たる心臓を抜き取られれば、九尾は二度と動かなくなった。


 「復讐を成就出来なかったのに満足そうな死に顔ね。何か、敗けた気がするわ」


 悔いを一切感じさせぬ九尾の死に顔に対し、勝者である筈の涼子は何処か敗北感を覚えてしまう。

 だが、直ぐに気持ちを切り替えて自分のコンバットベストから手斧(ハチェット)を取ると、九尾の首を撥ねた。

 そして、己の槍と共に血の滴る首を回収して立ち去ろうとする。

 しかし……


 「待てよ」


 エクソシストの少年に呼び止められた。

 だが、涼子は気にする事無く歩みを進める。


 「待てって言ってんだろうが腐れ魔女!!」


 怒声と共に大剣を振り上げ、突っ込んで来るエクソシストの少年。

 涼子の頭を目掛けて渾身の一撃を振り下ろそうとした瞬間。

 エクソシストの少年は足下から放たれた長大な杭で串刺しにされてしまう。


 「ガハっ……」


 「ジャン!!?」


 振り上げていた大剣が落ち、喧しい音を響かせれば涼子は残念そうにポツリと言う。


 「私は言ったわよ。手を出さないなら、私も手を出さないってね」


 「この!!」


 エクソシストの少女が祝詞と共に攻撃を仕掛けようとする。

 だが、それよりも早く上空を旋回していた大鴉とも言えるドローン(使い魔)が頭頂部からエクソシストの少女を貫いた。

 そして、つい最近にもやった様にエクソシストの少女は木っ端微塵に弾け、跡形も無くなった。

 即死だ。

 容赦無く2人の若きエクソシストを殺害した涼子は心の底からウンザリとした溜息を漏らすと、その場から転移魔法で完全に姿を消すのであった。

 2人の若きエクソシストの死。

 そんな後味の悪い結果を残して。




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