狩りの前夜
2日ぶりの更新
すまない。
長々と書いたけど、未だ戦闘じゃないんだ
その日の夜。
京都某所の良いホテルの一室。
正樹は咥え煙草で自分の纏う戦闘衣と装具の点検をしていた。
そんな正樹を他所に涼子が煙管を燻らせて居ると、紫煙と共に正樹が尋ねる。
「あの娘を君はどうするつもりだ?」
点検しながら問う正樹に涼子は紫煙と共に答える。
「彼女の望み通り、九尾を始末したら終わり。ただ、あの娘は私のクラスメイトでもあるから友達としては接する。それが理想だったんだけどね……」
涼子が理想とも言える展開通りになる事を望みながら答えると、正樹は「無理だろうな」と否定した。
「あの娘はどう見ても君に心酔してる。まるで、救いの女神へ信仰する狂信者の様にな」
初めて出会った時。
正樹は陽子が涼子に心酔しているのを見逃さなかった。
だからこそ、正樹は自分の立てた仮説を述べる。
「己を否定され続け、苦しみに満ち溢れた日々をずっと過ごす奴を洗脳するのは簡単だ。ソイツの心を満たしてやれば良い。多分、君はその手の人心掌握にも長けて居るんだろ?で、君はソレを用いてあの娘の心を掌握した。違うか?」
陽子を心酔させる程に陽子の心を掌握した涼子に対し、正樹はテロリスト時代の経験と過去に読み耽った涼子を語る文献資料。
それ等を基に涼子が人心掌握の術を持っているのではないか?
そう問えば、涼子は煙管を燻らせながら答える。
「確かに人心掌握のコツは知ってる。それに過去にソレを利用して、色々と悪事も働いた事もある」
涼子は過去の悪行を認める様に人心掌握のコツを識る。
そう正直に答えると、更に言葉を続ける。
「確かに最初はあの娘を利用し、棄てる方向では考えていた。でも、気が変わった」
正直に答える涼子に正樹は問う。
「どう言う事だ?」
「あの娘は私から見たら最高の逸材。大きな才能の原石と言っても良いわ」
魔導の頂きに立つ魔女。
そう言っても良い涼子が言えば、正樹は突き刺す様な鋭い視線と共に問う。
「あの娘を俺達みたいなロクデナシにするのか?」
その問いに涼子は本心を答える。
「私はそんな事したくない。でも、あの娘は間違いなく私が普通に生きられる様に整えても、それ等を投げ棄てて私と共に戦う事を選ぶ。選んでしまう」
悲痛に満ちた涼子の答えに正樹は経験から納得してしまう。
「君に救われたからこそ。善良で優しい娘は君という悪に心酔し、君の為に生命を棄てようとする……つまり、あの娘は既に自ら戻れない道を進んだ訳か」
正樹はロクデナシだ。
邪悪なテロリストでもあった。
だが、今は復讐者にして善良なる青年。
それ故。
今この場に居らぬ陽子が既に進む道を決断してしまってる事に対し、何処か哀しそうに想っていた。
「俺みたいなロクデナシのクソ野郎が言えた義理じゃねぇ。だが、それでも子供が自ら武器を手に取って戦場に向かおうとするのは気分が悪くなるし、子供を戦場へ突っ込ませる奴は反吐が出る」
正樹は邪悪なテロリストや傭兵として少年兵を捨て駒として利用し、時には敵に居た少年兵達を容赦無く殺して来た。
だが、正樹は復讐者となる前。
愛する女性と出会い、子を設けてからは良き夫にして父。
そして、善良なる大人となった。
だからこそ、今では子供が武器を手に戦場に立つ事や立たせようとする者を嫌う。
邪悪な過去の己も含めた上で。
それ故。
正樹は涼子が陽子を少年兵の様に扱おうとしているのか?
真意を問うたのであった。
涼子から本心を聞けば、正樹は改めて涼子に問う。
「あの娘が自ら平和で平穏な日常を棄てる。ソレを理解している君はどうするつもりだ?」
正樹の問いに涼子は沈黙で返し、煙管を燻らせる。
そうして、紫煙を吐き出せば涼子は口を開いた。
「あの娘は私が止めても、絶対に止まらない。そして、私が他人として見棄てれば、あの娘は更に壊れてしまう」
何をしても駄目。
そう、涼子は諦めと哀しみを交えながら答える。
そんな涼子を正樹は「答えになってない」と責めれば、涼子は自分が決めた覚悟を告げる。
「一人前を名乗っても赦されるくらいには全力を尽くして指導する。あの娘を救ってしまった者として、私は責任を取るわ」
涼子の答えが意味する事を理解していた正樹は紫煙混じりの大きな溜息を漏らすと、煙草を燻らせながら告げる。
「なら、その責任の半分を俺に寄越せ」
「え?」
呆気に取られる涼子に正樹は紫煙と共に言葉を続ける。
「この依頼がキッカケであの娘と縁が出来て、君はあの娘を救いたくなり、救ってしまった。そして、君はあの娘に暴力の世界で生きる術を叩き込むと決め、あの娘が目の届く範囲に居る様にする事も決めた」
涼子が考えている事を見透かす様に言えば、涼子は正樹の言葉を肯定する。
「えぇ、その通りよ」
「だったら、俺達のチームにも入るって事も意味してる訳だ。そうなるんなら、自然と俺はあの娘に技術や経験を教えざる得なくなるのは当然の帰結と言える」
正樹の言葉が意味するのは、涼子と同様に陽子の面倒を見る。
それに他ならなかった。
そんな正樹に涼子は問う。
「良いの?」
「どっちにしろ、俺も君も最低のロクデナシなのは変わりない。だったら、俺も最低のロクデナシらしくあの娘を一流のロクデナシにしてやる手伝いをしてやる」
正樹がシニカルに嗤いながら陽子の指導に手を貸すと答えれば、涼子は感謝する。
「ありがとう」
涼子から感謝されると、正樹はハッキリと告げる。
まるで、涼子へ釘を刺す様に。
「だが、俺はあの娘を俺の問題に巻き込む気は毛頭無い」
正樹の言葉に涼子は「解ってる」と返すと、ふと疑問に思った事を口にした。
「あの娘を復讐に巻き込むな。的なのを言うべきなのって、どっちかと言うと私じゃない?」
「文献内の君、滅茶苦茶邪悪な魔女だからな?師殺しを実行する為なら、君はあの娘すら利用してもおかしくない。違うか?」
歴史好きとして文献から涼子の悪行を識るからこそ、正樹は涼子を警戒せざる得なかった。
そんな正樹の言葉に涼子は項垂れてしまう。
「否定したいし、誰かを責めたいのに私の顔しか浮かばない」
項垂れる涼子に対し、短くなった紙巻き煙草を燻らせる正樹は他人事の如く暢気にボヤいた。
「そう言う時って、よく有るよな。俺もあるぜ」
ボヤいた正樹は立ち上がると、短くなった煙草を部屋に備え付けの灰皿へ押し付けて消す。
それから、柔らかなハイライトの髪箱を手に取って中から煙草を1本取る。
正樹が煙草を咥えて火を灯すと、涼子は尋ねる。
「あれ?キャメルじゃなかったの?」
前見た時と煙草の銘柄が違う理由を涼子が問えば、正樹は紫煙と共に答える。
「孤狼の血を観てたら吸いたくなった。で、吸ったら美味かったし、値段も悪くねぇからハイライトにした」
そう答える正樹に涼子は煙管の中の燃え滓を灰皿に棄てると、煙草を強請った。
「悪いんだけど、煙草1本貰える?」
涼子の言葉に正樹は「貰い煙草は貧乏するぞぉ」と呆れながらも、涼子に煙草を差し出す。
正樹から煙草を受け取ると、涼子は咥える。
すると、正樹から火の点ったオイルライターが差し出されると、涼子は咥え煙草のまま感謝した。
「ありがと」
煙草に火が点れば、涼子は紫煙と共に初めて味わう地球の煙草を堪能していく。
「すぅぅ……ふぅぅ……悪くないわね」
美味そうにニコチンとタールの値が高いハイライトを吸い、日本の煙草を堪能する涼子に正樹は紫煙混じりの好奇心と子供の様な憧れに満ちた笑みで言う。
「君は全ての文献が事実である事をある意味で証明する存在。まさに生き字引とも言える伝説の魔女だ」
正樹は歴史が大好きだ。
地球の歴史だけでなく、向こうの歴史に関しても歴史好きの性故に幾多の文献を読み漁っても来た。
そんな当時読み漁った多数の文献の中には魔女の逸話も複数あった。
特に多かったのは黒き魔女と記される魔女の悪行や武勇であった。
その記された張本人が、目の前で煙草を優雅に燻らせている。
歴史マニアの正樹にすれば、興奮するなと言う方が無理というものだ。
そんな正樹に涼子は紫煙と共に答える。
「悪いけど、当時の事はあんまり言いたくないわ」
「じゃ、1つだけ……無名の戦士が君に挑み、君が敗けを認めて願いを叶えたと言う童話がある。アレは?」
正樹が口にした童話の概要。
無名の戦士が涼子と言う魔女に挑んで勝利し、涼子に願いを叶えて貰った。
そんな内容の童話は本当の話なのか?
問われた涼子は正樹に対し、何処か懐かしそうに答える。
「無名の戦士。彼にはウィルと言う名前がある。彼は当時の私が認めた戦士であり、私の心臓に刃を突き立て、勝利した勇者よ」
正樹の識る童話の主人公。
敢えて名を出さずに無名の戦士と言えば、涼子は無名の戦士ではない。
そう言わんばかりに戦士の名を答えた。
ソレ故、正樹は興奮と共に童話が実際にあった話だと確信する。
「マジか……本当に君は文献に残る伝説なんだな。因みにウィルに関しても様々な憶測や伝説があるぜ」
ウィルの事を軽く触れれば、涼子は「それはそうでしょうね」と胸を張って納得した。
「ウィルは子供ながらに一流と言っても良い傭兵をしていた。技量も高く、度胸もあって、頭も回る。あの歳で彼処まで練り上げた戦士は滅多に居ない」
自分の事の様にウィルを語る涼子に正樹は物語に胸を躍らせる子供。
そう言っても過言では様子で熱心に聞き入ってた。
「彼と初めて出会った時。私は魔女である事を隠して、各地を転々としていた。その時、それなりの領地を治める伯爵の息子から母親と自分の子に掛けられた呪いを治療して欲しいと依頼された。私は呪いの処置をして、経過観察しつつ投薬等もしながら寛解まで成功させた。でも……」
其処で言葉を留めた涼子は一拍置くように煙草を燻らせると、紫煙と共に続きを話していく。
「伯爵の息子は治癒したと勘違いした。その上、私との契約を破り、私に支払う対価を踏み倒した上に私を殺そうとして来た」
楽しそうに聞く正樹であったが、疑問を覚えた。
「その時にウィルと出会ったのか?だけど、童話と君の話が合わないよな?」
童話と異なる内容に首を傾げれば、涼子は「童話の事は知らないわよ。でも、私に勝利したとされる無名の戦士はウィル独りだけよ」と童話と事実は異なると答えた。
其処に釈然としない正樹であったが、涼子は気にせずに語っていく。
「で、伯爵の息子は傭兵と自分の配下を集められるだけ集めて私が逃げた先へ、自ら先頭に立って進軍して来た。その中に傭兵として居たウィルも居た」
「で、君は何をしたんだ?」
「未だ治療は途中である事を伝えて説得したけど、駄目だった。だから、私は身を護る為に連中を殺した。でも、ウィルと他に傭兵が1人……この2人が私の攻撃から生き残った」
その後はウィルと一緒に居た傭兵が逃げようとしたので、逃げた背中を撃った。
そして、ウィルと勝負となった。
「結果はさっきも言った様に私の負け。見事に懐に潜り込まれて、私は心臓を貫かれたんだけどね……トドメを刺されなかった」
今思い出しても、生身の人間に負けたのは後にも先にもアレだけだった。
だが、ウィルと呼ぶ勝者は何故か、涼子にトドメを刺そうとしなかった。
ソレ故……
「だから、私は彼に願いを尋ねてみた。殺されなかった事への対価としてね」
「童話だと富や名声だったが、実際に求められた願いは何だったんだ?」
童話と異なる実際の問いが何だったのか?
歴史好きとして気になる。
そんな様子で問えば、涼子は答える。
「魔導師との戦い方と殺し方。後、魔女と戦う場合の事も聞かれた。だから、私は私の知る限りで教えた……それが敗者として支払うべき対価と思ったから」
そう答えた涼子はふと疑問を口にする。
「その童話の作者は何者かしら?ウィルとの出会い。誰にも教えた事がないと思ったんだけど……」
ウィルとの出会い等を誰にも語った覚えが無かった。
だが、何かの拍子に誰かに話したかもしれない。
記憶がうろ覚えな涼子に正樹は言う。
「君の知り合いだったりしないか?確か、作者はイェイツって名前なんだが……」
「うーん……聞き覚えが無いわ」
膨大な記憶と言うデータベースを漁っても、イェイツなる人物の名前が出て来る事は無かった。
だが、偶然。
童話として利用された。
そう考える事にした涼子はそれ以上の事を考えるのを辞めると、正樹に対価を要求する。
「さて、貴方の疑問に答えた事だし、御代を貰うべきよね?」
「ケチ臭い事を言うなよ。まぁ、確かに歴史の当事者から当時の事を教わるなんて最高の贅沢を味わえた事を踏まえるなら、タダってのは悪いのも事実だな」
歴史好きにすれば、当時の事を最も深く知る当事者から当時の事を聞く。
それはある意味で最高の贅沢と言えた。
だからこそ、ケチ臭いと涼子に呆れながらも正樹は対価を払う事に対し、異論は無い。
寧ろ、自分から支払いたいと思ったくらいだ。
「で?何を払えば良いんだ?」
「この件が片付いた後。調べて欲しい事が幾つか有るの……」
そう前置きした涼子は幾つかの調べて欲しい件を告げると、正樹は快諾する。
だが、問題が無い訳ではない。
「サツ含めた行政のデータベースを漁るのは構わねぇよ?何度か潜って、データ覗いたりしたし……だが、殺害命令云々の方は流石に時間が掛かるぞ?てか、成功したら御の字だわ」
「なら、直接当事者からインタビューした方が良いかしら?」
「それが出来るんなら、その方が良いわな……で?コレはあの娘の為か?」
正樹の問いに涼子は正直に答える。
「両方ね。私の為であり、あの娘の為でもある」
「そうか。なら、俺が口を挟む事じゃねぇな……」
涼子の昔話とお願いは終わった。
だが、次にするべき事があった。
「で?刑務所から君の友達を出す話だけど……セキュリティはどんなもんなん?」
そう。
監獄を襲い、中に収監されている魔女を助け出す問題に関しての打ち合わせであった。
正樹から襲う監獄の警備レベルを問われれば、涼子は師から贈られた資料を渡しながら答える。
「多分、あの世界でトップクラスと言っても良いわね。連中風に言うなら、産まれ出ただけでも罪深い魔女なる乙女を可能な限り、二度と陽の目を見せない様にする為に作られた収容施設が"墓地"だからね」
監獄の事を答えれば、正樹は納得する。
だが、同時に疑問も浮上した。
「成る程なぁ……なぁ、其処は何で墓地なんて大層な呼び名で呼ばれてるんだ?君の力なら容易く壊せるだろう?」
当然の疑問。
正樹の疑問はそう言って良い。
その疑問に涼子は答える。
「その理由は立地にあるの。監獄のある無人島では魔力の運用が難しくなるのよ」
「つまり、魔法が使えなくなる。そういう事か?」
「その認識で良いわ。で、立地が孤島であるが故に侵入は簡単ではなく、警備は魔女と言う厄災を封じ込めているが故に厳重。場合によっては管轄の海軍もやって来る……」
孤島であるが故に周囲の警備の為に海軍から軍艦を船員ごと徴用し、複数の軍艦が警戒に当たってる。
そう聞けば、正樹は「流石に大袈裟だろ?」と他人事の様にボヤいてしまう。
だが、涼子から渡された資料に目を通していく内に正樹は呆れてしまう。
「そうなると、教会の連中が君の存在も含めて魔女関連の真偽に関してノーコメントを貫く理由が解らねぇな」
「昔と千年以上後の未来じゃ、事情が異なるんでしょ……それに魔女に敗けまくった記録とか残したい?」
涼子の答えに「歴史修正主義のバカタレも実際に存在するのを考えればおかしくないか」と他人事の様に返すと、改めて資料に目を通していく。
「周囲は4隻の軍艦が警戒に当たり、島内も常にパトロールが行われている。そして、肝心の監獄内も監獄内で警戒が厳重と来てると言う訳か……」
「その上、資料にある通り。警報系のトラップがワンサカ仕掛けられてるし、地下最深部で警報を鳴らしたら即座に全てが封鎖され、私達は二度と陽の目を拝む事が出来なくなる」
涼子が言う通り、資料に記された警備体制には地下でトラブルが起きた時は直ぐにロックダウンして完全封鎖する。
そうして、魔女を助け出そうとする者達ごと魔女を閉じ込める。
そんな体制を整えている聖王教会に対し、正樹は頭を抱えてしまう。
「頼りの魔法を使うのは難しい。その上、警備体制は厳重を極めていて戦力も相応にある。そして、一番の問題は定期連絡だ」
「そう。定期連絡が無かった場合、本土の部隊がやって来る点が一番の問題と言えるわね」
「それにプラスして、俺達がヤラかしてる間に周囲の海域が封鎖される上に監獄内に即応の部隊が大挙して、俺達を嬲り殺しにして来るのも忘れるな」
涼子の言葉を補足すれば、正樹は更に意見を続ける。
「オマケに本人の確保に成功しても、周りは完全に包囲されて孤島だから逃げ場は完全に無い……例え、銃器やら使えたとしても物量で踏み潰されて嬲り殺しは免れないし、逃げる手段も無いんなら派手な自殺と変わらねぇ」
強力な魔法が使えないなら自殺行為と変わらない。
正樹がシニカルに言えば、涼子は紫煙と共に問い返した。
「なら、逃げる手段さえ確保出来れば良いのね?」
「それに中の連中を皆殺しないし無力化にする為の手段も欲しいし、プランBになっちまった時に備えて重火器も欲しい。作戦地域へ移動や潜入する為の手段だって欲しい。確かに欲しい物を言ったらキリが無いのも事実。だが、最低でも今挙げた奴は確実に手に入れない限りはヤマを踏む気にはならんね」
魔法を用いぬ戦闘と破壊工作のプロとして、このヤマを共に踏む仲間として正樹が意見を具申すれば、涼子は少しだけ余裕を見せるかの如く暢気に言う。
「幸いにも、この件に関しては具体的なタイムリミットが無い。だから、慌てる必要も今の所は無い。それに物資に関しても揃える宛も有るし、封印されてる以上は何処かしらへ移送される心配も無いと見て良いわ」
「護送してくれる方が楽に脱獄させられるんだがな……」
正樹がボヤく様に言えば、涼子は問う。
「で?決まった?」
「何がだ?」
何の事か解ってない様子で返す正樹に涼子は告げる。
「1週間以内に決めてくれると助かるわ」
涼子は正樹がわざと惚けて解ってない様子を振る舞っている。
それを察した上で告げれば、正樹は言う。
「なぁ……あのクソアマに君は勝てた事が無い。君はそう言ったよな?」
「えぇ、言ったわ」
「それって、俺が君と言う神話レベルの魔女を倒す事すら出来なかったら夢のまた夢。そう言う事だよな?」
正樹は自分が目を逸らして居た事実を敢えて口にすれば、涼子は他人事の様に肯定する。
「そう言う事になるわね」
「最悪だ」
自分の悲願たる復讐が如何に不可能なレベルなのか?
改めて実感する正樹は決断した。
「なら、つまらないプライドは棄てるしか無いわけだ」
その言葉の意味する事を何か?
それを理解する涼子は改めて問う。
「良いの?」
「そりゃ、確かに俺のプライドとかは魔導なんぞに頼るな。そう怒鳴ってるさ。だが、復讐を果たす為に必要不可欠だと言うんなら、プライドや矜持なんてモノは犬に喰わせとけってならざる得ないのも事実だ」
現実を見据えて居る正樹の答えは涼子にすれば、文句無し。
最高の答えと言えた。
それ故……
「なら、私は一切容赦しない。そして、私も生命を賭して挑む事を私の名に於いて確約する」
魔女として、正樹の復讐に最後まで付き合う。
そんな覚悟と共に宣言すれば、正樹は感謝する。
「ありがとうな」
「勿論。対価は貰うわよ」
「俺が払えるモノでなら喜んで」
対価を聴かずに正樹が快諾すれば、涼子は心の中で「師匠が好む理由だ」と納得してしまう。
だが、今は最優先で進めなければならない事がある。
「でも、今は明日の狩りが優先よ」
「優先順位を誤るほど、俺はバカじゃねぇわ」
涼子の言葉に正樹は心外と言わんばかりに返せば、涼子は安心した様に言葉を続ける。
「なら、良いわ。因みにエクソシスト側の動きは?」
その問いに正樹は答える。
「連中も俺達と同じ様に京都入りしてる。明日の丑三つ時までに舞台入りして、標的が現れるのを待つって所だな」
「連中が舞台に入る時間は解る?」
「午前1時半頃に連中は舞台入りするそうだ。俺と君は其処に乗じて潜入する訳だが……本当に良いのか?」
ハッキングでエクソシスト達の端末から作戦開始時刻を掌握する正樹から問われれば、涼子は肯定する。
「仕方ないでしょ?私達が最初から現地に潜入してたら確実にバレるんだから……嫌よ?寝込みを襲われるとか?」
禁足地として人間の気配が皆無な妖怪達が住まう土地であるが故に、妖怪達は人間の気配に敏感である。
その為、前もって潜入しても直ぐに自分達の存在が露見してしまうのは火を見るより明らか。
故に……
「そうなると、エクソシストと言うカモフラージュを利用せざる得なくなるわ。それに、妖怪達には敵がエクソシストだけと思わせといて、油断を誘う方が作戦の成功率は上がる」
「その前にあの娘が喰われちまったら、どうすんだよ?」
正樹の問いに涼子は答える。
「その時はプランBよ」
「解った。プランBだな。で?プランBって何だよ?」
涼子のプランBが何か?
正樹が問えば、涼子は粗雑な口調で返した。
「ねぇわ。そんなもん」
涼子の答えに正樹は呆れ混じりに笑いながら返す。
「ギアーズシリーズは俺も好きだぜ」
「私も好きよ。4以降も吹き替え出て欲しいくらいにね」
そう返した涼子は真面目な面持ちになると、真面目にプランBを答えた。
「私が強襲して陽子を助け出す。で、ついでに其処に居る雑魚共に嫌がらせしてから貴方の所へ連れて行くわ」
「俺はベビーシッターじゃねぇぞ」
正樹は不満を露わにする。
戦場で足手まといを連れてながら戦う事ほど、生命を縮める行為は無いのだから当然だ。
そんな不満そうにする正樹へ涼子は言う。
「なら、貴方が私の代わりに連れ出してくれる?」
「そりゃ無理だ」
「なら、よろしく」
こうして、プランBを決まった。
作戦を緻密に立てても、実際に事が起きるまでは何がどうなるか?
解らない。
それ故、展開次第で柔軟に対応するしかないのだ。
「マジでクソプランだな。実質、行き当たりばったりじゃねぇか」
皮肉屋らしくボヤく正樹を涼子は宥める様に言う。
「仕方ないわよ。物事は頭の中で引いた図面通りに行く訳じゃないんだから」
「そらそうだけどよ……クソプランはクソプランだ」
ボヤいた正樹は「だが、これしか無いのも事実なんだよな」と忌々しそうに言えば、涼子は「正義の味方は常に苦労するのよ」と返した。
そして、2人は夜の京都へと繰り出すのであった。
感想とかくれると嬉しいなぁ




