不穏な気配
昨日は正樹を検診。
それから、正樹が本当に魔弾等の魔法を感知。更には打ち消せる能力が本当に有るのか?検証した。
結果は検診に関しては大体は見立て通り。
大嫌いな魔女の意見を求めずに済んだ。
だが、検証に関しては全て事実と判明。
それ故に涼子は朝の教室で独り頭を抱えていた。
アイツの打ち消す力。
便宜上『マジックキャンセラー』って呼ぶけど、コレは何で普通の人間に備わっているのか?マジで意味が解らん。
正樹の能力。もとい、マジックキャンセラーは魔導に関してトップレベルの専門知識と技術を持つ涼子や涼子の師であっても再現不可能な、特殊かつ希少な能力であった。
何故、正樹がその様な力を持っているのか?
涼子は思考を巡らせていく。
こうした特殊な力は遺伝したりする事がある。
その場合、アイツの両親のどちらか。または、多い祖先にその力が有る可能性が高くなる。
ビジネスマンに頼んで、アイツの家族関係調べて貰うべきかしら?
何故、正樹にマジックキャンセラーがあるのか?
その理由を知る為に正樹の両親を始めとした親類を探るべきか?涼子は思案したが、直ぐに辞めた。
アイツにマジックキャンセラーが有るのか?この理由は個人的に気になる所だけど、あの人を殺すのに理由を探る必要は無い。
寧ろ、どうでも良い事。
正樹にマジックキャンセラーがある理由は正直気になる所である。
だが、何故あるのか?よりも、ソレをハミュツを殺す為にどう利用するべきか?考える方が効率的で建設的。
そう判断した涼子は持っている理由を考えるのを辞めると、次の思考にシフトしていく。
マジックキャンセラーが検証通りなら、アイツの手に触れている物。
刃物や銃器を介して効果を発揮する。
無論、拳や脚でも同様に効果を発揮する。
でも、そうなると京都で私特製の光学迷彩が機能不全を起こす事無く機能していたばかりか、アイツに検証で使わせてみた私のコレクションが問題無く使えた点も引っ掛かる。
あの途中で辞めたCQBめいた検証の後。
涼子は正樹のマジックキャンセラーがどの様に効果を発揮するのか?
効果を発揮した場合。どの様な弊害があるか?
其れ等を確認する為に自分の持つ魔道具等を使わせてみた。
結果だけ言うならば、問題無く使えた。
その点が引っ掛かった涼子は考察していく。
可能性として一番大きいのは無意識ながらもマジックキャンセラーを完璧に使い熟している事。
アイツが意識的にか?無意識にか?
何れにしろ、マジックキャンセラーが発動させる為のスイッチは相手が敵対的な行動をしているのを確認した時と言う可能性が高い。
自分とエレオノーレの魔弾を消滅させた時、其れ等はある種の敵対的行動と言えた。
その点を踏まえて考察した涼子は正樹のマジックキャンセラーは相手の敵対的行動を確認し、ソレを頓挫。または粉砕する意志が載らないと発動しないと、仮説を立てた。
結論にも似た仮説を立てた涼子は呆れてしまう。
「デタラメ過ぎるわ。ある意味で完璧にON/OFF使い熟してるカミジョーさんの右手じゃん」
呆れ混じりにボヤキを漏らすと、やってきた顔馴染みのクラスメイトである美嘉が首を傾げて尋ねた。
「何がカミジョーさんの右手なのヤクちゃん?」
「今考えてる小説の設定」
そう返すと、涼子へ食い入る様に美嘉は聞いて来る。
「え?ヤクちゃん小説書くの?何処に投稿するの?なろう?カクヨム?」
そんな美嘉に涼子は呆れ混じりに返す。
「考えてるとは言ったけど、投稿するとは一言も言ってないわよ」
「えー……ヤクちゃんの小説読みたかったのになー」
心の底から残念そうに言う美嘉に涼子は「投稿したとしても教えねぇ」そう意地悪く返せば、ホームルーム前の教室は賑わいを見せ始めた。
美嘉と剣道部の朝練から戻った明日香。それに陽子と言ったいつもの面々で駄弁っていると、2人のクラスメイトが涼子の元へやって来た。
「薬師寺さん。ちょっと良いかな?」
「よっちゃんとちーちゃん?」
美嘉から"よっちゃん"と"ちーちゃん"と呼ばれた2人のクラスメイト……榊原 善人と冴島 千雨は、涼子に尋ねたい事がある。
そんな様子であった。
2人が具体的に要件を言わずとも察したのだろう。
涼子は2人に告げた。
「昼休みの時でも良い?」
「あぁ、構わない」
青年。もとい、榊原 善人はそう返すと、冴島 千雨と共にその場を後にする。
そんな2人の背を見送る涼子が嫌な予感を感じていると、美嘉が尋ねて来た。
「ヤクちゃん、よっちゃんとちーちゃんと仲良かったっけ?」
その問いに涼子は優しげな笑みで返す。
「あら?私は余程無礼じゃないなら誰にでも優しいわよ」
涼子の答えに美嘉と明日香は胡散臭く思いながらも、そう思う事にした。
その後。
再び駄弁っていると、担任教師が教室に入るなり生徒達を一喝する様に声を上げた。
「そろそろホームルームだから席に着け!」
その一言で教室内の生徒達は蜘蛛の子を散らす様に其々の席に戻れば、朝のホームルームと共に学校のありふれた1日が始まるのであった。
午前中の授業が終わると共に昼休みのチャイムが学校中に響き渡れば、生徒達は思い思いに昼食を取り始めていく。
弁当を持参した者達は弁当を広げ、学食で昼食を取ろうとする者達は急いで学食へ向かう。
そんなありふれた光景が広がる中。
涼子は美嘉と明日香。それに陽子の何時もの面子で集まると、昼食を食べ始めた。
楽しい会話と共に母親が用意してくれた弁当を食べ終えると、弁当の空き容器等を急いで片付けた涼子は3人に席を外す事を告げてから教室を後にする。
教室から去り、廊下を進んで階段を昇って屋上に出ると、先客が居た。
「悪いな。楽しい時間を邪魔しちまって」
先客の1人である榊原 善人が言えば、涼子は社交辞令で返すように「別に構わない」と返した。
そんな涼子にもう1人の先客……冴島 千雨は前置きを抜きに本題を切り出すかの如く尋ねる。
「最近、誰かに尾けられてる事は無い?」
その問いに涼子は瞬時に真剣な表情になると、2人にただ一言問うた。
「厄介事?」
「その可能性が高い。私と彼は貴女と同様に訳アリだし」
訳アリの内容を知るからこそ、涼子は面倒を抱える可能性が出てしまう事に頭が痛くなった。
そんな涼子に榊原 善人は1つの依頼を投げた。
「君は魔導の専門家だ。俺に掛けられている封印を解いてくれないか?流石に身を守れる状態にしたい」
その依頼に涼子は専門家として告げる。
「封印そのものを診ない事には解けると断言出来ないわ」
「其処は気味に任せる。だが、急いでくれると助かる」
榊原 善人がそう言うと、今度は冴島 千雨が要求して来た。
「私には銃と弾。それに爆薬を」
物騒な代物を要求する冴島 千雨に涼子は呆れた様子で惚けて返す。
「私は武器商人じゃないんだけど?」
「誤魔化すなよ。アンタからガンオイルと火薬の臭いがプンプンするのよ」
冴島 千雨に自分が銃器を扱ってる事を見破られれば、涼子は「流石はスタルカ」そう呆れ混じりに漏らし、対価を要求した。
「流石にタダでブツを渡す訳にはいかないわよ」
対価の要求に対し、冴島 千雨は思わせぶりに語っていく。
「アンタ、最近。色々と派手にやってたわよね?何時だったかのホテルでの派手なドンパチや、その前のヤクザの親分宅への爆撃……アレ、アンタの仕業でしょ」
冴島 千雨の思わせぶりな言葉に対し、涼子は確認で返した。
「ソレ、脅してんの?」
肯定として取れる涼子の問いを冴島 千雨はスンナリ否定する。
「脅す?背後に明らかに関わったらヤバいのが居るだろう恩人の貴女を?そんな恐い事、考えた事も無いわ」
背後に強い権力者が居る点まで看破した上で脅す気は毛頭無い。
そう本音を告げる冴島 千雨に涼子は問うた。
「なら、何が言いたいの?」
その問いに冴島 千雨は提案で返す。
「腕の良い荒事の専門家欲しくない?今なら電子戦の専門家も付いて来るけど?」
「身売りの理由を聞いても良いかしら?」
理由を問われれば、冴島 千雨は答えた。
「単純にデカい組織の威光を狩りたい。それこそ虎の威を借る狐みたいにね」
個人で出来る事には限界がある。
特に大事な存在が有り、狙われる可能性が高いならば尚更だ。
だからこそ、身売り同然に自分を雇って欲しい。そう告げた冴島 千雨に涼子は納得すると、榊原 善人へ問いを投げた。
「成る程ね。で、そっちは?封印を解くだけ?」
その問いに榊原 善人は追加依頼した。
「封印の解除だけのつもりだったんだが、この件が片付くまでの間。家族を護ってくれると助かる。もち、この件が終わった後に再び封印をしてくれ」
その追加依頼に涼子は少し考えると、ソレを呑むことを選んだ。
「良いわよ。2人の家族の身辺を警護して貰う様に手配してみる。アンタ等に尾行が着いてるって事は多分、私にも付くだろうから」
「ありがと。あ、コレは私の方で押さえた尾行者の面よ」
そう返した冴島 千雨は手にしていたスマートフォンの画面を涼子へ向けると、自分で確保した尾行者の顔を見せた。
尾行者の顔を見た涼子は自分のスマートフォンに尾行者達の顔写真と携帯番号等の記録を送って貰うと、ビジネスマンへ顔写真と冴島 千雨の確保した資料と共にコイツ等は何者か?調べて貰いたい旨のメッセージを送った。
その後。
榊原 善人と冴島 千雨の事に関して顔写真込みで概要で送り、2人の家族の身辺警護も依頼して返信が来るのを待たずに今度は正樹へ、仕事が飛び入りでブチ込まれる可能性も含めた警告を送った。
すると、程無くして正樹から返信代わりの電話が来た。
電話に出ると、正樹から確認の言葉が飛んでくる。
「厄介事か?」
「未だ解らない」
涼子が正直に現況を答えれば、正樹は経験則から涼子に告げた。
「なら、厄介事確定として扱え」
「どう言う事よ?」
首を傾げて訝しむ涼子に正樹は指揮官として、裏社会を生き抜いた歴戦の無頼として、その理由を答えていく。
「此方は異世界帰りの奴を態々捜し出して尾行、監視する様な連中の正体と目的が未だ解ってない。その時点で後手に回ってる状態だ。先手を取れないんじゃ、厄介事になるのも時間の問題と言わざる獲ない」
そんな理由を聞かされれば、涼子はアッケラカンに尋ねる。
「なら、連中の正体と目的を割り出せば良いのね?」
「そうなるが、勝手に動いたら上から喧しく言われるぞ」
仮にも自分達は飼い主の居る身。
勝手な真似は許されないのが狗の辛い所だ。
だが、そんな立場であっても涼子は知ったこっちゃないと言わんばかりに返す。
「なら、正当防衛って形で片付けるわ」
「指揮官として命じる。向こうが手出ししない限り、絶対に辞めろ。フリじゃねぇぞ?マジで向こうが手を出して来るまでは殺るな」
「了解。指揮官殿……でも、向こうが手を出して来たら、その時は貴方の命令であっても無視してタマ獲るからよろしく」
「その時は連絡入れてくれ。知らないよりは知ってる方が初動取りやすいから」
そう返した正樹は「じゃあな」と、言い残して電話を切った。
スマートフォンをしまった涼子は2人に告げる。
「当面は連絡待ちになるわ。穏便に解決出来れば良いけど、連中の正体と目的次第では血を見る事になるわ」
涼子の言葉に冴島 千雨は笑顔で答えた。
「血が見たいって言うんなら、奴等の血を見せてあげるわ」
冴島 千雨の言葉に榊原 善人は辟易とした様子でボヤいてしまう。
「血腥い世界は二度と御免だ」
その言葉を茶化す様に冴島 千雨は言う
「あら?封印を解いて臨戦態勢を整えようとしてる奴の言葉とは思えないわね」
茶化されても榊原 善人は責める事無く、さも当然の様に返す。
「仕方無いだろ。平和を愛するなら戦いに備えなきゃならんし……」
榊原 善人の言葉に涼子と冴島 千雨は納得すると、屋上を後にするのであった。
正樹の感知能力とマジックキャンセラーに関しては最初から備わってたとしても現代日本で普通に生活する上では無用の長物
それこそ、猫に小判。豚に真珠としか言えない代物としか言い様が無い
本人もそんな能力つか異能が備わってる事が解ってないし、異世界行く前でも役に立った事も無いから余計に無用の長物だった
だが、異世界で何か場数を踏んでく内にその能力の熟練度がカンストした様な状態になってしまったという皮肉
尚、コレが理由で魔導の才が言われたのかも知れない可能性はあるが、相手の魔法関連消せる方が差し引きのメリットがデカいと思うので気にしてない模様
新キャラ2人に関しては気が向いたら解説するかもしれない。多分
感想とか評価とかブクマとかレビューに読了ツイートとか貰えると嬉しいのでちょーだい♡




