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現代に帰還した"元"邪悪な魔女は平穏に暮らしたいけど、駄目そうなので周到に準備して立ち回りながら無双します  作者: 忘八


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検診

3ヶ月以上振りの更新


 夕方前の"犬小屋"のリビング。

 正樹は少しだけ不機嫌そうにしながら涼子に尋ねる。


 「仕事でも無いのに呼び出して何のつもりだ?」


 幸運にもプリズンブレイクは正樹が確保した休暇期間中、成功と言う形で完了させる事が出来た。

 それ故、正樹は残りの休日を有意義に使おうと思っていた。

 しかし、ソレは涼子からの呼び出しという形で台無しとなった。

 そんな不満を漏らす正樹を窘める様に涼子は言葉を返す。


 「そう怒らないでよ。私だって貴方の為に貴重な休暇を割いてるんだから……」


 貴方の為に。

 そんな答えが返って来ると、正樹は問うた。


 「どう言う事だ?」


 正樹の問いに涼子は説明していく。


 「先ず第一に貴方の身体のサイズを確認したかった。貴方の装備を仕立てる為にね」


 涼子は正樹の怨敵であり、己の師でもある魔女から正樹の為に装備を仕立てろと命じられていた。

 その為に正樹の身体の寸法を測りたい。

 そう告げれば、正樹は納得すると共に次の理由を問うた。


 「もう1つの理由は何だ?」


 正樹に問われた涼子は真剣な表情と共に答えていく。


 「もう1つていうか、こっちが本命なんだけどさ……貴方の身体を具体的に調べたいのよ。ゴタゴタ続きでその暇無かったし」


 涼子が自分の身体を調べたい。

 真剣な表情と共にそう答えれば、正樹はその理由を確認する為に問う。


 「理由聞いても良いか?」


 「理由は単純。貴方があの人(ハミュツ)の作り上げたアンデッドだから」


 その理由に正樹は納得すると、確認の為に尋ねた。


 「あのクソアマが俺の身体に何か仕込んでるのか?確認する為って事か?」


 「それもあるんだけど、一番はあの人が作り上げたアンデッドがどう言うモノなのか?後学の為に知りたいって所ね」


 涼子の語った自己中心的な理由に正樹は辟易としながらボヤいてしまう。


 「俺の為じゃねぇのかよ」


 「貴方の為でもあるわよ。人工的なアンデッドによっては自己修復機能が有ったりするし、その修復機能がどう言う方法で機能するのか?機能するとして、発動条件は何か?知らないよりは知る方が良いでしょ?」


 涼子の答えに正樹は納得すると同時。尻ポケットに手を伸ばし、徐ろに小振りのフォールディングナイフを手に取った。

 それからすぐに刃を出すや、一瞬の躊躇いも無く自らの左手を深々と突き刺した。

 目の前でトチ狂った真似をした正樹に対し、涼子は呆れながら尋ねてしまう。


 「アンタ正気?」


 「この方が手っ取り早いだろ?」


 正樹が血の滴る左手から刃を抜きながら平然と返すと、左手の傷が瞬く間に塞がっていく。

 そうして滴っていた鮮血が止まるのを目の当たりにすると、正樹は傷の塞がった左手を涼子に見せながら告げた。


 「どうやら自動的に修復機能が発動するみたいだな」


 左手をグーパーグーパー動かす正樹の言葉に涼子は呆れながらも魔導の専門家として確認の言葉を投げていく。


 「傷が塞がってる間にダルさや倦怠感を感じたりは?傷が塞がってる際に痛みは?」


 「倦怠感は無いな。痛みに関しては傷口が塞がるまでムズムズしたぐらい。あ、刺した時はマジで痛かった」


 正樹の答えを聞くと、涼子はブツブツと独り言ち始めた。


 「倦怠感が無いって事は魔力を用いて自己再生を強く促進させてるとしても消費量が其処まで無い可能性が高い。痛みに関しては自然治癒の際に生じるモノと似た可能性が……いや、それ以前に傷が塞がってる間に魔力を感じなかった。そうなると……」


 独り言ちて分析する涼子に正樹は呆れ混じりに言う。


 「おーい。分析とか考察なら後にしてくれねぇか?」


 ブツブツ独り言ち続けていた涼子は正樹の声で独り言を辞めると、謝罪と共に指示を飛ばした。


 「あぁ、ゴメンゴメン。じゃ、早速だけど服脱いで」


 「今此処でか?」


 その問いに沈黙で「さっさと脱げ」と涼子が返せば、正樹は渋々ながらも今着ているベージュのチノパンと半袖のサファリシャツを脱いでいく。

 程無くして正樹が下着姿になると、涼子は早速と言わんばかりにメジャーを手に正樹の寸法を測り始めた。

 正樹の寸法を測り、メモ書きしていく涼子に正樹は尋ねる。


 「なぁ、さっきから気になってる事があるんだけどよ……聞いても良いか?」


 「予想が付くけど、何?」


 「何で()()()()()()()()()()()()()()んだ?向こう(異世界)に帰ったんじゃないのか?」


 正樹の問いの通り。

 ダイニングテーブルに座り、煙草を燻らせるエレオノーレの姿があった。

 何故、彼女が此処に居るのか?

 涼子は答える代わりにエレオノーレに問うた。


 「其処ん所どうなのよ?」


 涼子に問われたエレオノーレは涼しい顔でさも当然の様に答える。


 「他の世界の歴史や文化を学んでみるのも悪くない。そう思ってな……なので暫くの間、此処に逗留させて貰いたい」


 「勿論、その対価として彼の指揮下で働くぞ」そう締め括ったエレオノーレに涼子は呆れ、正樹は自分が指揮官として見られてる事に項垂れながらボヤいてしまう。


 「やっぱ、俺が指揮官する訳?」


 「他に指揮官出来る人、居ないでしょ。ほら、貴方は仮にも士官してたんだし……」


 涼子とエレオノーレと違い、一兵卒から叩き上げで中尉となった元軍人の正樹は当然ながら士官としての教育を受けていた。

 更にブラックオプスやウェットワークとも言える非合法な汚れ仕事を行って来た経験も踏まえれば、指揮官になるのは当然の帰結と言えるだろう。

 そんな正樹はウンザリとした様子で言葉を漏らしてしまう。


 「俺に面倒押し付けたいだけじゃねぇか……」


 ウンザリとした様子の正樹に涼子は悪い笑みを浮かべながら称賛する。


 「あら?貴方の采配や作戦立案は見事なモノだったじゃない。それに私含めて他の人に貴方ほどの腕前やワザマエは期待出来そうにないし、貴方が指揮官する方が生存率は上がるんじゃない?」


 実際問題。

 プリズンブレイクでの正樹の作戦立案能力と実行時の采配は見事なモノと言えた。

 特に敵から回天の一撃とも言える砲撃を喰らわされた後。

 リカバリーしてみせたばかりか、脱出まで漕ぎ着けた采配は実に見事と言わざるを得ない。

 そんな優秀な指揮官であるからこそ、涼子とエレオノーレは正樹に対して指揮官となる事を望んだ。

 正樹は少しばかり悩むと、大きな溜息と共に首を縦に振った。


 「ハァァァ……俺が指揮官するしか無い訳ね?だけど、俺よりも良い指揮官が居たらソイツに引き継がせるぞ。俺は現場で暴れる方が性に合うんでな」


 正樹が自分よりも優秀な指揮官が来たら、その者に丸投げする事を条件に指揮官となる事を認めた。

 そんな正樹の条件に対し、涼子は認めると共に鼻で笑う。


 「それで構わないわ。だけど、無理でしょ?大概のチート持ちってゴリ押ししかやらないだろうし、貴方みたいに正規の軍で高度な教育を受けてるわけでもないだろうしね。それに……」


 「それに?何だよ?」


 「軍つうか陸の自衛官がウチに来ることもあり得ないでしょ?後、ブラックオプスやらウェットワーク出来る貴重な人材が私等に送られる事も無いんじゃない?」


 涼子が身も蓋もない事を言えば、正樹は益々ウンザリとしてしまう。


 「やっぱ、人材確保が急務だな……せめて、何人かは地球人で異世界とは無関係な兵隊上がり欲しいわ」


 "FNG(まっさらな新兵)"を最初から訓練するより、それなりに経験を積んだ軍人上がりを訓練する方が時間とカネの節約となる。

 当然、実戦にも直ぐに投入しやすくもなる。

 だからこそ、正樹は欲してしまう。


 「何処かに転がってねぇかな?それなりの年月を勤め上げて、それなりに実戦経験も積んだ元軍人って……」


 優秀な兵士を。

 そんな無い者ねだりする正樹に涼子は寸法を測りながら呆れてしまう。


 「高望みし過ぎよ。それこそ無理ってもんでしょ?アンタみたいにネイビーシールズよろしくフロッグマンして、更に山岳猟兵もやれる上に犯罪関連も出来るバケモノだったら余計に……」


 涼子の言ったバケモノに対し、正樹は心外だと言わんばかりに返した。


 「俺の何処がバケモノだよ?あんくらい、真面目に訓練を積み重ねて経験積んでけば誰でも出来るわ」


 正樹の誰でも出来る。

 その言葉に涼子は益々呆れてしまう。


 「あのさぁ……私が言えた義理じゃないけどさぁ、アンタは自分の出来る事を低く見過ぎ。数キロも泳いだ後にフリークライミングやるわ、その後に休み無しで突入してジョン・ウィックよろしく目に付いた敵を片っ端から撃ち殺しながら前進する奴はバケモノの枠組みに入るんだわ」


 プリズンブレイク実行時に於ける正樹の行動を並べ立て、正樹の事をバケモノと呼ぶ根拠とした涼子に正樹はさも当然の様に返す。


 「伝説の魔女に言われるのは流石に心外なんだわ」


 「だから、私が言えた義理じゃないと前置きしたんだわ」


 「正直言うと、向こう(異世界)で養父になってくれたクソジジイを知ってる身としては、上には上が居るって嫌ってくらい解らされてるから俺がその枠に入るのは何か申し訳無い気分になるんだよな……」


 正樹が自分より上のバケモノと述べた養父なる"クソジジイ"に対し、涼子は思わず尋ねてしまった。


 「どんな御仁なのよ?」


 「redEyesのアラン・クルサード大佐とイグナチオ・クリヴィーレを掛け合わせて、其処へ更にCoDのペルセウスを混ぜた様なクソジジイだ」


 正樹の並べた例えに涼子は納得すると共に呆れてしまう。


 「どんだけヤベェバケモノなのよ?」


 そんな呆れる涼子に今まで静かに遣り取りを眺めていたエレオノーレが呆れた。


 「奴から"黒"を名乗る事を赦された唯一の者が言うと、嫌味に聴こえる」


 「どう言う事だ?」


 涼子の持つ『黒き魔女』の異名の意味を知らないが正樹が尋ねれば、エレオノーレは理由を答えていく。


 「貴様が殺したい私の大嫌いなクソアマ(ハミュツ)は認めた弟子に対し、色を称号として贈る。その中での最高位が全てを染め尽くし、全てから染められない唯一の色である黒。そして、その黒を与えられた者は()()()()()()()()()()、あのクソアマから()()()()と認められた者にしか与えない」


 エレオノーレから語られた涼子の持つ黒の異名を知ると、正樹は驚くと共に呆れてしまった。


 「成る程ね……それにしても神に等しい力とか流石に大袈裟過ぎ……過ぎないな。黒死病やスペイ風邪レベルの損害を叩き出したパンデミックを起こせるんなら、寧ろ足りないくらいだ」


 歴史好きとして調べた異世界に深く爪痕を遺した疫病の概要を知るが故に、正樹は涼子の力を納得するしか出来なかった。

 そんな正樹に涼子はさも当然の様に返す。


 「アレも貴方の言葉を借りるなら、真面目に魔導を学んで、コツコツと勉強してれば誰でも出来る事よ」


 涼子の答えに正樹は益々呆れてしまった。


 「出来てたまるかバカ野郎」


 そんな遣り取りをしながら寸法を測り終えた涼子は、パンイチにさせた正樹をリビングに用意していた折り畳みベッドに寝かせ始めた。


 「さて……今度は身体を具体的に調べていくわよ」


 「頼むから解剖するとか言わないでくれよ」


 辟易とした様子で言う正樹に涼子は呆れ混じりに返す。


 「皮膚片や血液。髪の毛とかをサンプルとして貰うけど、解剖はしないわよ……じゃ、早速だけど始めるわよ」


 そう告げた涼子は己の持つ魔女の力を用いて正樹の肉体を調べていく。

 久し振りに高度な魔導の産物を分析する涼子は心做しか嗤って居た。

 そんな涼子の顔を見た正樹は呆れ混じりにボヤいてしまう。


 「何か、イカれたマッドサイエンティストにしか見えねぇんだけどよ。気の所為か?」


 正樹のボヤきに涼子は狂気の科学者の様な笑みと共に認めた。


 「気の所為じゃないわね。許されるなら解剖して肉の一片に至るまで調べ尽くしてみたい気分になってるから」


 涼子に辟易とした様子で正樹は「勘弁してくれ」そうボヤくと、涼子は正樹を他所に現時点で解った事を口にしていく。


 「肉体のベースはやっぱり"混沌"だ。混沌の血肉と骨、臓物を()()()()()()()()()()()()()()()()()魂の器たる肉体を構築してるのか……」


 改めて調べて解った事を口にした涼子は正樹が魔力を見えた理由に関して考察を始めた。


 「そうなると、魔力が見える様になったのは混沌の血肉によるもの……そう考える方が良いのかしら?」


 「あー……魔力が見える云々に関してはこの身体になる()()()()見えてた」


 正樹が水を差す様に言えば、涼子は驚きを露わにしてしまう。


 「嘘でしょ?」


 「マジ。俺に魔導関連の理論を教えてくれた女が何時だったかエレオノーレが俺にやったアレをして来て、見えた。後、魔法使う奴が魔力を運用してるのを見えたり、感じ取れたりもした」


 正樹から聞かされた内容に涼子は思わず間抜けな声を上げてしまった。


 「はぁ!?」


 間抜けな声を上げてしまった涼子に正樹は更にとんでもない事を告げていく。


 「後、溜めてるっぽい魔力の塊に弾を撃ち込んだり、飛んできた魔力弾をヤケクソでナイフで斬ってみたら()()()()りもした」


 「マジなの?何か、魔法の武器とか使ったりしたとかじゃなくて?」


 涼子の質問に正樹は恐る恐る答えた。


 「ナイフは大量生産品だったし、弾も工場生産品の普通の弾だ」


 その答えに涼子は呆気に取られ、エレオノーレは愉快そうに笑い出した。

 一頻り愉快に笑ったエレオノーレは心の底から愉快な様子で正樹に告げる。


 「コレは傑作だ。ソレだけの芸当出来る奴は私達が居た所でも滅多に居ないぞ」


 「そう言われたって出来ちゃったんだもんよぉ……まぁ、そのお陰で魔法使える奴と戦って生き残る事が出来たから別に良いんだけどな」


 正樹の答えにエレオノーレは益々愉快になり、涼子は信じられないモノを見る目を向けながら酷い物言いで尋ねた。


 「アンタ、本当に人間?実は人間の記憶を植え付けられただけの何かヤベェ兵器とかだったりしない?」


 その酷い物言いに正樹はムッとした様子で否定する。


 「失敬な奴だな。俺はれっきとした人間だぞ。キチンと両親も居れば、幼馴染だってちゃんと居るんだわ……」


 その言葉に嘘が無い事を察した涼子は話を戻した。


 「まぁ、良いわ。アンタの身体の解析は済んだ。構造的には人間と遜色無いけど、献血はしない方が良いわね。輸血の際に使われたら何が起きるか?解らないから……」


 魔法で解析した結果を涼子が告げれば、正樹は納得と共に尋ねた。


 「傷の再生に関しては?」


 「ソレは恐らくだけど、混沌の名を持つ邪神の血肉由来のモノと診るのが妥当っぽい。あの手の連中、自己修復機能が備わってたりするから……」


 「成る程な。なら、撃たれても痛いだけで済む訳か?」


 暢気に宣う正樹に涼子は呆れ混じりに否定と肯定で答えた。


 「当たり所が悪かったら死ぬし、滅茶苦茶痛いわよ。痛覚関連は人間のモノと同等だから……とは言っても、アンデッドだから外部から修復すればゲームのキャラよろしく戦線復帰出来るんだけどね」


 「つまり、君が生きてる限りは俺は戦い続けられる訳だ」


 楽観視する正樹の言葉に涼子は呆れ混じりに肯定すると、懸念事項を専門家として告げる。


 「その認識で良いわ。だけど、マスター権は貴女の大嫌いなあの人だから、あの人の気分次第で突然死んで永遠の虚無に囚われる可能性も有るから楽観視はしない方が良いわ」


 「奴と相対するまではソレは起きないだろうから気にしないでおく。奴の性格的にそんなツマラナイ真似はせず、自分の手で俺の心臓抉り出そうとする」


 忌々しき怨敵であるが故に、その怨敵の性格を詳しく把握していた正樹の言葉に涼子とエレオノーレが否定する事は無かった。

 その後。

 正樹が涼子から更に詳しく自分の身体の事を確認すると、エレオノーレがウキウキとした様子で声を挙げた。


 「検診とやらが終わったなら、貴様が本当に出来るのか?この目で確かめてみたいんだが……」


 エレオノーレの誘いに正樹は「勘弁してくれ」と項垂れるが、涼子は乗り気であった。


 「私も本当に起こるのか?実際に確認してみたいわ」


 反対しても駄目そうな気配を察したのだろう。

 正樹は降参するかの様に返した。


 「此処(犬小屋)でやるのは流石に嫌だぞ。近所迷惑になるから」


 そう言う事になった。

 3人は実験の為、涼子の地下バンカーのある平原へ移動するのであった。




最新のを3話ほど消して描き直してる


当面は日常パートになると思う。多分…


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