Mora BREAKOUT 後編
マジかよぉぉぉぉ!!?
アンチャーテッドシリーズよりネイサン・ドレイク
頭上から小さな地響きと共に派手な爆発音が喧しく響いたと同時。
正樹と涼子は階段から転がり落ちていた。
程無くして、待機していたエレオノーレの前で止まると、エレオノーレは呆れ混じりに声を掛けた。
「酷い様だな」
正樹と涼子の姿を見るなりエレオノーレは呆れながら思った事をそのまま口にすると、涼子の下で転がる正樹は愉快そうに返した。
「いやぁ、死ぬかと思った」
正樹の愉快かつ暢気な口振りに対し、今度は涼子が呆れてしまう。
「何でそんな暢気なのよ?」
涼子が正樹から退いて立ち上がりながら愉快そうにしている理由を問えば、起き上がった正樹は転がり落ちてる間に抱いていたM249を点検しながら答えていく。
「だってモノの見事に状況を覆されたんだぜ?しかも、装備レベルは俺達の方が上なのによ?コレを愉快と言わずに何て言えば良いんだ?」
正樹は心の底から愉しそうに答えた。
実際問題。
敵の指揮官が打った一手たる大砲による砲撃は、不利な状態にあった守備兵側に形勢逆転を齎す起死回生の一手に他と言わざる得なかった。
ソレを守備兵達の敵の指揮官として理解するが故に、正樹は敵の指揮官の采配を心の底から感服していた。
そんな正樹は涼子に尋ねる。
「なぁ、連中の魔力とか感知は出来てたか?」
唐突な問いに涼子は不快そうに答えた。
「いいえ。出来なかったわ」
忌々しそうに答えた涼子に対し、エレオノーレは少しだけ驚きを露わにしてしまう。
「ん?貴様が魔力を感知出来ないとは奇妙だな」
自分が知る中でハイエンドレベルの魔導を収めた涼子が魔力を感知出来なかった。
それはエレオノーレを驚かすには充分過ぎる事実であった。
そんなエレオノーレに涼子は仮説ながらも己が感知出来なかった理由を告げる。
「多分だけど、連中は魔封具を装備して魔力を隠してたんだと思うわ」
仮説であるが、涼子の答えは正鵠を射ていた。
敵の指揮官である初老の男は自分は勿論のこと、大砲を運び込んで撃った部下達に魔封具と呼ばれる魔法を使えない様にするアイテムを敢えて装備させる事で涼子達から魔力を感知されないように手を打っていた。
それ故、大砲を撃たれるまで気付けなかったのだ。
そんな涼子の仮説を聞くと、正樹はバラクラバの内側で益々愉快そうに笑みを浮かべながら独りごちる。
「良いねぇ……ゾクゾクして来た」
心の底から愉しそうに嗤い、口元に笑みを浮かべる正樹にエレオノーレは尋ねる。
「それで?どうするつもりだ?」
エレオノーレの問いに正樹は嗤って答えた。
「当然、連中を突破して逃げるに決まってる」
正樹が当然の様に答えると、今度は涼子が問う。
「手立てあるの?唯一の出入り口は大砲で押さえられてるから私達は釘付けにされて動けないし、敵は次の一手を打って来るまでそう時間は掛からないわよ?」
「君の言う通りだ。敵は恐らく。否、確実に控えさせてるだろう伏兵を送り込む算段を既に整え終えてる」
「その根拠は?」
エレオノーレから問われると、正樹はアッケラカンに答える。
「俺ならそうする。なので、ルートを変更して遠回りに脱出する」
ルートを変更する。
正樹から告げられると、涼子とエレオノーレは首を傾げてしまう。
そんな2人に対し、正樹は更に言葉を続ける。
「グリー、エントランスフロアの壁をブチ破れるか?」
「えぇ、簡単に出来るわ」
涼子が肯定すると、正樹は腰のガンベルトから底部が窄まった薄い緑色の円筒状の手榴弾……M34白燐手榴弾と普通の円筒状の手榴弾。
M18発煙手榴弾を1つずつ手に取りながら返す。
「なら、君のM4を貸してくれ。もち、40ミリ装填してからな」
正樹から自分の銃を渡す様に要求されると、涼子は問うた。
「何する気?」
「決まってる。脱出するんだ」
正樹がそう返すと、涼子は己が首から提げていたM203グレネードランチャー付きのM4A1を手に取ると、正樹に差し出す。
涼子からM203付きのM4A1を受け取った正樹はM4A1に取り付けられた40連弾倉を外し、己が纏うプレートキャリアの前面に取り付けられた弾嚢から自身が携行する40連弾倉と交換。
その後。
M203グレネードランチャーのフォアエンドを前に少しだけ前進させて40ミリ榴弾が装填されている事を確認すれば、自分が持つM249を涼子に渡して告げる。
「じゃ、行こうか」
「敵に動きはありません」
地下へ通ずる階段を見張る部下から敵の動きが無い事を報告されると、指揮官である初老の男は渋い面持ちを浮かべたまま沈黙を続ける。
すると、今度は大砲に榴弾を装填していた部下から報告が上がった。
「次弾装填良し!」
「砲手!階段の下に落ちる様に撃てるか!?」
「2発目が撃てるならば可能です!」
部下がそう答えると、初老の男は躊躇う事無く命じる。
「良し。撃て」
「了解!」
命令が下されると、兵士達の手によって大砲の仰角が調整されていく。
程無くして照準が合わされると、大砲は点火され砲声を響かせながら再び榴弾が放たれた。
勢い良く飛んでいく榴弾が地下へ通ずる階段の手前に着弾して爆発すると、見張り役から大声が上がる。
「弾着!階段手前!!」
「了解!装填後照準合わせ直します!!」
見張り役から弾着報告を受けると、砲手達は大砲に火薬と榴弾を装填していく。
そんな時だ。
再び見張り役から大声が上がった。
「敵動きあり!!煙幕です!!」
白濁とした煙が階段のある部屋の手前と、階段のある部屋。
その両方を覆い隠したのを視認した見張り役から報告を受けるや、敵の動きに勘付いた初老の男は即座に大声で命じる。
「照準そのまま!装填完了次第撃て!!魔導師!障壁を張れ!!」
その命令と共に砲手達は再装填を急ぎ、3人の魔導師は即座に手首に嵌めていた魔封具を外して投げ捨てるや、前面に躍り出て横並びに立ってバリアとも言える魔力障壁を張り始める。
3人の魔導師の手によって強固な魔力障壁が張られた。
その直後。
障壁に何かがぶつかると共に爆発が起きた。
爆発が収まった直後。
障壁の内側に立つ初老の男は指揮官として確認する。
「被害報告!!」
「全員無事です!!」
爆発は魔力障壁に阻まれ、負傷者が出る事は無かった。
被害報告を受けた直後。
階段の方から聞き慣れぬ火薬の破裂音が響き、魔力障壁に命中した。
命中した箇所は魔力障壁が無ければ、初老の男の眉間を貫いていたであろう所であった。
そんな中。
砲手から報告が上がる。
「装填良し!」
装填完了の報告が上がるや、大砲の前に並び立った3人の魔導師達は即座に大砲の後ろへ退いた。
それから直ぐに初老の男から命令が下される。
「撃て!!」
初老の男の命令が放たれたと瞬間。
大砲が3度目の砲声を響かせ、程無くして階段のある部屋の中を爆発と共に蹂躙。
同時に敵が展開したであろう煙幕も爆風で晴らした。
爆発による粉塵が立ち込める部屋を睨み付ける様にして見詰める初老の男は部下に命じる。
「ルスカ!貴様は10人連れて突入!敵を追え!」
「了解!」
ルスカと呼ばれた騎士甲冑に身を包んだ部下が命令受諾と共に魔導師を含む10人の手勢を率いて階段へ向かおうとすると、初老の男の傍らに立つ魔導師が突如として大声を張り上げた。
「強大な魔力感知!コレは……魔女クラスです!!」
魔導師が声を張り上げた矢先。
城内が大きく揺れた。
揺れが程無くして止むと、初老の男は傍らに控える一回り若い副官に確認を兼ねて問う。
「城外の包囲は完了しているな?」
「はい。既に配置完了してます」
副官から既に本舎であるこの城の包囲が完了している事を聞くと、初老の男は爾後の命令を下達した。
「ならば、残った者達の半分はルスカと共に追跡。他の者は私と共に包囲に合流。急げ!!」
兵達は初老の男から命令が下されると、命令遂行の為に素早く半分に分かれて行動していく。
程無くしてルスカと呼んだ部下の隊と20名近くの兵が後続として合流し、残りは初老の男と共に城外へと移動していく。
しかし……
敵の逃走ルートは初老の男の見立てとは、大きく異なっていた。
「此処まで上手く行くとは思わなかったわ」
感心すべきか?
呆れるべきか?
迷う涼子がそう漏らすと、正樹は暢気に答える。
「俺だって此処まで上手く行くとは思わなかったわ」
2発目の榴弾が撃ち込まれた後。
正樹は1発のM34白燐手榴弾を遠投すると、その手前にM18発煙手榴弾を投げて煙幕を展開。
そうして大砲を撃ってきた守備兵達の目から姿を隠すと、正樹は煙幕の向こうに居る守備兵達に40ミリ榴弾を撃ち込んだ。
40ミリ榴弾が爆発すると同時に涼子が側面の壁を破壊して脱出ルートを形成すると、正樹は意趣返しも兼ねて5.56ミリNATOを1発だけ放ってから涼子が空けた大穴から脱出。
その後。
涼子に魔法で複数の壁をブチ抜かせて即席の脱出ルートを構築すれば、悠々と敵の警備の無い城の上部へと登り、涼子が破壊した城の塔の1つまで逃れたのであった。
残骸とも言える瓦礫の中でポンチョ越しに大雨に打たれながら正樹達は、長いケーブルに繋がる大きな風船とも言える小形の気球にヘリウムガスを充填させていく。
気球にヘリウムガスを充満させて空高く浮かべると、ケーブルが空へと伸びていく。
空へと伸びるケーブルに取り付けられた4人分のボディーハーネスを装備すると、正樹達は涼子が用意した"御迎え"が来るのを待ち始めた。
「なぁ……コレってメタルギアのフルトンだよな?」
正樹が恐る恐る尋ねると、涼子はアッケラカンに肯定する。
「えぇ、そうよ。使った事無いの?」
涼子から問われると、正樹は困惑しながら答える。
「いや、似た様な事は何度かした事はありますよ?でも、この時代にヘリやら航空機は聞いた事ねーわ」
似た様な機材を経験した事がある事を答えた正樹はこの時代に航空機があるのか?
そう首を傾げてしまった。
そんな正樹に対し、エレオノーレが涼子の代わりに答える。
「航空機やらヘリとやらは無いが、代わりにあるモノが存在する」
エレオノーレの言葉に正樹は驚きながらも好奇心と共に尋ねた。
「マジで?何て奴?」
「ドラゴンだ」
エレオノーレの答えに正樹は間抜けな声を漏らしてしまう。
「え?ど、ドラゴン??」
「そろそろ来るわよー」
困惑と共に間抜けな声を漏らした正樹に涼子がそう告げた瞬間。
4人をハーネスで繋ぐケーブルが空へと引っ張り上げられ、空高く舞い上がり始めた。
「マジかよォ゙ォォォ!!?」
正樹が驚きと困惑に満ちた声を情けなく漏らす中、涼子は平然と空を見上げる。
暗視ゴーグル越しに見えた大きな竜の姿を見ると、涼子は暢気に語り掛ける。
「貴方が協力してくれて助かったわ」
遠く離れた頭上を悠然と飛ぶ御伽噺の代名詞たるドラゴンに向けて言うと、涼子の脳内に念話が届いた。
「我に貴様の世界の酒を献上する約束違えるなよ」
釘を刺す様に報酬の事を告げられれば、涼子はバラクラバの中で笑みを浮かべながら返した。
「えぇ、必ず献上しに参上するわ」
涼子が約束は必ず果たす。
そう返すと、落ち着いたのだろう。
正樹が呆れ混じりにボヤいた。
「ドラゴンを脱出のアシにするってアリなのか?」
「異世界ファンタジーらしくて良いでしょ?」
暢気に宣う涼子に対し、正樹はその通りと思う反面。
何処か納得のいかない様子であった。
「そう言われるとそうかも知れんけど……何かモニョる」
そんな正樹に涼子は言う。
「作戦は成功したんだから気にしない。ほら言うでしょ?"作戦は奇を以って良しとすべし"ってさ……」
にこやかに言う涼子に正樹は呆れながら返す事しか出来なかった。
「何処の大佐だよ」
斯くして、彼と彼女達は"教会の権威と司法制度にちょいと中指を突き立ててやる"事に成功したのであった。
早足気味だけど気にしないでくれると助かる
とりま…脱出方法にドラゴンを使うってのは異世界ファンタジーらしいだろ?(暴論
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