最後のブリーフィング
1週間以上も更新しなくて御免なさいね
書き上がったので更新するだぁよ
月曜日から木曜日の間。
正樹は訓練教官として涼子とエレオノーレに戦闘訓練を施し、可能な限り訓練教官としてミッチリと指導を続けた。
勿論。
今回の作戦における指揮官として、正樹は作戦で用いる銃器を始めとした各種装備の選定も完了させていた。
そんなトレーニング・デイを終えた翌日の金曜日の夕方前。
放課後を迎えて帰宅した後。
"犬小屋"に直行した正樹は武器庫に佇むと、"親愛なるクソアマ"。
もとい、ハミュツから提供された金属扉に関する設計図と、実際に中で金属扉を見たライラの記憶から念写された金属扉の写真をジッと見詰めていく。
扉の材質は鋼をベースに、各種金属を混ぜ合わせて扉サイズに鋳造し、その後は職人達が絶え間なく尽力し続けて鍛造。
ある意味では均質圧延装甲と言うべき代物。
そんな装甲を浸炭させて炭化させる表面硬化処理が為されているが故、表面の強度は向上している。
勿論、対魔法の加工も施されてる。
提供された設計図をジッと読み進め、装甲の材質を分析した正樹は独り言ちる。
「この時代なら、トップレベルにカネの掛かった最高の装甲と言っても過言じゃないな」
正樹の言葉通り、金属扉はあの時代のあの世界の中でトップレベルに入る強度を誇る装甲と言えた。
そんな装甲に鎧われた金属扉の写真を眺めると、正樹は他人事の様にボヤキを漏らす。
「オマケに魔法対策も施されているから撃ち込まれた魔力弾を分解すると来てる。でも、魔女なら簡単にブチ破りそうって思っちまうんだよなぁ……」
涼子やエレオノーレ始めとする魔女達ならば、鼻唄混じりに強固な扉を破壊して押し通る。
そんなイメージが湧いてしまう事に対し、正樹自身呆れ混じりに独り言ちる。
「でも、俺は生憎と魔法が使えない凡人でしかない。なので、此処は凡人らしく科学を使って突破するとしよう……」
自嘲を交えて独り言ちた正樹は改めて設計図を見詰める。
設計図を見詰め、再度確認した正樹はコレ以前から決めていた通り。
爆破する事を改めて決定した。
この厚さと材質なら、対戦車ロケット弾みたいにHEAT弾みたいなのでドカンとやるので問題は無さそうだな。
材質と厚さを確認すると同時。
どう言った方法でブチ破るか?
ソレを決めた正樹は早速。
そう言わんばかりに支度を進めていく。
用意したのは先端の大きな膨らみが目を引く、ゴツくて太い大きな筒。
もとい、陸上自衛隊でも採用されているパンツァーファウスト3。
それの最新モデルであるIT600であった。
「コイツの貫徹能力がカタログ通りなら、余裕で扉とロックピンをブチ抜ける」
金庫破りならば、金庫の中身に対して細心の注意を払って正確に金庫の扉や錠だけを破壊しなければならない。
だが、今回は扉をブチ壊すだけで良いのだ。
ならば、強力な貫徹能力を誇る対戦車ロケット弾を用意してブチ込む方が手っ取り早いのは言うまでもない。
だが……
「コイツ、クソ重いんだよなぁ……」
正樹のボヤき通り、パンツァーファウスト3はとても重い。
一番軽いであろう初期モデルであっても12.8キログラムと、13キログラム近い重量がある。
最新モデルのIT600に至っては、重量が14キログラムを超える。
それ故、正樹はボヤきを漏らしてしまう。
しかし……
「だけど、チマチマ爆弾作るよりは手軽に用意出来るし、地道に仕掛けるよりは時間の節約になる」
クソ重いデカブツにヒーコラ言う見返りに爆弾を作る手間と、爆弾を仕掛ける手間が省ける。
コレは時間との戦いに於いて大きなメリットとなる。
更に……
「何本か持ってけば、敵の部隊にブチ込めるだけの余裕も出来る。クソ重いけど……」
パンツァーファウスト3は対戦車ロケット弾だ。
だが、同時に敵兵の群れを蹂躙する榴弾としても威力を発揮する効果も持ち合わせている。
それ故、正樹はクソ重い事にヒーコラ言う方を選んだのであった。
そんなボヤきを漏らすと、閉ざしていた扉からコンコンとノックの音がした。
「どうぞー」
ノック音に対し、声を掛ければ扉が開いた。
「何をしているのだ?」
やって来たのはエレオノーレであった。
珍しく、涼子の姿は無かった事に正樹は少しだけ首を傾げながらもエレオノーレの問いに対して答えると、要件を尋ねる。
「扉をブチ破る手段を確保してた。それで?どうした?」
「報告だ。作戦決行当日、強い雨が降る。それと、監獄は増員された状態で厳戒態勢を維持し続けてる」
エレオノーレの報告に正樹は事も無げに返す。
「そうか」
「驚いたり、悪態を吐いたりしないのだな」
普段ならば報告を聞いた後に悪態なりボヤきなり正樹が、さも当然の様に平然としている事にエレオノーレは少しだけ意外そうに思ってしまった。
そんなエレオノーレに正樹は暢気に理由を答えていく。
「俺がヤラかしてから厳戒態勢を維持し続ける事に関しては想定の範囲内だ。だから、驚く理由が見当たらない。雨に関しては強い雨が降ってくれるって言うんなら、潜入する俺達の動きを隠してくれて寧ろ都合が良いんでね……」
激しい雨ならば守備する兵達の視界を妨げてくれる。
その上、雨音が足音等を掻き消してもくれる。
それ故、正樹は強い雨に降られる事を好都合と告げた。
そんな正樹の答えに対し、納得したエレオノーレは問う。
「成る程。それで、長としてのお前はどう判断する?」
その問いに対し、正樹は思案しながら答える。
「厳戒態勢の度合いによりけり。そうとしか言えない」
「規模は倍と見て良いだろう。周囲を警戒する軍艦の数が4隻から6隻に増えてる上に、その増えた2隻には上陸する為の陸戦隊が居る」
エレオノーレからの報告に正樹は思案を続けながら呟きを漏らす。
「……そうなると、確実に1個小隊以上が仕掛けた後、即座にやって来るって計算になるな。で、その後の時間経過で即応部隊の本隊が駆け付けても来る」
「その上で貴様はどうするつもりか?そう聞いてる」
エレオノーレから問われると、正樹は悩ましそうに答えていく。
「リスク……失敗の危険性を踏まえるなら、明日の作戦を中止して決行を延期するのが妥当だ。中止後は連中の厳重な警戒体制が解けるまで待ち続けるのが、一番無難かつ確実だからな」
悩ましそうに答えた正樹の言葉から何かを察したのだろう。
エレオノーレは確認も踏まえ、問うた。
「明日、決行するのか?」
その問いに対し、正樹は肯定する。
「あぁ、一応は休み名目で時間を確保してるとは言え、此方も色々と面倒な立場なんでな……さっさと片付けて次に進まなきゃならんのでね」
危険を承知で作戦を強行する事を決断した正樹に対し、エレオノーレは益々意外そうにしてしまう。
「意外だな。貴様は危ない橋を渡らないタイプに思えたが?」
エレオノーレの経験上、正樹は危険や失敗の度合いをキチンと考慮した上で事を進められるシッカリとした指揮官に思えた。
それ故、難易度が増すと共に失敗の危険性も増した今の状況下で正樹が作戦を強行する事を選んだ事は意外としか言えなかった。
そんな正樹はさも当然の様に返す。
「危ない橋を渡るにしても渡れるか?否か?そう言うのを計算して、渡れると判断したら渡るってだけの事さ。それにな……」
「それに何だ?」
「俺の居た部隊のモットーは"危険を犯す者が勝利し、全てを手に入れる"ってもんでな……必要なら生命を喪う危険を承知の上で危ない橋を渡るのが仕事だったんだ。だから、俺にすればヤバい橋を渡るのは日常茶飯事なんだ」
そう答えた後。
「まぁ、渡らずに済む方法があるんならそっちを選ぶがね」そう締め括った正樹は笑顔を見せると、エレオノーレは言う。
「貴様は良い兵士だったのだろうな……」
過去に軍に在籍していた事を触れられると、正樹はシニカルに笑って返した。
「褒めてくれるのはありがたいが、生憎と俺は優秀からほど遠い落ちこぼれの劣等な臆病者でな……良い兵士ではない」
正樹は本心から己は落ちこぼれの劣等生で、臆病者だと告げる。
だが、そんな正樹の本心からの言葉をエレオノーレはバッサリと斬り捨てた。
「ふん!臆病者ならば事情があるとは言え、危ない橋を渡ろうとせん……そう言う連中は自らの足で立ち、戦う事すら選ばん」
エレオノーレの言葉に正樹はシニカルに笑って返す。
「ただ、運が良かっただけでしかない。さて、悪いんだが……コレを運んでくれ」
その言葉と共にズシリと重いパンツァーファウスト3 IT600を持つと、正樹はエレオノーレに差し出した。
「コレは……私が物見したウクライナとやらで見た事があるな」
現在進行形で戦争中のウクライナに居た際、見た事のある武器であるパンツァーファウスト3 IT600を差し出されると、エレオノーレは言葉と共に受け取る。
それから直ぐにパンツァーファウスト3 IT600を受け取ったエレオノーレは軽々と持つと、興味深そうに見詰めていく。
「魔力の気配が一切無いのだな。本当にコレが魔法も無く金属で出来た怪物を打倒したとは今も信じられん」
どうやら、エレオノーレはパンツァーファウスト3で戦車を破壊した兵士を見た事があるようであった。
ソレを言葉から察した正樹は言う。
「この世界では科学って言う魔法を中心にして物事が進むんだ。あらゆる様々な事象を分析し、その事象がどの様にして起きるのか?解明し続け、その果てにこうした武器も含めて文化や文明が産まれて発展し続けるのさ」
魔法無き世界に於ける魔法とも言える科学と言う概念を正樹が語れば、エレオノーレは実に興味深そうにする。
「それは興味深い」
「まぁ、詳しい原理はお宅の嫌いな魔女にでも聞いてくれ……奴なら俺以上に詳しく解説してくれるかもしれんから」
そう返した正樹は左右の肩に1本ずつパンツァーファウスト3 IT600担ぎ上げると、エレオノーレと共に武器庫を後にした。
その後。
訓練にも使用する分も含め、パンツァーファウスト3 IT600を12本ばかり運び出した正樹は向こうから帰還した涼子も交えて最後のミーティングを始めた。
「状況は更にシビアになっているのは既に承知しているだろうが、俺や彼女の都合上……強行せざる得なくなった事を先に通達する」
開口一番。
難易度の上がった状況下で作戦を強行する旨を伝えると、正樹は今回の作戦に於ける指揮官として更に告げていく。
「島に潜入後の動きは既に通達した通りであるが、敵の厳戒態勢から見るに突入と同時に激しい戦闘が想定される」
そう告げると、涼子が挙手して質問して来た。
「具体的な変更点は?」
「そうだな……先ず、臨戦態勢整えてるから寝込みを襲って寝首を掻く様に事が実質的に不可能って点が1つ目。その為、火力を全て叩き込んでゴリ押しで強行突破せざる獲なくなった。次に……」
正樹が以前のブリーフィングと異なる点も含めた変更点を語り終えると、問うた張本人である涼子は言う。
「実質、予定の変更は無い訳ね」
涼子が暢気に言うと、正樹は指摘する様に言う。
「持ち込む武器と弾薬が増えるって点を忘れるな」
「増えるって具体的には?」
「予備の弾ドッサリにプラスして、クレイモア地雷複数と、パンツァーファウスト3って"デカチン"を各自携行するって具合に増える」
正樹から告げられた増えた装備の内容に涼子はミリヲタであるが故に、ゲンナリとしながら聞いてしまう。
「マジで?」
「残念ながらマジだ。何せ、たった3人で"お荷物"抱えながら強行突破せざる獲ないんでな……」
正樹から肯定されると共に理由も告げられれば、涼子は益々ゲンナリとしてしまった。
「最悪」
「安心しろ。脱出時の強行突破では俺が先頭に立って戦うから……君は援護してくれれば良い」
「安心出来る点が無くて草生え散らかすわ」
正樹の言葉に涼子が嫌味を返すと、今度はエレオノーレが挙手して質問して来た。
「私がする事は変わらないのか?」
「あぁ、変わらない。確認も兼ねて君のすべき事を敢えて言うと、確保対象であるモラの確保までは俺の横に立って機関銃で火力支援。同時に俺が扉をブチ壊すまでの間は涼子と共に後方警戒と共にやって来る敵を抑え込む。で、確保対象であるモラの確保成功後はモラを運んで貰う……やる事は変わらない」
「そうか。なら、良い」
「決行は明日の深夜だ。各人の奮闘を切に願う……以上だ」
正樹が最後のブリーフィングの終わりを宣言した後。
涼子とエレオノーレは正樹の監督の下、明日の戦闘の準備をするのであった。
次回はちゃんと作戦決行するから待っててね♡




