表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十八章 乙女座の頼み事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

234/236

独身おじさん、難題に挑む

「う~~~~~~……ん」


 現在、俺は一階にある作業場のデスクで書き物をしていた。

 近くの作業台には、研磨して飾りを修理して付け直した簪が、俺が作った特注の木箱に入って収まっている。見よう見まねで似たような簪をいくつか作り、作業台の上に転がっていた。

 さて、俺が悩んでいるのは簪の修理ではない。


「結婚式、けっこん式、結婚しき、血痕式……」


 用紙には、ウェディングドレス、ウェディングケーキ、ケーキ入刀、お色直し、余興など、思いつく限りの『結婚式に関する単語』を書いていた。


「入るわよ」

「こんにちは、師匠!!」

「やっほー、遊びにきたぞー」

「…………おう」


 サンドローネ、テッサ、イェラン、そしてぺこりと頭を下げたリヒターだ。

 入るなり、サンドローネは作業台にあった簪に視線を向ける。


「これは……髪飾りね。アズマで見た形と同じ……確か、カンザシだったかしら」

「お前、詳しいな……まあ、俺がテキトーに作ったモンだ。欲しいならやるよ」

「髪飾り!! わあ、私もらいますー」

「アタシはいいや。髪はテキトーに縛るだけだし」


 サンドローネは簪をテッサへ。どうやって付けるのか考えていたが、なぜかリヒターが解説を始める。サンドローネとイェランは俺の元へ来て、用紙を覗き込んだ。


「新しい魔道具の図面でも引いているのかと思いきや……」

「なにこれ? ウェディング? ウェディングってなに?」


 この世界に、『ウェディング』って言葉はない。

 というか……サンドローネにイェランか。

 俺はペンを起き、椅子に座ったままポケットから煙草を出し、マッチで火を着ける。


「ふぅぅぅ……なあお前ら、結婚式に出たことあるか?」

「はあ? アタシはそんなのないよ。仕事で忙しいし」

「というか……結婚式っていうのは、身内だけでやる儀式でしょう。私は家族と絶縁しているし、取引先で結婚式を挙げたと聞けば、贈り物くらいはするけど」

「……なんとなく、お前らに聞いても無駄な気がしたよ」


 俺は煙を吐き出し、灰皿に灰を落とす。

 そして、自分の髪をいじって簪を差し、リヒターに見せていたテッサに聞く。


「おーいテッサ、ちょっといいか?」

「はいはーい。あ、師匠どうです? カンザシ……似合ってますか?」


 テッサは、髪をお団子にして簪を差していた。

 俺は適当に「おお、似合ってる似合ってる」と言い、聞いてみた。


「なあ、お前の故郷……エルフリア森国だっけ。そこで結婚式ってやるか?」

「ええ。森の精霊に報告する儀式がありますよ。親族は全て参加で、一日祈りを捧げるんです」

「ああ~……そういうのか」


 異世界っぽい儀式だ。言っちゃ悪いが参考にならんかも。

 サンドローネが言う。


「あなた、何を悩んでるの?」

「十二星座の魔女の依頼だよ。魔道具じゃなくて、知識を貸してくれってさ。んで、その知識ってのが『結婚』についてでな」


 俺は煙草を灰皿に押し付け、二本目を咥える。

 サンドローネが指を鳴らすと、リヒターが煙管を出した。どうやらこいつも吸いたくなったようだな。

 煙草を吸って煙を吐き出し、サンドローネは言う。


「結婚ね……私もあなたも無縁ね。正直、私は力になれないかも」

「まあ、期待してねぇよ。俺も半端な知識しかないから、パルテノスには悪いけど……」


 と、肩を竦めると。


「こんにちは。あら? 今日は忙しそうね」

「お? なんだ、ポワソンじゃないか。久しぶりだな」


 入って来たのは、六歳ほどの幼女……ではなく、十二星座の魔女の一人、『魚座の魔女』ポワソン・ピスケスだ。

 ユキちゃんたちとそう変わらない身長、見た目だが……魔導文字を生み出した天才でもある。

 ポワソンは、トコトコ歩いて俺の傍へ来た。


「たまたま近くに来たから寄ったのよ。何やらまた、面白そうなことをしているようね」

「面白そうってな……パルテノスの依頼だよ」

「……パルテノス、ね」


 おや、なんかポワソンの表情が少し曇ったように見えた。

 ポワソンは言う。


「パルテノス……彼女、同世代である私のことも、子供みたいに扱うのよ。少し苦手なのよね……」

「まあお前、見た目子供だしな。身体は子供、頭脳は大人!! ってやつか?」

「なにそれ? ともかく……どんな依頼?」


 俺は、パルテノスから『俺の故郷でどんな結婚式をやっているのか』という依頼について説明。俺は結婚について全く詳しくないので困っていることを言うと、ポワソンは周りを見て言う。


「そんなの、簡単じゃない」

「え?」

「断片的な知識はあるんでしょう? なら、それを元にして、新しい結婚式を考えればいいのよ。これだけ人がいるのよ? 意見を出し合えば簡単じゃない」

「いやでも、結婚式ってのは神聖な儀式だろ? 中途半端なモンを……」

「中途半端って、あなたが思うの? でも、ちゃんとまとまりのある、理に適った式なら……それは中途半端と言える?」

「……む」


 そう言われると……どう、なのかな。

 サンドローネを見ると、何やら考え込んでいた。


「そうね。この国の結婚式をおさらいして、あなたが持つ断片的な情報を組み合わせてみるのはどうかしら。組み合わせの過程で、余分なところをカットしたり、さらに追加したり……一通りの『流れ』を組み立ててごらんなさい。悩み続けるより、まずは考えて行動するのが一番よ」

「……確かに、そうかもな」


 ポワソンは、にっこり微笑んで頷く。

 

「うし。サンドローネ、リヒター、テッサ、イェラン。ちょいと協力してくれ」

「……いいわ。新しい事業のニオイがするわね」

「アタシもいいよ。ケッコンに興味ないけど、面白そうだし」

「私もお手伝いさせていただきます」

「もちろん私もです!! よーし!!」


 俺を入れて五人。みんなで知恵を出せば何とかなるか。

 俺はポワソンに言う。


「ポワソン、ありがとうな。なんだかできる気がしてきた」

「力になれたようなら「あらぁぁぁ~~~!!」


 と、いきなり割り込んできた声。

 振り返るとそこにいたのは、『乙女座の魔女』パルテノス・ヴァルゴだった。

 目をキラキラさせると、一瞬でポワソンの元へ。そして思い切り抱っこして抱きしめた。


「ポワソンちゃんんんん!! 久しぶりねぇぇ~~~!!」

「うぶぶぶっ、ちょ、パルテノス、くるし」


 ポワソンは、その大きな胸に完全に埋まっていた……あ、頭が完全に胸に包まれて、首から下だけしか見えねえ。しかも、身体はきつく抱きしめられているから足だけバタバタしてる。

 このままじゃ窒息する気がしたので言う。


「お、おいパルテノス、ポワソンが死ぬぞ」

「え? あらやだ、ごめんなさいねぇ。はい、抱っこしてぎゅ~」

「ぶはっ!! ゲホゲホ、げほげほっ!! はぁはぁ……あ、あなたね、毎回毎回、出会うたびに殺しかけるのやめてくれないかしら」

「ふふ、そんな物騒なことするわけないじゃない。ん~ポワソンちゃん可愛い♪」

「あのね……もう何万回も言ってるけど、私とあなたは同世代。子供扱いしないで」

「えぇぇ? こんなに可愛いのにぃ」

「いいから、離しなさい」

「あ、ゲントクちゃん。結婚式のアイデアだけど……」


 どうやら、抱っこしたまま要件に突入するようだ。

 ポワソンが何とか逃れようとするが、パルテノスの拘束から逃れられない。


「あ~……アイデアだけど、俺の知識は半端だからな。こっちの世界の結婚式とかと合わせてお前に提案するよ。それに必要な魔道具とかも必要になるかもだしな」

「あらぁ~……じゃあ、ゲントクちゃんだけじゃなくて、みんなに依頼しちゃうわね。ふふ、なんだか素敵な予感がするわ~」


 パルテノスはニコニコしていた。

 サンドローネが言う。


「パルテノス・ヴァルゴ様。私はアレキサンドライト商会のサンドローネと申します。その『結婚式』に関する依頼、我が商会で受けさせていただきます」

「うん、お願いね。ちゃ~んとお礼するからね♪」

「は、はい」


 こうして、パルテノスの依頼は俺個人じゃなく、アレキサンドライト商会で受けることになった。

 

「ちょっとパルテノス、離して……!!」

「はいは~い。ママとお風呂行きましょうね~」

「ちょ、ママって……ああもう!!」


 パルテノスは、ポワソンを抱っこして出て行った……なんというか、ママみ溢れるやつだ。

 サンドローネが言う。


「さて、正式に依頼も受けた。ゲントク、これからはアレキサンドライト商会も協力するわ」

「……なんか積極的だな。お前、何企んでるんだ」

「私は商人よ? ふふ、結婚式……単なる儀式としか思わないけど、もしかしたら新たな商売になるかもね」


 こいつは商魂たくましいな……まあいい。

 とりあえず、今ある情報を整理して、結婚式についてしっかり考えるとしますかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独身おじさんの異世界ライフ ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~1
レーベル:ドラゴンノベルス
著者:さとう
イラスト:aoki
発売日:2025年 12月 5日
定価 1540円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
gru3czkctwzg5sz4cundzobhjz8_dau_15z_1nn_1drze.jpg


独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~(1)
レーベル:マンガボックス
著者:比内ハツ
原著:さとう
発売日:2025年 6月 30日
定価 726円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
586s2p3l4ab73qyuj2dvfjdibos4_645_11i_1hc_1rgkw.png
― 新着の感想 ―
作品増やしすぎて更新ペース遅くて展開忘れるな 特に魔女の名前とか「誰?」から始まる
王国所属ってことは王族がいるはずなんだが、王族や貴族当主って結婚式しないの? 王太子あたりにファーストペンギンさせないと、世界初の格式高い派手な結婚式を貴族以下がやっちゃ権威的な意味で駄目だと思うが.…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ