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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十八章 乙女座の頼み事

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俺には厳しい頼み事

新年、あけましておめでとうございます!!

今年もよろしくお願いします!!

 さて、パルテノスの頼み事だが……うーん。


「俺の世界での『結婚式』について教えて欲しい、って……」


 ある意味、俺という存在とは最も遠い位置にあるイベントだった。

 結婚式。独身主義である俺にとっては一生縁のないイベント。友人の結婚式とかには何度か行ったことがあるけど……今だから言う、かなり苦痛だった。

 まあ、俺のことはいい。今はなぜパルテノスが、そんな話をしに来たかだ。

 パルテノスは、スノウデーン王国で買ったお土産のお茶を啜り、唇を湿らせて言う。


「アツコちゃんから『結婚』について、いろいろ聞いたのよ。それで、私もね……男女が結ばれたあとの儀式って素敵だなって思って、世界中に広めたのよ」


 パルテノスは、この世界に『婚姻の儀式』を広めたそうだ。

 結ばれた男女の婚姻を祝う儀式が必要と、世界に広めたって……ある意味では偉業だよな。

 まあ、中には結婚式を挙げない男女も多くいるみたいだけど。


「アツコちゃんから教わったのは、神様に結婚の報告をするってやり方なんだけどね」


 話を聞くと、アツコさんは和風の結婚式……神前式だっけ? そういう厳かな式を聞いて、こっちの世界に浸透させたようだ。まあ、アツコさんの時代は和風っぽい結婚式が普通だし……ウェディングドレスなんてなかっただろう。


「それで、アツコちゃんも『話は聞いたことあるけど、若い人が好む結婚式はねぇ……』って言ってて、私の知らない結婚の儀式があることは知ってるの。だからゲントクちゃん……あなたの世界の結婚式、私に教えてくれない?」

「あ~……そういうことか」


 俺は頭を掻く。

 スノウさんは興味があるのかないのか、微妙に首を傾けていた。


「まあ、知ってることはある。ウェディングドレスとか、ウェディングケーキとか。でも……俺は独身主義でな、そういう知識は全くない。むしろ、生きる上で避けてきた知識でもある」

「あらぁ~」

「正しいかどうかもわからん半端でもない知識を教えて、失敗するのもな……」


 電気工事士になりたての頃、じいちゃんの手伝いで教会の電球交換をしに行ったことはある。ステンドグラスとか、でけえ十字架とか、名前もわからんモノを多く見た記憶はあるが……それが何を意味して、どういう風に使うのとか、全くわからないし、興味もなかった。興味あったのは教会にも電気が流れてるし、分電盤とかちゃんとあるんだなーとか、そんなことばかり。

 今は火事の心配もあるから、リアル蝋燭は使わずに蝋燭っぽいLEDとか……まあそれはいいか。

 すると、事務所のドアが開き……眠そうなユキちゃんがきた。


「にゃ……」


 目をこすり、フラフラ歩く。

 そして、寝ぼけているのかスノウさんではなく、パルテノスの方へ。

 スノウさんが「あ……」と手を伸ばしたが、パルテノスがスノウさんを見て小さく頷く。スノウさんも察したのか手を止め、小さく微笑んで頷いた……って、なになに、何このやり取りは。

 パルテノスはユキちゃんを抱っこし、優しく撫でてあやすと、ユキちゃんはまた寝てしまった。


「私、子供が大好きなの」


 まあ、俺も子供は好きだ。変な意味じゃなく、普通に可愛いしな。


「男性と女性が結ばれて生まれる、尊い命の結晶……ふふ、本当に素敵」


 ユキちゃんは、安心しているのかパルテノスの胸に包まれ安心しているようだ。ネコミミがたまに動くのが何とも可愛らしい。


「結婚式。アツコちゃんから聞いて素敵って思ったわ。ゲントクちゃんは知ってる? 私が結婚式を広める前は、望まない婚姻を強いられる子とか、愛のない交わりが多くあったの……」

「…………」


 コメントしづらい。いつの間にかシリアス空気なんだが……!!


「ふふ。そういうことをする子には、ちょっとお仕置きしちゃうけどね」


 パルテノスは笑ったが、なんか怖かった。

 ちなみに後で聞いた話。かつて『そういう望まない行為をさせる組織』が横行した時期があり、生まれる子供を兵士とか、洗脳とかで労働力にして国を栄えさせよう、みたいな政策の国があったそうだが……そういう国のほとんどが潰れたそうだ。物理的に潰れた国もあれば、政策を破棄し真っ当な国になったところもある……噂では、背後に必ず一人のエルダーエルフがいたとかなんとか……ま、まあ気にしないでおこうか。


「結婚式は、愛の結びつきを確認し、さらに深める神聖な儀式。アツコちゃんからそう聞いてね……私もそんな式をやりたい、って思うようになったの」


 なるほどな。つまりパルテノスは『ブライダルプランナー』ってやつなのか。

 

「でもねえ……私、あんまり頭がよくないから、アツコちゃんから教わった方法での結婚式しかわからないのよ。自分で新しい結婚式を考えたこともあったけど、どうも変な感じになっちゃってねぇ。だから、ゲントクちゃんが知ってる儀式を教えてほしくてね」

「話はわかった。うーん」


 結婚式を教えて欲しい、か……なんかかなり厳しい依頼だ。

 と、その前に。


「その前に、さっきも言ったけど俺の知識は半端も半端。異世界転生した主人公が『マヨネーズ作ります!!』みたいに、都合よくその場に応じた専門知識なんて持ってない。『こうだった気がする』とか『たぶんこうじゃね?』みたいなのしかないぞ」

「構わないわ~。ゲントクちゃん、アツコちゃんの世界に『こういうのがあった』っていうのがわかるだけで助かるのよ~」

「まあ、それならいいけど……」


 すると、ユキちゃんが起きた。


「……にゃ?」

「あら、起きたわね。ふふ、かわいい」

「にゃああ……おかあさん」


 ユキちゃんは、スノウさんを見つけ手を伸ばす。

 パルテノスはユキちゃんを抱っこし、スノウさんに渡した。

 スノウさんの胸に甘えるユキちゃんと、優しく微笑んでいるスノウさん。


「ふふ。やっぱり、一番はお母さんねえ。ねえ、スノウさんだったかしら。よかったらお友達にならない?」

「はい、喜んで」


 どうやら、スノウさんにママ友ができたようだ。

 未亡人同士……なんか背徳的というか。いやアホか俺は。

 俺は誤魔化すように咳払いし、話題を変える。


「とにかく、できることなら手伝うよ。あんまり期待しないでくれよ」

「ありがとう~!! あ、じゃあその前に……これ、いい?」


 パルテノスは、どこからか木箱を出した。

 蓋を開けると、そこにはたくさんの『簪』が入っていた……が、けっこうボロボロだ。


「簪か。アツコさんのか?」

「あ、カンザシっていうのね。アツコちゃんが旦那様からプレゼントしてもらったって嬉しそうに言ってたのよ。旦那様、お仕事で遠方に行くことがよくあったそうで、お土産は必ずコレだったそうなの。一度だけ、指輪だったこともあったようだけどねぇ……その指輪は、ラスラヌフちゃんのオルゴール箱に入ってたみたいだけどねぇ」

「ああ、そういやそうだったな……で、これは?」

「うん。どうやって使うのかなって……アツコちゃん、これを大事そうにしていて、私たちにも一度だけしか見せてくれなかったの。武器……ではないと思うんだけど」


 簪……まあ、くのいちは武器として使ったようだけどな。

 見ると、金属製なのか錆びている。飾り部分も壊れている。でもまあ……直せなくはない。

 俺は、一番状態のいい簪を手にし、スノウさんにお願いした。


「スノウさん、髪の毛をこう……ねじって止めてくれますか?」

「え? ああ、はい」


 スノウさんはポケットからゴムを出し、自分の髪をまとめる。

 俺はそこに簪を差す。髪、触って申し訳ございません……と。


「まあ……」

「こんな感じで、髪のアクセサリーなんだ。この世界にも簪っぽいのはあるけど、あれは髪をはさむような感じの装飾だしな。純和風といえばいいのか……俺の世界の、髪アクセサリーかな」


 スノウさんは簪に触れる。

 パルテノスも、マジマジと見て「そういうことだったのね」と頷いた。

 まあ……髪飾りはこの世界にもあるし、簪っぽいのも探せばあると思う。パルテノスが知らないのは意外っちゃ意外だったな。


「けっこう状態悪いけど……まあ、錆落としして、壊れた装飾は新しいのに直せると思う。元のパーツを参考に、こっちの素材で新しいのにしていいなら預かるぞ」

「お願いするわ~、依頼料は十億セドルね~」

「だからそんなにいらねぇっつーの!! 魔女の間で俺への報酬は十億ってマジやめてくれ!!」


 つーか、これまで散々いらねえって言ったけど、なんだかんだで口座には十億振り込まれてしまう……俺の資産、どうなってんねん。

 俺は簪を預かった。


「じゃあゲントクちゃん。細かい話はまた今度ね」

「ああ、そうしてくれ」

「ふふ。今日はこのまま、スノウちゃんとおしゃべりしようかしら。お部屋、借りていい?」

「好きにしてくれ」


 スノウさん、パルテノスはお喋りしながら、子供たちの寝ている部屋へ。

 残された俺はコーヒーを淹れる。


「結婚式か……なんとなくわかるのは、何かな」


 とりあえず……いろいろ、思い出せる範囲で思い出してみるかな。

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