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スノウデーン王国、二度目の冬③/いざ出発!!

 この三日、出発の準備だけで終わってしまった。

 連結馬車を手配したり、着替えとか必要なモンを用意したり、事務所の大掃除をしたり、テッサの準備を手伝ったり……三日ってあっという間だな。

 というわけで、会社の前には連結馬車が停車。

 ヒコロク、ヤタロウを繋ぎ、荷物を全て連結馬車に載せた……んだが。


「…………なあ、なんでいるんだ?」

「あら、お話したじゃありませんか」


 意外も意外も意外も意外……今回、俺らと一緒に、クライン魔導商会の商会長、ミカエラ・クラインが一緒に行くことになった。

 そしてミカエラの護衛に『殲滅の薔薇(アナイアレーション)』ことバレンたち三人。連結馬車も、ミカエラが手掛けたゴージャスな車両が一両だけくっついてる。

 サンドローネは言う。


「ゲントク。ミカエラは、スノウデーン王国に用事があるの。スーパー銭湯までは一緒で問題ないって言ったでしょう?」

「まあ、タイミング的に疑問を投げかけておくべきだと思ってな」

「……はあ?」


 まあいいや。

 というわけで、今回のイカれたメンバーを紹介するぜ!!

 俺、テッサ、サンドローネにリヒターにイェランの五人。

 ミカエラ、アベル、護衛にバレン、ウング、リーンドゥ。

 俺たちの護衛にロッソ、アオ、ブランシュ、ヴェルデ。

 お世話係にシュバン、マイルズさん、そしてスノウさんとユキちゃんだ。

 ああ、ペットに大福ときなこ、白玉とバニラ、あとはエディーだ。ヒコロク、ヤタロウは連結馬車を牽引してもらう。

 相変わらず大所帯だ。でも、ティガーさん一家やドギーさん一家はさすがに来れなかった。バカンス終わったばかりだし、年末にかけてけっこう忙しくなるらしいからな。

 出発前、みんなでワイワイお喋りしているが……俺は聞いてみた。


「あの、スノウさん。ロッソから聞いたんですけど、一緒に行くって……」

「ええ、今回は参加させていただきます」


 スノウさんとユキちゃんだ。

 以前、温泉に誘ったときに「硫黄の臭いが……」とやんわり断られたんだよな。でも、今回はしっかりいる。

 スノウさんは、なぜかウングの背中によじ登ってヤタロウを撫でているユキちゃんを見た……てかユキちゃん、なぜウングに。


「ユキが、温泉に行ってみたいと言うので……リヒターさんが、スーパー銭湯ならば、温泉の強い香りはそこまでしないと教えてくれたので。せっかくなので、参加することにしました」

「なぁぁるほど。リヒターがねぇ……」


 リヒターを見ると、目が合った……ついニヤニヤしてしまう俺。やれやれ、こんなおっさんにキューピッド役は厳しいんだがな。


「スノウさん、リヒターの言う通り、銭湯ならそこまでじゃないと思います。ていうか、最初はキツくても、しばらくすれば慣れると思いますよ」

「ふふ、そうですね。ゲントクさん、ありがとうございます。お世話係として、何かあれば言ってくださいね」

「どうも。でもスノウさん、自分が楽しむことも大事っすよ。ああ、リヒターとか、スーパー銭湯に関してかなり詳しいから、いろいろ教えてもらうといいかもしれませんね」

「リヒターさんがですか? ふふ、頼りになります」

「ええ。さっそく聞いてみたらどうです? ちょうどヒマしてるし」


 リヒターは、サンドローネがミカエラと話しているおかげか、少し離れたところに立っていた。

 スノウさんは「では」と言ってリヒターの元へ。リヒターが俺を見たので、親指をグッと立ててやったぜ……おいそこ、古臭いとか言うな。

 俺はウングの元へ。


「ようオヤジ。スーパー銭湯まで一緒だぜ」

「ああ。それまではよろしくな」

「にゃあああ」

『オウウウウ』


 ウング、真面目に言ってるんだけど……ユキちゃんを肩車して、ヤタロウを撫でさせている姿は『優しい近所のお兄ちゃん』にしか見えない。


「にゃああ。ヤタロウ、ふわふわする」

『わううう』

「にゃうう、ヒコロクー」


 ヒコロクも『撫でろ』と言わんばかりに寄って来た。ユキちゃんはヒコロクも撫でる。


「それにしても、ミカエラ特製の連結馬車……かなり重量ありそうだけど、大丈夫か?」

『わううう!!』

『おふ、おふ!!』

「うおおおお、なんだなんだ!?」


 ミカエラの連結馬車を見ながら言うと、ヒコロクとヤタロウがモフモフの頭を押し付けてきた。

 ウングが言う。


「なめんな、って言ってるぜ。オヤジ、この二頭なら楽勝で引けるぜ」

「あ、ああ。そうか……悪かったよ」

『わう』『おうう』


 わかればいい……と言わんばかりに、ヤタロウとヒコロクは頭を引いた。


「おっさーん!! そろそろ出発しよー!!」

「おーう。さ、ユキちゃんおいで。そろそろ出発だ」

「にゃあ」


 ユキちゃんを抱っこし、俺は連結馬車へ。

 ウング、アオの二人は馬車に乗る前に地図を出し、ヤタロウとヒコロクに見せる。


「……ヒコロク、以前通ったここ。わかるね」

『わうう』

「ヤタロウ、お前はヒコロクに合わせろ。魔獣は食っていいが、ほどほどにな」

『おうおう』


 ま、魔獣、食っていいんだ……まあこの二頭、クソ強いから問題ないか。

 というわけで、連結馬車は出発した。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、連結馬車はエーデルシュタイン王国を出て、街道を軽快に走っている。

 というか、新幹線みたいな速度だ。街道の横幅は整備したのかかなり広くなってる。車だったら二十車線くらいはありそうな幅だ。

 馬車の揺れも少ないし、連結馬車は改良を続けているらしい。

 俺は、一両目二階の展望台で、イェランとリヒターと喋っていた。


「なあ、連結馬車ってどこか改造したりしたか?」

「足回りを少しと、食堂車をもうちょっと広く、大浴場車両も改良して広くしたよ。あと、宿泊車両も少し改良した」

「改良しまくりだな……」

「まあ、動く宿屋だしね。スノウデーン王国行きは少しでも快適に……ってのを目指してるから、乗ったお客さんには下車後にアンケート書いてもらって、要望とか聞いてるんだ」


 イェランが言うと、リヒターも言う。


「今回、車両全てに外部通路を設置しました。これまでは車両間の移動には、車内に入って横切るような形になることもありましたので……安全柵を設けて、外部に通路を設置したので、外の景色を眺めながらの移動もできるようになりました」

「なるほど……って、お前はスノウさんのところ行けよ。チャンスだぜ? この温泉旅行を機に、告白とかしちまえよ」

「なっ……コホン。その、ゲントクさん。私は一度でも、スノウさんに特別な感情を抱いていると言いましたか? その……告白とか、二人きりにするようなことはしなくても」

「はいはい。てかリヒター、お姉様も言ってたじゃん。結婚とか恋愛には関与しないって。あたしだって、好きな人できて結婚したくなったら好きにしろ、って言われてるよ。まあ、あたしはお姉様が大好きだから結婚予定なんてないけどね~」

「……」


 イェランが言うと、リヒターは頬を少し染めて帽子で顔を隠してしまった。

 純情だなあ……恋愛とかしたことないんだろうな。俺もないけど。


「リヒター。お節介焼くのは悪かった。でも、スノウさんもまんざらじゃなさそうだし、友達のお前や、ユキちゃんのお母さんのスノウさんには幸せになってほしいんだよ。自分の気持ちに蓋して、そのまま殺さないようにしてくれ」

「…………」

「そうそう。リヒター、素直になりなって。なんだかんだで、あんただってスノウさんの世話、何度か焼いてるじゃん。スノウさん、ザナドゥであたしと飲んだ時、あんたが優しいとか、頼りになるとか言ってたよ。脈ありだって」

「……お、お嬢の様子を見てきます」


 あ、逃げた。

 ちなみにサンドローネは、ミカエラの連結馬車に呼ばれてテッサと三人で茶会を開いてる。

 すると、入れ替わりでアオ、エディーがやってきた。


「……おじさん、ここにいた」

『オフウウ』


 エディー、尻尾を振りながら俺の周りをクルクル回る。

 このモフモフなチャウチャウめ。このこの、この毛玉め。


「……おじさん。食堂車でケーキ食べよう。マイルズさん、特製ケーキを振舞うって」

「そりゃいいな。イェランも行くだろ」

「もち!! あれ、護衛は大丈夫なの?」

「……うん。今はヴェルデが車外で見張りしてる。私たちはそのあとで。それまで自由」


 と、アオは俺の腕を取る。


「……おじさん、行こう」

「おう。いやぁ、煙草のあとって甘いの食いたくなるな」


 さて、マイルズさんのケーキでも食いに行きますかね。

 そう思っていると。


「……ゲントクも、リヒターのこと言えない時あるんだよね」


 なんかイェランがボソッと言ったような気がしたけど……まあ、いいか。

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― 新着の感想 ―
まあゲントクは分かっててあえて考えないようにしてる節もあるから···
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