表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/218

スノウデーン王国、二度目の冬①/大銭湯へ

 事務所で爆睡してしまった。

 起きるとすでに夕方……マジかよ、一日寝てしまった。

 今日はもう仕事無理、ってか終わってる。めちゃくちゃ腹減ったし、寝すぎたせいで超スッキリしてるし、今日はもう寝れんぞ……さすがにもう酒は飲まない。

 とりあえず、懐から煙草を取り出して吸おうとする。


「火、火……めんどくせ」

『ほるるるるる!!』

「こら、逃げちゃダメー!!」


 と、テッサが事務所に飛び込んできた……裸で。

 大きな胸がぷるんぷるんと揺れ、濡れたバニラを捕まえようとする。

 そして、俺と目が合い、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。


「きゃあああああああああ!! ななな、ししし、師匠ぉぉおおおおお!?」

「ぶっふおおおお!? あじ、あっじぃぃぃ!?」


 煙草に火を着けようと、魔法で指先に火を灯して付けようとしたが……部屋に飛び込んできたおっぱい……じゃなくてテッサに仰天し、魔力量ミスって指先から炎を噴射してしまった。

 鼻が焦げ、前髪も焦げる。揺れるナマの巨乳なんて久しぶりに見た。

 バニラは書類棚の上へ避難……どうやらテッサが洗っていたようだ。廊下に繋がる窓が開いてたせいか、そこから飛び込んできたようだ。

 テッサはソファで身体を隠し、ソファから半分顔を出して言う。


「し、師匠……い、いたんですね」

「いや、お前送り届けて、疲れたから寝ちまったんだよ……あれ?」


 なんか、サンドローネがいたような……気のせいか?


『──じゃあ、お願いね』


 あれ、なんか脳内にあいつの声が……なんだっけ?

 首を傾げていると、テッサが言う。


「わ、わたしはその、さっき起きて、シャワー浴びようとしたら、バニラさんが汚れていたので、一緒に洗おうと思いまして……」

「そ、そうか。ああ、見ちゃダメだよな。悪い、出て行くよ」

「い、いえ。師匠の職場ですし……こっち見ないでくださいね」


 テッサは俺が明後日の方を見ている間に廊下へ。そしてドアから半分だけ顔を出して言う。


「し、師匠……その、送ってくれてありがとうございました。今日はお仕事、無理ですよね……」

「あ、ああ。明日からまたやろう」

「はい。では……」


 テッサはシャワー室へ消えた。

 俺は落とした煙草を拾って咥え、魔力量をミスらないよう慎重に火を着け、煙を吸い込んだ。


「ふぅぅ~……いやあ、いいもん見せてもらったぜ」


 とりあえず、揺れる巨乳のことを思いだし、俺はウンウン頷くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、帰ってもう一回寝ようと思ってたんだが……飲み屋街の前を通るとつい入ってしまうのがいつもの居酒屋。

 というか、めちゃくちゃお腹減った……酒は飲まず、メシ食って帰ろうと思っていました。


「すんませーん、おかわりー!!」


 えー、エールはすでに三杯目。焼き鳥五本、生野菜に酢漬けと食ってます。

 なぜこんなに食ってるのか? まあ理由は簡単だ。


「はぁ~!! やっぱ故郷のエールはおいしいねー!!」

「ふふ。ザナドゥとエーデルシュタイン、エールの味は同じでは?」


 イェラン、そしてリヒターが来たのだ。

 特にイェラン。ザナドゥから昨日戻ったばかりで、しばらく休暇となるらしい。なのでもしかしたらと思いいつもの居酒屋に来たら、俺がいて、あとからリヒターも来たってところだ。

 俺は焼き鳥を食いながらイェランに聞く。


「なあ、ザナドゥはどうだ?」

「どうだも何も。マリンスポーツは開始から大好評。今は、ゲントクの作った潜水艇を開発中。ああ、正式に決まってないけど、潜水艇は来年のマリンスポーツ大会では使えないかもね。もっと大型の潜水艇を作って、沈んだ船の残骸とかを回収する仕事をさせるみたい」

「そりゃ朗報だ。ザナドゥの海に、今は五百くらいの船の残骸沈んでるもんな……」

「あと、ダイビングは大人気。パラセーリングも予約殺到……いやぁ、来年の夏はもっと盛り上がっていくと思うよ」

「はっはっは。そりゃ楽しみだな」


 イェランともう一度乾杯。すると、リヒターが言う。


「ゲントクさん。ロイヤリティの支払いが月末にありますので……それと、スノウデーン・スーパー大銭湯の件ですが」

「……なんでそこで大銭湯が出てくんだ?」


 首を傾げる俺。するとリヒター、驚いたように言う。


「いやいや。昨日言ったじゃないですか……スノウデーン・スーパー大銭湯で問題が発生して、それを解決してもらいたいと」

「…………え?」

「出発は三日後ですよ? その、準備は」

「…………」


 ◇◇◇◇◇◇


『あなた、今年はスノウデーン王国に行く? 行くなら、スノウデーン・スーパー大銭湯経由で行ってほしいのよ。管理を任せている支配人が、困ったことがあるみたいでね……あなたに相談したいことがあるんだって』

『とにかく。今年は温泉の町レレドレじゃなくて、スーパー銭湯で温泉を堪能したら? あなたの考えたスーパー銭湯がどうなってるのか、あなたも気になるでしょう? それに、私の権限で、宿の一番いい部屋を用意してあげる。もちろん、移動は連結馬車よ』


 ◇◇◇◇◇◇


「……お、思い出した」


 やべえ、サンドローネがそんなこと言ってた気がする。

 というか……三日後!? 嘘だろ、おい。


「いやいやいやいや、マジで!? ザナドゥから戻って来たばかりじゃねぇか!!」

「そ、そうですけど……もうすぐ冬が近いですし、ゲントクさんはスノウデーン王国の温泉に行くんですよね? そのついでに、スーパー大銭湯の問題を片付けて、温泉で休暇……という形にすればいいのでは?」

「……た、確かに」


 テッサは……俺のところでの仕事はあと二十日以上ある。

 温泉では一か月は堪能したいし、スーパー大銭湯の問題を片づけたら帰ってもらうしかないか。まあ、ファルザンとクレープスに言えばなんとかなるか?


「なあリヒター、俺……絶対行かなきゃダメなんだよな」

「え、ええ。昨日、了承をいただきましたし……お嬢も、スケジュールを調整して、スーパー大銭湯へ向かう準備をしています」

「……うわちゃー」


 参ったな。

 てか、テッサの指導があるのにまた長時間お出かけとか……どうすんだ。

 というか、テッサを雇うのは技術云々じゃないし、問題ない……のかな。

 考えていると、イェランが言う。


「まあ、ゲントクならどうとでもなるでしょ。ってかテッサって誰?」

「……お気楽なやつだな」

「あ。あたしも同行するよ。休暇だしね~」

「え? いいのか? お前、リヒター、サンドローネといなくなったら、アレキサンドライト商会はどうなるんだよ」

「それなら大丈夫です。先日、砂漠からユストゥスさんが報告のために一時的に戻ってきまして。お嬢がいない間、アレキサンドライト商会はユストゥスさんにお任せです」

「ああ、ユストゥスか……砂漠の方は順調、なんだろうなあ」


 俺が心配することじゃないか。

 というか……俺が考えること、けっこうあるな。


「ロッソたちの護衛依頼、ファルザンとクレープスにテッサを連れて行くことを話して、テッサにもスノウデーン王国に行くこと説明して……てか、スーパー大銭湯の問題って何だ? 俺に解決できるようなことなのか? ああああ……」


 なんかもう、スローライフどころじゃねえな。

 せっかく日常に戻って慣れてきたと思ったのに。


「温泉かあ。ゲントク、スーパー大銭湯の問題解決したら、あんたが自慢してた別荘に連れてってよ」

「いいけど、うちは混浴だ。俺と一緒でもいいか?」

「はいはい。そういうのではもうあたしも照れないから。ん~楽しみ、ねえリヒター」

「そうですね。私も泊まりましたが、ゲントクさんの別荘は素晴らしいところでしたよ」

「……よし!! 考えるの明日でいいや。今日は飲むぞ!!」


 とりあえず、諸々を明日に回して、俺はイェランとリヒターともう一度乾杯するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~(1)
レーベル:マンガボックス
著者:比内ハツ
原著:さとう
発売日:2025年 6月 30日
定価 726円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
586s2p3l4ab73qyuj2dvfjdibos4_645_11i_1hc_1rgkw.png

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
リヒター、まるでその場にいたような発言だけど前話でいた描写ないよね?発言怪しいぞ?正しくは「了解を頂いたと聞いています」でしょ。仮にその場にいたならサンドローネを止めるべきだし、ゲントクにしっかり確認…
サンドローネは「意識が怪しいゲントクが予定表見ずに了承した」という状況をちゃんと自覚してほしい。 というか、自覚してない様子で無能の烙印押したくなる。 そもそも意識はっきりしててもゲントクも店持ってて…
テッサも記憶が飛ぶタイプなんですね。隙が多すぎるw 職員でもないゲントクの予定を半ば無視して頼りっきりのサンドローネも問題ですが、それを諌める立場であるはずのリヒターがこの調子なのも問題ですね。そろそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ