独身おじさんとアルバイト⑥
さて、町案内も大詰め。
いろいろ買い物を済ませ、一度会社に戻って荷物を置いた。
そして夜……今日は四人で飲みに行く。もちろん、俺のおごりだ。サスケとトモエにはいっぱい案内してもらったし、俺も知らない店とかいっぱい知れた。
なので、俺の行きつけ居酒屋へ。
四人席に座り、たくさんのおつまみ、お酒を注文した。
料理と酒が到着し、俺たちはグラスを掲げる。
「じゃあ、今日はお疲れさん。俺のおごりだから、好きなだけ飲んで食ってくれ」
「わぁい。師匠、ありがとうございます!!」
「ありがとな、オッサン」
「私も、遠慮なく」
全員、酒は雑酒だ。
お猪口じゃなくてコップ酒だ。グラスを合わせて酒を飲む……んんん、やっぱうまいぜ!!
「ふぁぁ……お酒、おいしい」
「そういやテッサ。酒飲めるのか?」
「はい!! 飲んだことないけど、飲めます!!」
「その理屈おかしくないか……?」
以前、ロッソたちとメシ食った時は飲んでなかったな……今更だけど。
テッサは、空のコップを掲げる。
「おかわりお願いしますー!!」
「い、いい飲みっぷりだな……」
「私も」
と、トモエも空のコップを掲げる。
するとサスケ、なんとも言えない顔で俺に小声で言う。
「オッサン。トモエのやつ、かなり飲むぞ……それと、今思い出したけど酒癖けっこう悪い」
「え……そ、そうなのか?」
「ああ、忘れてたぜ」
おかわりのお酒が注がれると、トモエもテッサもグビグビ飲む。
そして、顔を赤くして酒臭い息を吐きだした。
「ぷはぁぁ、うっま……サスケェ、あなた、飲んでないじゃない。のみなさい!!」
「お、おう」
「ししょう、おさけ、ふわっとしますねぇ」
「お、おう」
やべえ、絡み酒だ……ま、まあいい。うん、テッサの歓迎会だし、この店は暴れても出禁とかないから大丈夫……うん。
俺は焼き鳥をテッサに差しだす。酒だけじゃやばい。
「ほ、ほら、焼き鳥うまいぞ」
「いただきましゅー!!」
「お酒、おかわり!! サスケのぶんも!!」
「お、おいトモエ。オレ、まだ飲んでない……」
とりあえず、俺はほどほどにしておこう……保護者的な立場になるぜ。
◇◇◇◇◇◇
二時間ほど経過。
トモエ、テッサ……この二人はある意味で『最悪』だった。
「サスケぇぇ、あんたなんで、諜報部なのよぉ!! わたしといっしょに、さいきょうの忍者になるっていったのにぃ!! ばかばかばか!! このすけべ!!」
「いや、スケベって……ってか、オレは戦闘苦手って何度も言ったろ」
「うっしゃい!! ううう、わたし、あなたと背中合わせで戦うの、夢だったのにぃ、ねえねえ、わたし、かわいい?」
「お、おう……あんまくっつくなよ。お前、酒飲むと記憶消えるタイプだし、今日のこと何も覚えてないからタチ悪いんだよ」
トモエは、サスケの腕にしがみついて、とにかく飲みまくっていた。
腕に胸を押し付けたり、サスケの首筋を噛んだりしてる……マジで何してんだこの子。
そして、テッサ。
「おかわり!! 師匠、これで四十七杯目ですねぇ!!」
「お、おお……お前の腹、どうなってんだマジで」
テッサは、酔い潰れることがない。酔っ払ったまま無尽蔵に酒を飲んでいる。
焼き鳥も一人で百本くらい食ってるし、飲むと酔っ払ったまま食欲がぶっ壊れるタイプだった。やばいぞ……この居酒屋、暴れても大丈夫だし、朝方まで営業してる。
サスケを見ると、首を振った……ああ、今日はもう諦めろってことね。
明日は仕事休むしかねぇな……まあ仕方ない。
「ううううサスケ、サスケ、お酒おかわり」
「いや、もうやめとけって……」
「わらしのさけがのめないの!? このやろぅ……ぶったぎるぞぉ!!」
「わ、わかった。飲む、飲むって」
サスケがこんなに苦労してるの初めて見たかもしれん。
テッサも、すでにコップが空っぽで「おかわり!!」って叫んでるし。
せっかくだ……スマホあるし、映像に残しておくか。
◇◇◇◇◇◇
早朝……俺は白目で机に突っ伏していた。
「ぐがあああああ、ぐがあああああ」
「こかあああああ、こかあああああ」
テッサ、トモエの二人が、女の子にあるまじきイビキをして寝てる。
サスケも疲れたのか、気絶したような半目で俺を見ていた。
「……オッサン、大丈夫か?」
「……ああ、ブランシュのところで癒してもらおうぜ」
そして、いくら起こしても起きない二人をおんぶし、俺たちは居酒屋を出た……そういや、早朝までいてもいいんだけど、別料金支払わなくちゃいけないんだよな。
今日はもう仕事無理……ってか眠い。
「……オッサン。オレ、トモエを家まで連れていくわ」
「ああ。ブランシュに癒してもらわなくていいのか?」
「いいよ。寝るのが一番の癒しだぜ……じゃ」
サスケはトモエをおんぶして帰った。
俺もなんかめんどくさくなり、そのまま仕事場へ行くことにした。
「うう……ほとんど寝てないし、人ひとりおんぶして歩くのめちゃくちゃきつい……」
苦労して仕事場へ到着すると……そこにいたのは。
「……あなた、何してるの?」
サンドローネがいた。
なんか久しぶりな気がする。めちゃくちゃめんどくさそうな声で言う。
「なんだよ……マジで今はムリ。マジで無理、まじでむり」
「よくわからないけど、その子、テッサリオンさんね。クレープス様から聞いてるわ」
「……あっそ」
階段を上り、テッサの部屋にテッサを置き、俺は事務所のソファへ座った。
コーヒー飲みてえ……けど、めんどくさい。
『にゃああ』『うなぁお』
「ああ、かわいいな……猫はいいなあ。にゃああ」
「あなた、大丈夫?」
大福、きなこが俺の傍に来たので撫でる……かわいい。
サンドローネは冷蔵庫を開け、水を注いで俺の前においてくれた。遠慮なく飲む……ああ、ただの水がこうもうまいなんて、俺はしあわせだぜ。
「仕事の話、いい?」
「…………」
「あなた、今年はスノウデーン王国に行く? 行くなら、スノウデーン・スーパー大銭湯経由で行ってほしいのよ。管理を任せている支配人が、困ったことがあるみたいでね……あなたに相談したいことがあるんだって」
「…………」
「ちょっと、聞いてるの?」
「……ん、ああ」
スーパー戦闘……すげえ戦いでも起きてんのかね。異なる五色のスーツを着たヒーローが、世界征服を企む組織と戦ってるとか……俺にどうしろと。
「とにかく。今年は温泉の町レレドレじゃなくて、スーパー銭湯で温泉を堪能したら? あなたの考えたスーパー銭湯がどうなってるのか、あなたも気になるでしょう? それに、私の権限で、宿の一番いい部屋を用意してあげる。もちろん、移動は連結馬車よ」
「…………」
「テッサさんも、連れて行ったら? ねえ……聞いてるの?」
「……おう」
「じゃあ、お願いね。出発は四日後。『鮮血の赤椿』の皆さんには、私からお願いしておくから」
「…………」
スカーレット、カメリア……ああ、ロッソたちか……なにをたのむって?
ねっむ……ソファってなんでこんな眠くなるんだよ。
「じゃ、準備しておいてね」
「…………」
ドアが開き、閉まる音がした……ような、きが、する。
「…………」
ねっむ……もういいや、寝ちゃおー……っと。