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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十六章 独身おじさんとアルバイト

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独身おじさんとアルバイト⑤

 さて、さっそく町へ出た。

 職場からほど近い商店街へ向かい、安い食材の店、服屋、魔道具店、ウェンティズ食品商店などを案内する……テッサのやつ、面白いのかキョロキョロしっぱなしだ。

 サスケは、要所要所で捕捉説明をしてくれる。


「ここの店、安いだけじゃなくてセール期間が長いんだ。エルフ族でも肉は平気だよな? 頻繁にセールやってるから、肉が食いたいなら最初はここを目指すといいぜ」

「なるほど……サスケさん、ありがとうございます」

「気にすんな。じゃあ、次はどうする?」

「そうですね。お肉、お野菜のお店はわかりました。パンなどがおいしいお店は……」

「じゃあ、喫茶店、八百屋に案内するよ」


 俺の前にはサスケ、テッサ。

 俺の隣にはトモエがいる……が、トモエ、喋らずにサスケの背中をじっと見ていた。

 俺はトモエにコソッという。


「おい、見てるだけでいのか?」

「……何が?」

「いや、サスケとテッサ、なんかいい雰囲気だし……」


 なんとなくだけど、トモエ……サスケにホの字(死語)な気がするんだよな。幼馴染だっていうし、年も同じだし……わくわく。

 サスケ。アオにも微妙なフラグ立ててるし、トモエ、テッサと女の子人気は高いな。マリンスポーツ大会でも女性人気すごかったし……まあ、俺には野太い声ばっかりだったけど。

 するとトモエ、俺をジロッと見て言う。


「別に、サスケのことなんてなんとも思ってないから」

「お、おう」

「おーいオッサン、トモエ、この店入ろうぜ」


 サスケが家具屋を指さし、俺たちは店内へ進むのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、あっという間にお昼になった。


「お昼……お鍋が食べたいわ」


 意外にもトモエが提案する。

 テッサは「おなべ?」と首を傾げ、サスケはにやりと頷いた。


「鍋ってのは、肉野菜や魚を煮込んで味付けした、アズマ発祥の料理なんだ。せっかくだ、うまい鍋の店、オレの知ってるところでよければ案内するぜ」

「ぜひー!! トモエさん、教えてくれてありがとう!!」

「……別に、私が食べたいだけだし」

「素直じゃねぇなあ。あっはっは……す、すみませんでした」


 余計なことを言ったせいで睨まれましたー!! こっわ!!

 というか俺、町案内するなんて言いながら何もしてねえ。むしろ、ご近所にまだまだ知らない店が多く、テッサと一緒に教わる立場になってしまった……俺、この世界にきてもう二年以上経つのに、知らないところ多すぎる。

 というわけで、サスケおすすめの鍋屋へ。

 木造の二階建て、サスケが店主に何かを言うと、そのまま二階の一番いい部屋へ。


「ここはオレのおごり。好きなの注文していいぜ」

「え、でも」

「気にすんなって。もちろん、トモエとオッサンもだぜ」

「なんていうか、お前とにかくイケメンすぎるぞ」

「……じゃあ私、海鮮魚介尽くし鍋」

「えっと……じゃあ私も、トモエさんと同じので」

「俺は肉鍋。まだまだ若いもんには負けんぞ!!」

「よく意味わかんねーけど……オレは日替わり鍋で」


 注文が終わり、お鍋が到着。

 テッサは、海鮮たっぷりの鍋に目を輝かせた。


「わぁ~、すっごくいい香り。しかも、知らない食材がいっぱい!!」

「エルフの国では魚とか食べないのか?」

「川魚はありますけど、海は遠いので……それに、海の食材を運ぶ方法が最近までなかったので、食べたことがほとんどないんです」


 そういや、俺の作った冷凍庫のおかげで、ザナドゥの海鮮を安定して運べるようになったんだっけ。

 まあいい。鍋が冷めるので、さっそく食べ始めた。


「うっま!! 肉、うめえ!! あっつ!?」

「んー!! 海鮮、おいしいです!! この貝とか、エビとか、カニとか!!」

「……いい味ね」

「だろ? ここ、オレの部下が経営する店なんだ」


 え、部下なんているんだ……まあ、気にしないでおこう。

 でも、せっかくだし聞いてみるか。


「なあ、言えないならいいけど、サスケとトモエって同じ組織に所属してるんだよな」

「ええ。部署は違うけどね……」

「オレは御庭番の諜報部、トモエは実行部隊に所属してるんだ」

「じゃあ、部下とかいるのか?」

「ま、いちおうな」

「……私は実行部隊の総隊長代理、サスケは諜報部筆頭の諜報員よ」


 お、教えてくれたけど、知っていい情報なのか? 

 テッサは首を傾げ、魚の切り身を食べながら言う。


「トモエさんって、すっごく強いんですよね。クレープスさんも『頼りになる』ってほめてました」

「……そ、そう」


 おお、トモエが照れた。

 サスケがトモエを見て言う。


「トモエは、御庭番の実行部隊、総隊長代理。総隊長が不在の時には指揮を執る役目があるんだけど、総隊長不在なんてあり得ないからな。だから、普段は自由に行動できるんだ」

「へー、そうなのか」

「ああ。御庭番の創設に『蟹座の魔女』が深く関わっててな。そこで、自由のきくトモエが護衛を務めているんだ」

「なるほど……」

「ちょっとサスケ。あまり内部事情を喋らないでよ」

「おっと悪い悪い」


 サスケは日替わり鍋をつつき始める……日替わり鍋、キノコ鍋なのかキノコしか入ってないな。それはそれで食べてみたいぞ。


「……サスケは筆頭諜報員。数多くいる諜報員の中でもトップに君臨する諜報員よ。実行部隊の精鋭でも適わない強さに、諜報員としての能力の高さ……御庭番最強と言っても過言じゃないわ」

「おいおいおい、持ち上げすぎ、あと内部事情を話すなよ」

「お互い様」

「へいへい。ああオッサン、トモエはこういうけど、御庭番最強はトモエだぜ。あの『赤』のロッソにだって引けを取らないと思う」

「……私、あなたに勝てる気がしないわ」

「オレもだ。はは、似た者同士かもな」

「ふふ。サスケさんとトモエさんってすっごい仲良しですね。恋人ですか?」

「ぶっふ!?」


 と、テッサが爆弾を放り込んだ……い、いきなり恋人とか。

 トモエが盛大に吹き出し、魚の切り身が俺の顔面に命中する。


「ここ、恋人って、幼馴染ではあるけど、そんなんじゃないわ!!」

「そうなんですか? 師匠、最近読んだ本に、『幼馴染同士は結婚するのがほとんど』ってありますけど」

「あー、そりゃ間違ってないな」


 俺はタオルで顔をふく。汚いオッサンの吹き出した唾とかスープだったら顔洗いに行って消毒するけど、トモエみたいな美少女だったら顔を拭くくらいで十分だぜ。いや汚いけどね。

 するとサスケ、苦笑しながら言う。


「テッサ。オレらみたいなのは、結婚とは一番遠い仕事してるから、そういう関係にはなれないんだよ」

「そうなんですか?」

「……まあ、そうね」


 冷静さを取り戻したトモエも言う。俺は何か言うべきか迷っていると。


「でも、それってルールで決められてるわけじゃないですよね?」

「「え」」

「私が読んだ本にありました。結婚とか、愛とか、誰かに決められてするものじゃないって。好きなら好きでいいし、どんな障害があっても、愛は止められないって!! ですよね、師匠!!」

「え!? あ、うん」


 お、俺に言われても……すると、トモエが言う。


「……あなたの言う通り。そうね、誰かに決められたわけじゃなわね」

「まあ、ルールあるわけじゃないしなあ」


 サスケも困ったように笑った。

 うんうん。これをきっかけに、サスケとトモエの間にラブロマンスが……なんて。


「というわけで、お二人の『愛』を応援しますね!!」

「「…………」」

「あ、あのなテッサ。二人は別に愛し合ってるとかじゃ」

「私の読んだ本にありました!! 幼馴染は愛し合い、くんずほぐれつ……っきゃー!!」


 こ、こいつ……本の世界と現実を混同してるのかね。っていうか、くんずほぐれつって……どんな本を読んでるんだっつーの。


「ふうう、ありがとうございます。ありがとうございます……さて、お会計しましょう!! サスケさん、甘いものが食べられるお店ってありますか?」

「あ、ああ……あるぜ」


 サスケは、何とも言えない表情で頷いた。

 トモエはコソッと俺に言う。


「……クレープス様、もしかしたら、この子の性格を矯正するよう、あなたにお願いしたんじゃない?」

「…………」


 悪いけど俺には無理。っていうか……これはこれで面白いんじゃね? と思う俺だった。

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