表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十六章 独身おじさんとアルバイト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

210/228

独身おじさんとアルバイト①

 さて、雨も止み、今日は夏真っ盛りの快晴だ。

 十月までは暑い……とりあえず、今日は久しぶりに事務所の掃除かな。

 コーヒー豆、来客用の茶菓子を手に家を出て職場へ。

 ドアを開けると……うわあ、ちょっと埃っぽい。


「掃除しなきゃなあ……」


 窓を全開にして、二階から掃除開始。

 事務所の掃除から。机を拭いて、魔道具のチェック……冷蔵庫の魔石交換しないとな。エアコン、ロッソたちのと同じ素材で作ったから、ここのエアコンも作り直しだ。

 事務所の次はトイレにシャワー室、台所だ。こっちも徹底的に掃除。

 そして宿泊部屋。布団を干し、掃き掃除と拭き掃除。

 一階の作業場も掃除掃除!! 埃を徹底的に払って追い出し、綺麗になった。

 地下……こっちはもとから埃っぽい。まあ、とりあえず掃除掃除!!

 掃除開始から半日後、布団を取り込んだ。

 綺麗になった事務所のソファに座り、俺は作ったばかりの麦茶を飲む……異世界の麦で作った麦茶、味がすごく濃くてうまい。


「さーて、掃除も終わったし、明日から仕事再開だ。今日は飲みに……」


 そこまで言うと、カンカンと階段を上る音が聞こえて来た。

 しまったな……一階開けっぱなしだ。一階に俺がいないから事務所の方に来たのか?

 とりあえず、今日は休みだと言おうと思っていると。


「……入るわよ」

「あれ、クレープスかよ」


 なんと、『蟹座の魔女』クレープスと、その護衛トモエだった。

 俺は頭に巻いていたタオルを外す。


「悪いな、今日は休みで明日からなんだよ」

「好都合ね。あなた……以前、私が言ったこと、覚えてる?」

「……墓参りのことか?」

「その次」

「……えーと」


 なんだっけ?  

 考え込んでいると、クレープスが指をパチンと鳴らす。

 すると、ドアの傍に誰かいたのか入って来た。


「アルバイト、だったかしら」

「……あ」


 思い出した。

 以前、こいつが飲みに来た時、仕事を見せてやってほしいとかなんとか言われたっけ。

 雨続きですっかり忘れていた。

 俺は、クレープスの隣でガチガチに緊張しているっぽい女の子を見た。


「その子が?」

「ええ、そうよ。エルフ族で、私の知り合いの孫娘。この若さで魔導文字をいくつか発見してね……見込みがありそうだからと相談を受けたの」

「へえ……」

「名前は、テッサリオン。テッサと呼んであげて。テッサ、ご挨拶」

「は、はい!!」


 テッサリオンことテッサは、すごい勢いで頭を下げた。


「は、はじめまして!! エルフリア精霊国から来た、テッサリオンです!! く、クレープス様のご紹介で、お世話になることになってました!!」


 緊張してるのか、言い方がおかしい。

 テッサ。長い銀髪をポニーテールにして、民族衣装っぽい胸元が開いた服を着てる。背中とか丸見えで、スカートというかパレオみたいなの巻いている。

 髪の色、クレープスと同じ色だ……あれ?


「なあクレープス。テッサの髪の色、お前と同じだな」

「……よく見てるわね。さすが魔道具技師」

「それ、関係あるか?」

「ふふ。関係ないかもね……あなたの指摘通り、この子は私たちに連なる血筋よ。知っている? 私たち十二星座の魔女世代のエルフ族は、白銀の髪に黄金の瞳を持つ『エルダーエルフ』と呼ばれる種族。今のエルフ族は、比較的若いエメラルドグリーンの髪と瞳を持つ『エルフ族』よ。森ではなく山に住むエルフは黒髪黒目の『ダークエルフ』とも呼ばれるし、信仰深い『ハイエルフ』という魔力が高い灰髪灰目の種族もいるわ」

「いろいろいるんだな……」

「ええ。エルダーエルフは、私たち十二人の他に、数えるほどしか残っていないわ。この子は、エルダーエルフの子孫ね……今はもう普通のエルフだけど、この子だけ先祖返りで、私たちと同じ銀髪金目で生まれたの。だから、私に話が来たの」


 説明長くてごめんね……じゃなくて。

 テッサは、俺とクレープスを交互に見ながらモジモジしていた。

 クレープスがテッサの方にそっと触れ、「さ、説明を」と言う。


「あの、ゲントク様……私、故郷では浮いた存在でして、ファルザン様や、ラスラヌフ様と文通する生活を送っていました。ポワソン様からも魔導文字について習ったり、外の世界で魔道具のことも聞いたりして……いつか、私もなんて考えてました」

「それで、ファルザンに弟子入りか」

「は、はい。クレープス様にご相談したら、まずはゲントク様のもとで、商売について学ぶといいと」


 学ぶねえ……うち、魔道具の修理がメインなんだよな。

 魔道具開発所だけど、今じゃ魔道具修理と自転車修理がメインになってる。まあ、俺が作った魔道具がアレキサンドライト商会で製品化してるから、魔道具開発所で間違ってないけど。

 でもまあ、一度引き受けちまったしな……やってやるか。


「よしわかった。テッサ、お前をアルバイトとして雇おう。俺の仕事手伝いをしながら勉強するといい。俺も、できる範囲でいろいろ教えてやるからな」

「は、はい!!」

「……話はまとまったわね。じゃあゲントク、あとはよろしくね」


 クレープスが言うと、トモエが持っていたカバンをテーブルに置いた。


「じゃ、一か月後に、ファルザンと迎えに来るから」


 それだけ言い、クレープスは出て行った。

 残されたのは俺、そしてテッサ。

 えーと……バイトなんて雇ったことないぞ。俺も実家の電気店がバイト先みたいなもんだったし、外でのバイトなんてしたことない。しかも若い娘……うーん。


「テッサ、ところで……どこに住んでるんだ?」

「え? いえ、今日エーデルシュタイン王国に来たばかりです」

「え……」


 テーブルの上のカバンを見る……うん、お泊りセットだなこりゃ。


「あ、あ~……住むとこと、決まってんのか?」

「いえ、何も……今日、ゲントク様のところへ行くとしか」


 あ、あの野郎、クレープス……全部俺に丸投げかい。

 落ち着け。異世界系、ハーレム系ラノベを思いだせ。

 俺の家……いや絶対無理。宿なし系主人公がヒロインの家にお世話になるとか、出会って一年以上経って信頼関係があっても無理。

 あ、そうだ。


「じゃあ、ここに住むか? 一応、客間もシャワーもあるけど」

「いいんですか?」

「ああ。その代わり、掃除は自分でやってもらうぞ」

「はい!!」


 というわけで、荷物を宿泊部屋へ……今日、掃除してよかった。

 そのまま、軽く職場内を案内する。


「ここがシャワー、あんまり使ってないけど、綺麗に掃除したから好きに使ってくれ。んでこっちがトイレで、こっちがキッチン。デカい冷蔵庫もあるから、食材とか買って自分でメシ作ってもいいぞ。そして一階……」


 一階に降りると、テッサは「わぁぁ」と目を輝かせた。


「ここが作業場だ。魔道具の修理、それと開発なんかを行ってる。そこの扉からは地下へ行ける。地下には素材や魔石用の金庫なんかが置いてある。等級の高い魔石は、金庫に入れてしまってあるんだ」

「なるほど……勉強になります、ゲントク様」

「あ、ああ。あと……そのゲントク様っての、やめてほしいな」

「では、何とお呼びすれば?」


 うーん……さん付け、が普通かな。

 考えていると、テッサはポンと手を叩く。


「では、師匠とお呼びします。師匠!!」

「……ま、まあいいか」


 ちょっと気持ちいいな……師匠とか。

 とりあえず、仕事場の案内はおしまい。


「自分の家だと思って好きに生活してくれ。困ったことがあれば俺に言うこと。ああそうだ、今日は帰るだけだし……近くで食材買える場所とか、飲食店が多いエリアとか案内するよ」

「わあ、ありがとうございます。師匠!!」

「お、おう」


 なんか照れるな……ゲントク師匠!! くぅぅ、やっぱ恥ずかしいかも!!

 とりあえず、誤魔化すように咳払い。

 すると、テッサが頭を下げた。


「改めまして……師匠、これからよろしくお願いします!!」


 こうして、俺はエルフの少女、魔道具技師見習いのテッサリオンことテッサを、アルバイトとして雇うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独身おじさんの異世界ライフ ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~1
レーベル:ドラゴンノベルス
著者:さとう
イラスト:aoki
発売日:2025年 12月 5日
定価 1540円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
gru3czkctwzg5sz4cundzobhjz8_dau_15z_1nn_1drze.jpg


独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~(1)
レーベル:マンガボックス
著者:比内ハツ
原著:さとう
発売日:2025年 6月 30日
定価 726円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
586s2p3l4ab73qyuj2dvfjdibos4_645_11i_1hc_1rgkw.png
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ