優勝パーティー!!(サンドローネ頑張る)後編
全員揃い、サンドローネもバーベキューを焼き始めている。
俺は全員に飲み物を配布し、サンドローネに焼く手を止めてもらい隣へ。
そして、ジョッキを掲げて言う。
「えー、長々と話すのは性分じゃないんで簡潔に。俺とサスケは『自由競争』で優勝した!! 今日はそのお祝いってことで、好きなだけ飲み食いしてくれ!! 給仕はサンドローネが全部やるから、いつも準備だの片付けだの料理だのしてる人も遠慮なく楽しんでくれよ!! ってわけで……乾杯!!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
みんなで乾杯。
サンドローネもエールを一気飲みするとジョッキを置き、再びバーベキューを焼き始めた。
というわけで……宴会が始まるのだった。
◇◇◇◇◇◇
さて、さっそくみんなの様子を見に行く。
サンドローネはバーベキューを焼き、俺が教えたタコ焼きも焼き始める。
ロッソたちが串を手にモグモグ食べ、サンドローネは追加で焼き始める。
リヒターはサンドローネが気になるのか近づいた。
「お嬢……」
「手出し無用よ。あなたならわかるわよね? 私、約束はちゃんと守るから」
「……わかりました。私も、楽しませていただきます」
おお、リヒターのやつ、サンドローネから離れてバーベキューを食べ始めた。
マイルズさん、シュバンと合流してワイワイ楽しんでる。
「いやあ、慣れないですね……お嬢に支度をさせて、私が食事を楽しむというのは」
「ははは。我々は根っからの従者ですからね」
「オレはまだ慣れないな……もし、お嬢様があの立場だったら、我慢できるかどうか」
あの三人、根っからの従者だしな……互いに話は合うようだ。
でも、三人でお喋りしていると、サンドローネのことを気にしなくなったのか、リヒターも笑顔になってきた。たぶん、マイルズさんが上手く話をしているんだろうな。
見ていると、マイルズさんが俺に向かって小さく頷いた。まるでリヒターは任せろと言わんばかりに……ほんと、すごい紳士だよ。
さて……お、あそこにいるのは。
「お姉様が自分でやるって言う以上、あとはもうお任せかな。むしろ、心配そうにしてるとお姉様も気にしちゃうしね」
「ふふ、そうですね。私も気になりますけど……でも、サンドローネさんが望まないなら」
おお、イェランとスノウさんか。
二人はタコ焼きを食べながら楽しそうに会話している。イェランが言ってたけど、意外にも話が合うらしいんだよな。
しばらく時間が経過すると、もう誰もサンドローネを気にしなくなった。
「おっさん!! 飲んでる~?」
「おうロッソ。ってかその両手の串なんだよ」
ロッソが絡んできた。両手にバーベキューの串を十本くらい持ち、モグモグと食べている。
俺はジョッキを手に、砂浜に用意した椅子にロッソと座った。
「あ~最高。おっさん、あの潜水艇だっけ。明日乗せてね」
「いいぞ。起きれたらだけど……ってか朝まで飲む予定だぜ。飲酒運転はダメ絶対」
「何言ってんの? お、アオ」
「……おじさん」
と、アオが背中に抱きついてきた……な、なんかスキンシップが。
匂いを嗅ぐと、なんか酒臭い。
「うう、おさけってあんまりだけど……今日はおいしい」
「アオ。飲み過ぎですわよ? というか、あの綺麗なオレンジ色のお酒、すっごく酒精の強いお酒ですわ」
「ううう……おじさん」
「お、おいアオ。あんまりくっつくなって」
「おじさんだから。他の人だったら嫌……んんん」
抱きつく、というか前に回り込んでしがみついてきた……出会ってこんなにくっつかれたの初めてだ。
ブランシュが引き剥がし、そのまま砂浜に敷いたシートへ寝かせた。
魔法をかけ、酔い覚ましをしている……まあ放っておくか。
すると、バレンが来た。
「ゲントクさん、改めておめでとうございます」
「ああ、ありがとうなバレン」
「あ、バレン。アタシも改めて……依頼、ありがとね」
「気にしなくていいよ。ザナドゥに拠点を構えることもできたし、これからはボクらも依頼を受けるつもりさ。それに……ダンジョンも見つかったしね」
「あはは、そうね」
ロッソがグラスを向けると、バレンも自分のグラスを合わせた。
なんかいい雰囲気だな……俺、消えようかな。
飲み物を取りにいくフリをして緊急離脱!! 若いモン同士でな。おっさんは華麗に去るぜ。
砂浜にいくつか並べたテーブルの一つに、サスケとウングが座っていた。
「……前から気になってたけどよ、お前タダ者じゃないな」
「ん? そう見えるか?」
「ああ。オレやアオに近い……暗殺者か?」
「ははは。まあ、似たようなモンだ。でも、殺しより諜報的な仕事がメインかな。これ以上、詮索はなし。ダチとして楽しもうぜ」
「……フン」
サスケがグラスを向けると、ウングが自分のグラスを合わせた。
「いつか手合わせ願いたいモンだぜ」
「あっはっは。オレが敵うわけないだろ?」
物騒だけど……まあ、酒の席の冗談って感じかな。
あの二人、いい友人同士になれそうな気がした。
アオを巡って、二人の男のバトル……うーん、ありそうな気がしてきたぞ。
「うんま~!! ティガーのおっちゃん、ドギーのおっちゃん、もっと食べようよ!! ほれほれ、サンドローネおねえさん、お肉もっと追加で~!!」
リーンドゥの声。
声の方を向くと、テーブルに大量の肉串を並べ、ティガーさんとドギーさんの三人で食べていた。
「いやあ、うまいですな!! ささ、リーンドゥ殿、どうぞどうぞ」
「あんがと~!! おっちゃんもはい、どうぞどうぞ」
「これはこれは、ありがとうございます」
「ささ、リーンドゥ殿、こちらの肉も」
「ん~ありがと!! あ、ブランシュも来なよ!! おいしいよ~!!」
「はいはい。あら、ドギーさん、グラスが空っぽですわ。ささ、どうぞ」
「これはこれは、ありがとうございます」
なんか、ここが一番食いそうだな……ってか食ってるわ。
サンドローネが追加の串をテーブルに置くと、一気になくなっていく。
五百本用意したけど、足りるかどうかわからん……まあ、大丈夫か。
「ふふ、おいしい……甘いお酒ですね」
「うむ。果実水と果実の酒を合わせて、新しい酒を作る……カクテルじゃ」
「まあ、ふんわりと甘酸っぱいわ……」
「おいしい……」
おお? 酒を並べて作った臨時のバーカウンターにラスラヌフがいる。
そして、カウンター前にはリュコスさん、ルナールさん、ベスさんがいる。なるほど……ラスラヌフがカクテルを作って出しているのか。
サンドローネに任せるつもりだったけど、肉を焼くのに精一杯で酒まで手が回らないようだ。
まあ、腕前を披露しているし、手伝いって感じじゃないな。
「にゃああ」
「ん? おお、ユキちゃん。楽しんでるかい?」
「にゃうー、おさかな、おいしいの」
ユキちゃんは、串に刺した魚を食べていた……っていうかすげえ、四歳の子供が魚を頭から骨ごとバリバリ食べてる。
砂浜に敷いたシートに、ケモミミチルドレンが集まってご飯を食べていた。
近付くと、嬉しそうに言う。
「がうう、おじちゃん。おにくたべる?」
「おやさいもあるよ」
「わうう、くだもの。おいしい」
「にゃああ。おさかな、まだたべるの」
うーん、癒される。
野外で、砂浜に敷いたシートの上で、ランプの光に照らされながら、大勢で食事……子供たちにとって楽しくないわけがない。
するとユキちゃんが言う。
「おじちゃん。あのね……今日はひみつのおとまりなの」
そして指差したのはテント。
俺の作ったワンタッチテントだ。中を見ると大きなシートが敷かれており、枕が四つ並んでいる。
「にゃあ。おじちゃん、おじちゃんもいっしょにおとまりしていいよ」
「きゅう、おじちゃん、はいれる?」
「がるる、ひみつだぞ」
「わうう、たのしみだね」
かわいいな……秘密の意味がよくわからんけど、今日はテント泊らしい。
近くには別のテントもある。たぶん大人用かな? 俺の別荘ではみんな泊まれないから、冒険者たちはテント泊って話になったんだよな。まあ、朝まで飲むつもりだし寝床はいらんってロッソやリーンドゥは言ってたけど。
俺はケモミミチルドレンを撫で、その場から離れた。
「おいゲントク、こっち来いよ」
「ん? おう、ハボリム」
ハボリムがいた席に座り、ジョッキを合わせた。
「いやー楽しいな。飯は美味いし、このタコ焼きとかいうの、マジすげえな」
「だろ? レシピやるよ。王城の料理人に作ってもらえよ」
「それもいいけどよ。これって水割りと合わせるのが最高じゃね?」
こ、こいつ……わかってる。
そう、タコ焼きはハイボールが合う……あれ、言ったっけ? この世界にもウイスキーがあるってこと。まあそういうわけで、ハイボールも普通にある。
「じゃあレシピ、アレキサンドライト商会が経営している飲食店とかに渡す。どこでも食えるようになれば、お前も嬉しいだろ」
「おう!! へへ……ありがとな、ゲントク」
いきなり真面目トーンでお礼を言われた。
ハボリムはジョッキを置いて言う。
「ザナドゥに新しい文化が生まれた。これも、お前のおかげだ。国王として……友人として、お前に感謝するよ。王様らしく言うなら『望む物はあるか?』ってところだけどよ、なんかあるか?」
「いらねーよ。ダチなら感謝の言葉で十分。と……そうだ、一つだけ」
「ん、なんだ?」
「お前の行きつけの店、全部教えろよ。来年来た時、偶然会うかもしれないしな」
「……はっ!! いいぜ。それと、まだまだ宴は始まったばかりだ。飲みまくるぜ!!」
「おう!! おーいサンドローネ、おつまみ!! あと酒!!」
「はーい!! 待ってなさい!!」
さーて、サンドローネをコキ使って、朝まで楽しく飲みまくるぜ!!
このあと、ロッソたちも混ぜて飲みまくった。
ラスラヌフがギターを出して引き始めたので踊ったり、腕相撲対決をしてハボリムと俺がいい勝負をしたり、バーカウンターにサンドローネを立たせて百種類くらい用意した酒を混ぜ合わせてカクテルを作らせたりもした。
せっかくの海だし、ちょっと悪巧みもしてみた。
「おいイェラン、わかってるな?」
「うんうん。うしし、スノウさんは任せて」
俺はリヒターを呼んで一緒のテーブルで飲み、そこにスノウさんとイェランを呼ぶ。
「あー、サンドローネにちょっかい出してくるわ!!」
「あたし、トイレ!!」
クッソわざとらしく離席……ふふふ、あとは頑張れリヒター。というかイェラン、酔ってんのか女の子がデカい声で「トイレ!!」はどうよ。
俺はサンドローネの元へ。
「……何か?」
「い、いや……頑張ってんな」
サンドローネ……汗だくで、結んだ髪は乱れに乱れ、化粧は崩れ、シャツは肉汁や油で汚れ、手もベッタベタになっていた。
シャツが汗だくで下着……あ、下着じゃない、水着だなこりゃ。
「おねーさん、お肉ー!!」
「はーい!!」
「すみません、お酒をお願いします」
「はい、お待ちくださいねー!!」
「がっはっは!! サンドローネ、こっちも肉追加だ!!」
「はい、お待ちください!!」
い、忙しい。
ちょっと一人じゃ無理かなーなんて思っていると、サンドローネが言う。
「手出し無用。ちゃんとこなしてみせるから」
「お、おう……お前もちゃんと食えよ」
「食べてるわよ」
サンドローネ、焼いた肉に齧りついた。
なんか野性的になったな……あんまり構うと怖いから離れるか。
こうして、楽しい宴会はまだまだ続くのだった。






