優勝パーティー!!(サンドローネ頑張る)前編
さて、ザナドゥ・マリンスポーツ大会は終わった。
二度目のバカンスも楽しかった。そろそろエーデルシュタイン王国に帰り、仕事を再開することも考えないといけない。
だがその前に。現在、俺とサスケは別荘のリビングを広くしていた。
「オッサン、ウッドデッキの入口は?」
「全開で。あと、人数分の椅子とか、バーベキューコンロも全部出しておこう」
「了解。食材は?」
「リヒターとイェランが買いに行った。あとはサンドローネの仕事だ……な?」
「……ええ、そうね」
今日は、自由競争の優勝記念パーティーだ。
いろいろお客さんが来るから、リビングを広くして、ウッドデッキと浜辺を行き来しやすくしている。
俺はサンドローネに言う。
「給仕、頼むぜサンドローネ。約束だしな」
「わかってるわよ」
「終わったあとの掃除もあるぜ。トイレ掃除もな!!」
「ぐぐぐ……わかってるわ。何度も言わないで」
ちなみにサンドローネ、今日はタンクトップにハーフパンツにエプロン、長い髪はお団子にまとめている……顔も身体もいいやつは、どんな格好しても似合うもんだ。
それから、リヒターたちが買い物から戻った。
「ただいま戻りました」
「ただいま~!! 材料いっぱい買って来たよー!!」
「おかえり。じゃあサンドローネ、バーベキューの仕込み頼むぞ!! まあ、それくらいは俺らも手伝いしてやるからな!!」
「……そうね」
「お嬢……大丈夫ですか?」
「当たり前でしょ。って……っひ!?」
サンドローネの前に、デカい魚をドンと置く。
俺は鱗を取り、首を落とし、内臓を抜いて三枚おろしにする。
「サンドローネ、お前これできるか?」
「でで、できるわけないでしょ!! なな、内臓……」
魚の内臓でもうダメか……まあ、お嬢様だしな。
とりあえず、それ以外の仕込みを頼んでおくか。
すると、サスケが外から来た。
「オッサン、野外用の冷蔵庫も運んだぜ。飲み物だけで軽く百人分くらいあるけどよ……多すぎないか?」
「大丈夫大丈夫、今日はけっこうな数来るからな」
今日、優勝パーティーに参加するのは。
ロッソ、アオ、ブランシュ、ヴェルデ。シュバンとマイルズさんの六人。
バレン、ウング、リーンドゥの三人。
ハボリム、ラスラヌフの二人。
ティガーさん、リュコスさん、ルナールさん、クロハちゃんとリーサちゃんの五人。
ドギーさん、ベスさん、シアちゃんの三人。
そして、俺とサンドローネとリヒター、イェランとサスケの五人。
合計、えーと……二十四人か。けっこうな大所帯だなあ。
「とりあえず、メシも百人分以上用意しておくか。ティガーさんとか、ロッソやリーンドゥは十人前食いそうだし」
「おう。メニューは?」
「バーベキューがメイン、タコ焼きかな。あとはとにかく酒、果実水だ。くくく、今日は楽しむぜ」
用意したのは、バーベキュー串五百本、あと網焼き用の野菜や肉、海鮮が二百人前……さすがに用意しすぎたかな。まあ、何とかなるだろ。
サンドローネを見ると、黙々と串に野菜や肉を通していた。
今日は、サンドローネが一人で給仕担当する。
肉を焼いたり、タコ焼きつくったり、酒を運んだり、後片付けしたり……まあ、お嬢様も少しは額に汗流して働く苦労を知ってくれ。
優勝パーティーは夜。くくく、今からワクワクしてきたぜ。
◇◇◇◇◇◇
さて、夕方になり全ての準備が整った。
俺は来客を出迎える前に、サンドローネの元へ。
サンドローネは、バーベキューコンロの前で串焼きをジュウジュウ焼いていた。やり方をリヒターに教わり、今は一人でやってる。
意地があるのか、リヒターが手伝おうとすると睨むのだ。
でも、足りない物がある。
「サンドローネ、ちょっといいか」
「何、忙しいの」
「すぐ終わる……そのまま動くなよ」
「な、なによ」
俺は手ぬぐいをねじり、サンドローネの額に巻いた。
ねじり鉢巻き……やっぱ必要だろ。
ウンウン頷いていると、サンドローネに本気で睨まれた。
「よし、じゃあ給仕さん、これから忙しくなるからよろしくな!!」
「……ええ」
「返事は?」
「……はい。これでいいんでしょ」
「おう。ってか、優勝したんだから、お前も嫌々じゃなくてちゃんとやれよ」
「くぅ……わかったわよ!! 本気でやるわよ!!」
よし、なんだかんだで真面目なヤツだし、あとはしっかりやるだろう。
すると、チャイムが鳴った。
「おっさーん!! 優勝おめでとう!!」
「……おめでとう」
「おじ様、優勝おめでとうございます。これ、つまらないものですが」
「おめでと。本当に優勝するなんてねー」
俺はシュバンが手渡した高級酒を受けとる。
「ありがとうな。ささ、入ってくれ。とにかく大量に酒とメシ用意したから、朝まで騒ごうぜ!!」
「やったー!! おじゃましまーす!!」
ロッソたちが中へ。
俺はシュバンとマイルズさんに言う。
「お二人とも、今日はサンドローネが給仕係なんで、手伝いはナシで。サンドローネのためにもよろしくお願いしますよ」
「あ、ああ。わかったぜ」
「わかりました。では、個人として楽しませていただきましょう」
シュバンはちょっと困惑していたが、マイルズさんはニッコリ微笑んだ。こういう切り替えのできる老紳士って最高だぜ!!
そして、遅れてユキちゃんとスノウさんが来た。
「ゲントクさん、優勝おめでとうございます」
「にゃああ。おめでとー、おじちゃんにあげるね」
「ははは、ありがとうございます。お、ユキちゃん、くれるのか?」
ユキちゃんは大きな貝殻を俺に差し出したので、遠慮なくもらった。
これ、後でリビングの壁にでも飾っておくか。
その後は、バレンたちが来た。
「ゲントクさん、優勝おめでとうございます。これ、お祝いです」
「おお、ありがとうな。またもや高級酒、うれしいぜ」
「……おいオヤジ。あの海に沈む乗り物、オレにも乗せろよ」
「いいぞ。任せておけ」
「おっちゃん!! じゃあウチには運転させて!!」
「お、おお……まあ、ちょっとだけな」
バレンたちも到着、と。
チラッとサンドローネを見ると、お客さんに挨拶していた。
スノウさんが手伝おうとしていたが、マイルズさんがそっと止めているのが見えたぜ。
そして、獣人一家たちが到着した。
「こんにちは。ゲントクさん、この度は優勝おめでとうございます。いやあ、観客席から見ていましたが、優勝した瞬間、私も興奮して飛び上がってしまいましたよ」
「ありがとうございます。ささ、今日は楽しんでいってください」
「がうう」
「きゅうん」
「はは、クロハちゃんにリーサちゃんも。いっぱい食べていいからな」
リュコスさん、ルナールさんに抱っこされた二人を撫でる。
その後ろに、ドギーさん一家もいた。
「おめでとうございます。ゲントクさん」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます、ドギーさん、ベスさん」
「わううう。おじさん」
「シアちゃんも、ありがとうな」
祝いの言葉が一番嬉しい……浜辺を見ると、サスケもみんなからお祝いの言葉を受け取っていた。照れているのか、恥ずかしそうだな。
そして最後、イェランとラスラヌフ、そしてハボリムだ。
ハボリム……アロハシャツの前を全開にし、ハーフパンツにサンダル、サングラスと下町スタイルだ。
「よーうゲントク。来てやったぜー」
「おう。今日は朝まで付き合えよ?」
「いいぜ。とことん楽しもうぜ!!」
拳をコツンと合わせる。
ラスラヌフはクスクス微笑んでいた。
「ふふ。去年より賑やかでいいのぅ」
「だな。二十人以上で宴会とか、考えもしなかった」
「サンドローネは……いたいた。頑張っておるの」
「ああ。声かけてやってくれ」
ハボリム、ラスラヌフは浜辺へ。
イェランは、俺の前で大きなため息を吐いた。
「は~緊張した。国王にラスラヌフ様のお迎えなんて、もうやりたくないし」
「お疲れ。まあ、今日は勘弁してくれや」
「うん。あと、お土産もらったよ。すんごい高そうなお酒」
「いいね!! イェラン、今日は楽しもうぜ」
「だね……お姉様には悪いけど、朝まで楽しんじゃうかも」
これで、全員揃った。
さあて、いよいよ優勝パーティーの始まりだぜ!!