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悪徳令嬢に仕立てあげられた少女は、この世界に抗い生きる。  作者: 大井 芽茜


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8/26

新しい生活

婚約を認められ、私は学校に行くために礼儀や魔法を学ぶことになった。

 ――次の日


「やはり、この令嬢……」

「ワンッ」

「ピー!!」

「キュキュ!」

 お目付役の男の人は目を疑っていた。



「えーと、これでいいんですか。」

「あっああ。」

 私が造った獣は四方八方に走り回っていく。蝶のような小さなものからワンコロのような大きなものまで私は小さい頃に練習していた為、簡単にできてしまう。


 といっても、練習は朝から夜まで暇な時間があったら全部つぎ込んできた。


 何度も獣とは言いがたいベチャベチャした獣や目が沢山ついた獣を造り、周りに引かれた事もある。でも、少しずつ失敗を繰り返せば失敗をしないためには何をすればいいのか分かっていく。



「では次は詠唱をしてみましょう。水を出す場合の一番簡単な詠唱はブレッシュータです。」

「ぶ、ブレッシュータ」


 ……ポチャ

 唱えてると、手から一雫だけ出てくる。



「……」

「……」


「あの、詠唱してると感覚が狂って集中出来ません。」

「やはりそうですか。」

 お目付役の男は物珍しそうな顔をしながらも、微笑ましそうに笑っていた。



「それなら詠唱はしない方が良いですね。しかし、カラリア様。学校で学ぶのであれば詠唱は覚えておいたほうがいいですよ。よく先生方から聞かれることもありますから。」

「分かりました。頑張って覚えます!」


 私は、その後もラナから色んな魔法の詠唱が書かれた本を見ながら教えてくれた。



「ブレッシュータ、ブレイトレータ、ブレイト・プラット……なんか似ているようで似てない気がするなぁ」


「意味があるものと適当に名付けられたものが混じっているようですからね。基本形はそれですが、詠唱は魔力を使えるなら他のものでもいいとされています。その基本文はより精度があるものを選んでいるだけだということらしいです」



「なるほど」

 この本を出すのにも数百年はかかっただろうな。


「では、カラリア様。次は作法を」

「はーい」

 そう言った途端


 ドンドン!!

「なに!?」

「これは彼ですね。どうぞ」



 ガチャ

 力強くドアを開けたのは、ドアノブにも届かない小さな男の子だった。金髪に青い目?



「お前がカラリアか!」

「そうですけど」

「俺は第2王子のノアだ!!」


 ノアと名乗る少年は私の元まで歩いてくる。


「お前の実力をみせてみろ!!!」

「え?」


「お前が居なかったら、俺が婚約者をみつけて王様になれたかもしれないのに! お父さんの反対を押し切るほど、凄い力があるんなら見せてみろ!!」


 何を言ってるんだ。この子は。そもそも婚約者いなかったら王様になれないのか?


「見せてみろよ、庶民上がりの令嬢!!」

 私が考える暇もなく、ノアは服を引っ張った。



「た、助けて。ラナ」

「満足するまでうるさい人なので大人しくやった方がいいですよ」

 うーん、仕方ないな。


「では、なにか好きな動物はいますか?」

「いるけど」


 ノアはどこかに行くと、すぐに戻ってきて本を見せた。


 馬車を引っ張る馬のように見えるが、翼が生えている。


「で、なんだ?」

「いえ、少し待っていてください」


 私は、水を練るように形を作る。長細い頭に、長い足、尻尾、そして純白の羽をもつ獣。


「……ヒヒーン!!!」

「っ!?」


 目を開けると、見せて貰った通りの獣がブルブルと頭を振っていた。ノアは急に現れた獣に腰を抜かしている。

「うそっ……どこから」

「私が今創造したんですよ。」


「これを造った!?なんの合図もなしに」

 ノアは私を震えるような目で見ていた。獣はその様子に気にもせず羽を広げて飛び回っている。


「お、俺が悪かった。だからあの獣を消してくれ、このままじゃ城がっ」

「分かりました。」

 私が指を鳴らすとスッと水に戻った。



「これがカラリア様の力です。」

「すげー初めてみた!! じゃあ、これも造って!」


 その後、ノアに散々使わされ私も疲れてしまった。



「はっはは。そうかよかったなノア。」

「はい、お父様!」

「私も見たかった!!」

 私は家族と美味しいご飯を食べながら、ノアが目を輝かせて話す様子を微笑ましく見ていた。シグルとエルマみたいだな。懐かしい。



「二人とも彼女は私の婚約者です。それを忘れないでください」

「ふふっ人気者ね。カラリア」

 でも、よかった。私もこの空間になじめてる気がする。


「皆さんにこうして暖かく迎え入れて貰ったおかげで、毎日が新鮮で充実しています」

「それはよかった」


 王様は心配してくれていたが、この力のおかげで上手くいっている。と、思えばあんなに練習していてよかった。



 私は地元では滅多に食べられなかったご馳走を堪能して部屋に戻った。

「明日はしっかりとやりますからね」

「はい。」

「ま、王子に気に入られるのは大事ですし良しとします。」


 ラナはそう言いながらドレスを片付けていた。ちょっと魔力について聞いてみようかな。


「ねぇラナ。」

「なんでしょうか」


「何故、魔力が使える人と使えない人がいるの?」

 とりあえず。このことからだよね。



「そうですね。この空気上には魔素が必ず含まれていて、吸わない人はいません。」


「しかし、普通の人間は魔素を吸ってもすぐに出て行ってしまう。」

「そうなの?」


「そうなんです。魔力は魔素がなければ変換できません。そして、魔素を体内に貯めれるかどうかは遺伝次第です。」


「他に貯めれる方法は?」

「ありませんよ、そんなもの」

 ラナはバッサリと言い切った。もし、そんなものが作れれば。


「まさか作ろうとかしていませんよね。」

「えっ」

 ラナはジッと睨み付けるようにしてため息をつく。


「そんなものがあれば貴方の立場がなくなりますよ?考えた人もいたらしいですが出来なかったようです。」



 「そもそも魔力の価値がなくなれば自分の立場がなくなるのはわかりきっているので、する人なんていません。」

 そっか。誰でもセルディアに来れちゃうもんね。


「あぁ……」

「確かに作れたらとんでもない事になりますし常識が変るとは思いますが、時間の無駄なので諦めてください。」



「もし、私が使えたら王子を取るかもしれませんよ?」

 確かに。私はポカンと口を開けていた。でもでも、私は……



「全く貴方は変りませんね。ではお風呂に入ってください」

 私はラナに引っ張られ、またお風呂に入る。毎日入るんだな。


「水の一段階。」

「ブレッシュータ!」


「水の二段階」

「ブレイトレッシュ?」

「ブレイトレータです。」


 私は風呂場でラナと勉強会をしていた。



「本来は召し遣いは主の後って言われているんですけどね」

「じゃあ駄目なの?」


「いえ、カラリア様の命令ってことなら良いと思いますよ。」

「じゃあそれで」


「そうしましょう。」と呆れているようだが、もうラナとは仲良くなった気がする。


 よくため息をついて呆れているが、馬鹿にするというよりは親のように見守ってくれているような関係だと思う。



「ラナは学校に来てくれるの?」

「おそらく貴方の護衛であれば、」

「やった! じゃあ一緒に学べるんだね」


「いえ、私が傍にいたら学校生活に支障がでるのでいきません。私はたまに影で見守るくらいです。接触もしないで

 ください。婚約は隠しているんですから。」


 そっか、バスプラから来たのに召し遣いがいたらおかしいってなるんだ。



「じゃあ、遠くで見守っててよ。良いこと聞いたら教えるね」

「……楽しみにしてます」


 ラナはそういうと立ち上がって着替えに行ったのでついて行く。


「あと数ヶ月後で貴方は学校に行くんですから、より一層気を引き締めていきますよ」

「わかりました。……うぇ」


「そのうぇやめる。」

「はい」


 私はラナと話した後、昨日のように眠りについた。

 昨日も疲れて眠っていたが、今日もすぐに眠ってしまいそうだ。



「学校か。楽しみだなっ……ズーズー」

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