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悪徳令嬢に仕立てあげられた少女は、この世界に抗い生きる。  作者: 大井 芽茜


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旅立

町を救った私に王子は婚約を申し込んできた。

「カラリア……本当にごめん」

「くそっ王族だからって」


 その後、町に戻ると王子はお迎えの準備をしてくると町を出た。

 隣の陛下も来たらしいけど、見物にきただけだったようで、すぐに帰っていったらしい。何かを探している途中らしく忙しいやら何やら。


 住民は噂話をしながら私を心配そうに見ていたが、エルワとシグルは一目散に走ってきた。


「嘘だろ!?」

「本当よ。結果的にバスプラも守れたし、これからも安全に暮らせるのは約束してもらえるから。それに王子が言うことに逆らえないしね」


 これから、この町にはセルディアから警備をしてくれる人間がくるらしい。


 バスプラはセルディアから沢山の物資か届くようになり、狩りや作物に頼らなくてもよくなっていく。あと、お父さんの使っている馬車は新調され特産物などを中心に持ってくる仕事に代わるらしい。



「でも、お前はこれからどうなるんだよ……」


「わかんない。だって婚約とか考えたこと無かったもん。でも、学校にも行けるから、そこでまた王子との関係は考えるわ。」


「それで、円満に出来たらいいけど。まぁ、何言ってもこの現実は変わらないし行くしかないのよね。」


 エルワはため息をつくと私の手を掴む。



「いい、カラリア。貴方はこの町に執着しすぎなのよ。せっかくの機会なんだから自分のために生きて幸せになりなさい」


「……うん、わかったよエルワ。」

 エルワがこんな事いうなんて。



「で、名をあげたらこのエルワ様のことを広げてきなさい」

 やっぱり。こんなマジメな事言う人じゃないよね。



「だろうな。お前はこんな時も変わっていないな。」

「当たり前よ。名があがればセルディアにもいけるかもじゃない。待っていなさい」


「じゃあ、俺も魔力が無くても剣を鍛えてセルディアに行くよ」



 そっか。また会えるなら寂しくないよね。

「うん、待ってるね。また帰っても来れると思うし」


 エルワとシグルと別れを済ませ、お父さんとお母さんの元へ行った。



「ごめんなさい、こんな事になるなんて」

「ううん、良いのよ。元気に帰ってきてくれただけで満足なの。」

「謝るのはこちらの方だ。あの王子さえ止めていれば」

 お母さんは私を抱きしめ、お父さんは涙を流していた。



「そんなことしたら駄目よ。セルディアに行くなんて考えていなかったけど、ここまで来たら学校で魔力がない人でも暮らしやすくなるように勉強するわ」


「……っ。本当に貴方は自慢の娘よ。貴方の人生はこれからはどんな風にも変わるわ」

「頑張りなさい。王子に気に入られてはいるが、苦しくなったら帰ってくるんだ」


「はい!!」

 私は力強く返事をして、家に入り荷造りを始めた。小さい頃にシグルから貰った似顔絵や、エルマの小瓶を鞄にいれる。


「あっ……」


 水槽に入ったトカビを取りだした。そういえば、誕生日にシグルから貰ったんだったな。


 きっと連れて行ったら馬車で目が回ってしまうかもしれない。私はトカビをポケットに入れ荷物を持って下に降りた。


「着替えは三日分くらいあればいいわね。あっちについたら服はしっかり買いなさい。」

「お父さん達はこんなことしか出来ないからな」

 二人から、持たされた布の中には大量の金貨が入っていた。


「こんなにもらえない」

「良いんだ。それに半分は貯金したお金だけど、もう半分は町の皆からだ」


「えっ」

 窓をみると住民のみんなが手を振っていた。


「いつもお世話になっているから、是非持っていってほしいってな。断ったんだが押しつけられた。」

「皆もカラリアの事が大好きで感謝しているのよ。恩は不意に返ってくるってことね」

 こんだけあれば、この町じゃ1年は働かなくても暮らせていけるだろう。


「……あなたのものよ。だから、ちゃんと使ってね。」

「ありがとう。」

 荷物を最後に確認した後、外にでると町の皆が私が出るのを待っていた。



「カラリア、王子が来たって」

「元気に生きろよカラリア。」


「うん。あっシグル、この子のことなんだけど」

「あぁ懐かしいな。分かってる、こいつは俺が責任持って育てる」


「うちもね」

「お前にだけは渡さん」

 私は変わらないやりとりに笑いながら、王子の元へいった。


「カラリア・ガベット。待っていました。」

 王子は剣を持った青年を傍に置きながら、馬車の扉を引いた。


「レイ、彼女の荷物を」

「はっ」

 その人に荷物を持ってもらい、馬車に手を引かれながら入った。



「ライバ王子、どうか娘をお願いします。」

「娘になにかあれば、私達が責任を取ります。だから、カラリアには」

 そう言うと、王子はクスっと笑いうなづいた。



「もちろん、お二人が大切にしていたカラリア様は私が責任をもってお守りいたします。」


 お父さんとお母さんは抱き合いながら涙を流していた。



「ありがとうお母さん、お父さん。そして皆もこれまでありがとう」

「えぇ……」「無事でいろよっ」

「カラリア、約束破るんじゃないわよ」「また帰ってこい」

「これまでありがとうカラリア!!」

「お前はこの町の誇りだ!!」

「元気にいるんだよ」


「うんっ!!!!!」

 私は大きく手を振っていると王子は扉をしめ深く礼をすると馬車が動き出す。


 あっという間に景色が変わり、気づくと町の外に出ていた。

「……っ」

「カラリア、やはり寂しいですか」


 涙が止まらなく、視界がぼやける私に王子は手で拭ってくれていた。


「すみません。」

「こちらこそ貴方に酷な選択をさせてしまったと思っています。しかし、貴方はここにいるべきではない。貴方はもっと輝ける場所があると感じたのです」


「それはありがとうございます。」

 セルディアには少しだけ行きたいと思ったことがある。でも、本当は



 ……ううん。ここまで来たらセルディアで生きるしかない。


「それにしてもやはり貴方は町から愛されている」

「はい。ありがたいほどに」


「もしかしたらバスプラの皆さんに殺されてしまうかもと思いながら来ましたので」

「流石にそれはないと思いますよ」


 王子の悪い噂は聞かないし、こんなに綺麗な人を殺そうとはしないだろう。



「セルディアについたら、少し手伝ってもらいたいことがあります。」

「……?いいですけど、ちなみに内容は?」


「父上への説得です」

ん?


「あの、もしかしてライバ王子。説得もなしにこんなことしたんですか?」

 私は申し訳なさそうな王子を引くような目で見ていた。

 もしかして、セルディアまで行って追い出されるとかある?


 ここまで来たのに?あんなに盛大に送って貰ったのに?


「大丈夫ですよ。きっとカラリアの力を見れば認めてくれるはずです」

「……」


 なんとかなると言いたそうだけど、大丈夫かなこの人。

 まだまだ困難はありそうだ。説得か。


 もう帰りたいかもしれない。

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