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悪徳令嬢に仕立てあげられた少女は、この世界に抗い生きる。  作者: 大井 芽茜


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婚約?

 竜はゆっくりと落ちていく。甲高い鳴き声が響き終わると全てが終わっていた。


「勝った!! 勝った!!!!!」

「ありがとう勇敢な少女達!!!」


 町中、そして武器を持った男の叫び声が聞こえてくる。



「うちはなにもしてないわ。ただ魔力増加を図っただけよ」

「そのせいで俺が死にかけたんだけどな。ま、カラリアのおかげだ。あの竜を作ってしまうなんて」



 少しずつ太陽が昇っていく。


 私達はセルディアも隣国の力も借りずに魔風獣との戦いに勝ってしまったようだ。

 たった1つ奇跡のような存在によって、



「わざわざライバ王子に足を運んで頂けたのにも関わらず、なにも出来ないことをお許しください」


「いやそれは気にしなくても構いません。私はバスプラという町に見識をもつために来たのもありますから。それにしても……本当に貴方達だけで対処したのですか。」


「はい、若き手に助けて頂きました。」

 アルの後ろでは歓声が湧きお祭り騒ぎだった。



「こうして会うのは久しぶりですなライバ王子。どうやら私達の手は必要なかったようですな。」

「隣国ラマルスのアバル陛下ではありませんか。お久しぶりです。しかし、私達の出番はないようです」


 そう二人が微笑み合う一方で、軍は混乱するようにザワザワとしていた。


「魔風獣にこんな小さな町で勝つなんてありえないだろう」

「俺達だって骨が折れるくらいだって言うのに……」



「ところで、アル代表あの竜はなんだったのですか。」

「あぁ私も見ました。あれは伝承でみたことがある竜そのものです」


「それが」




「ワンッ」

「痛かったのに私のためにありがとう」

 私は、そんなことになっている場も知らずワンコロに乗り例の獣の行方を追っていた。


「あっ」

 ワンコロが立ち止まると、その場には大きな水たまりが広がっていた。



「……」

 魔力を使っても形はもう元には戻らない。

 いつもは消える前に力を出来れば、ワンコロみたいになるのに。



「鳥さんとか、私が作ったのとは桁違いの大きさの広さの水溜り。あの獣で合ってるよね?」

「……わん」

 私の前には手を広げても小さいと感じられる約50メートルはありそうな水だけだ。


「とりあえず周り歩いて帰ろっか」

「わん」

 ワンコロをなでながら歩いていると


「ワンッ」

「ちょっとどこいくの?」

 不意に鳴くと木陰の中に入っていく。



「――っ!」

「ガホッ、ゴホッ」

「クーーん」


 ワンコロが見るほうを見ると真っ黒に汚れた獣が横たわっていた。片目は魔風獣のように赤くなって、もう片方の目は黄色になっている。



「失礼するわね。」

「グッ……」

 ワンコロのような見た目をしているが、無理やり翼が体を突き刺すように生えている。


「これは魔風獣になりかけ?でも、こんなこと初めて見たわ。よしよし、よく耐えたわね」

 その獣をなでると、牙をしまい黙っていた。



「回復って効くかしら。」

 手に魔力を込めると、光る水を作り出す。


「これで少しはよくなるはずよ」

「グシャ……」

 獣は静かに舐めて暫く目をつぶった後にスっと立ち上がった。



「待って、まだ大人しくした方がいいわよ。着いてくれば調べてくれる場所もあるわ!!」

「……リ…………ぅ」

 獣は黒い光を放ち、何かを伝えるように鳴くと話しも聞かず足を引きずり茂みに入る。



「待っ……」


 ガサッ

「いた!」

「――!」


 急に、背後から草むらを掻き分ける音が聞こえ振りむくと知らない男が立っている。

「だれっ……え」

「君がカラリアさんかな。」


 この人見たことがある。確か、この国の王子、ライバ王子!?

 なんでこんなところに王子が?


「は、はい」

「ウウウウウ!!」

 威嚇するワンコロも目にもせず王子は私に手を差し伸べた。


「君の話を聞いて是非会いたいと思ったんだ。私はライバ。」

「もちろん知っています。あっ、お目にかかれて光栄です」


 手を握ろうとしたが、自分の手が汚れていることに気づき手の平を見せた。



「ふふっ、その手を見るにかなり無理をされたようですね。立ち話もなんですし戻りませんか?皆さんも待っていますよ」

「そうですね」


 やっぱり王子ということあって顔が整っている。金髪の髪に綺麗な紫色の目、そして、純金の衣装。私はとんでもない人と話しているようだ。


「ワンコロ、また後でね」

「ウ……わん」

 ワンコロは不満そうにしながらも水に溶けていった。


「その力は初めてみました。どんなことができるんですか?」

「えーと、水からいろんなものを作るのが得意です。あと回復と……心を宿すのを」


「そんなことが!?」

 王子は目を丸くしながら手の平を見つめていた。


 小さい丸の水に力をいれると、ピョンピョンと跳ねる。



「なんと素晴らしい」

 王子は跳ねる水を興味津々で見つめていた。

 気難しいイメージがあったけど話しやすくて良い人なのかもしれない。



「あのカラリア様。お願いがあります。」

「はい。なんでしょうか」


 そう言うと、王子は私の前に座り手を差し伸べた。


「私と婚約してください」

「……ん!?」


「カラリアさんの町に対する想い、そしてその多彩な技術に惹かれたのです。どうか私と婚約を」

「そんなっ、私なんてそこらへんの人なんですよっ」



「あいにくそうとはなりませんよ。小さな町を貴方様の力で守り抜いたというのは、魔風獣という存在を知っているものは皆が驚くことです。きっと数日後には貴方様に婚約を申し込む者が殺到するでしょう。」


「そんなことに!?それに救ったのは私だけじゃないですし」



「もちろん他の方にもいくとは思いますが、カラリアさんの魔力に惹かれない者はいません」


 王子は引く様子を見せない。



「なにより私がいれば誰も貴方に婚約をしようとするものはいません。私と共にセルディアへ行き、この町の方だけでなくこの国全体を守る力になってほしいのです。私自身、婚約相手は貴方しかいないと見ました。その美しい透き通った魔力。それは心の綺麗なものしかできません」


 綺麗?こんなボロボロなのに?

 それにこの国を守るなんて


「この国を守るために心の綺麗な貴方と共に歩みたいのです。貴方の願いなら叶える限りは叶えます。バスプラを第2の町として栄えさせることもできます。どうか、婚約を」


 どうしよう。

 こんな真剣な王子の目を見て立場的にも断れるわけがない。


 それに、この人に頼めばこの町がもっと明るくなる。お父さんの負担も少なくなるし。また魔風獣がきても守ってくれる。



「分かりました」


 私はフワフワした感覚になりながら王子の手に触れた。



「ありがとうカラリア。」

 王子は汚れた手を気にすることなく握ってくれた。


 これで本当によかったのだろうか。




『……』


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