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悪徳令嬢に仕立てあげられた少女は、この世界に抗い生きる。  作者: 大井 芽茜


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真相

スピリに裏切られてしてもない罪をつけられ、処刑寸前になった私。

そんな時、ウェル達に助けられた。

必要なものも揃ったし無実を証明しよう。

「あれはっ」

 王子とベルの戦いは、ほぼ互角ながら王子が押していた。少し離れていた町にすら被害が及ぶ戦いはカラリアを乗せた獣の姿を見て止まる。



「お前達はセルディアに戻れ! 王に何かあってからは遅いぞっ」

 王子は結界を破ろうとしていた軍に指示を送りセルディアに向かわせ、前を向き直した。


「兄さん」

「あぁ。やったようだね」

 3人は2人の姿を見て安心するように息を吐いた。



「はぁ、はぁ……やったぞ。カラリア」

「ベル。まだやりますか」


「俺はお前の足止めという役目を終えた。俺が今からすることはカラリアが無実を証明するから見に行かせるだけだ。それともその前に俺を殺すか?」



 ベルはそう言いながらも王子に圧をかける。

「いえ、彼女の言葉を聞いてから考えます。」



 王子は剣をしまい1人で歩いていった。

「考えてみれば。ベル、前より強くなりましたね。」


「俺はお前より守りたいものがある。その意思が強かっただけだ。あいつは無実だ。」


「……なるほど」

 王子は焼き焦げた手袋を捨て走って行く。




 ――ウェルと飛行中。

「この瓶もらったけど、飲んだ方がいいかな。」

「飲んだらどうなるんだ」



「死にかける。あっでも、魔力がとんでもない事になる」

 瓶は前より黒さが増した液体が入っていた。エルマはあの後、死骸を集めて研究していたらしく、特上の物だと誇っている。



「これから何があるか分からない。その時に備えて飲むのも手だろう」

「……飲むか」

 瓶を開けると匂いが前より強烈だった。ウェルも心配そうにわたしをみている。



 でも

「んっ……!」



「どうだ?」

「…………まっずっ!」

 私は吐きたい気持ちを抑えながら、ゴクッと飲んだ。手足がヒリヒリする。


 魔力使えるかな。

 私は後方に向けて手を向け水を呼び起こす。



 ……ゴーッ!!!

「――っ!?」

 少しだけ力を入れたはずなのに滝のようにでてくる。これは成功品だ。



「大丈夫! めっちゃ調子いい。」

「それは良かった。で、どう乗り込む?」



「城ごと行きましょう。城ごと」

「突っ込めと?」


「えぇ!」

 大きな獣は城を大きく突き破り王室に乗り込むと雄叫びをあげる。声は城どころか全体に広がった。



 その瞬間、王は飛び上がり兵士達が慌ててやってくる。


「お前達はセルディアを潰す気か!!!」

 ごもっともです。


 ここまで破壊できるとは思わず、半分くらい衝撃で吹っ飛んでしまった。



 まあ、あ、あっちが悪いし。あ、後で謝れば許してくれるはず。ウェルは獣の姿のまま王を睨みつけていた。



「私は、騙されて濡れ衣着させられて、仕舞には婚約破棄に追放とか。このくらいさせてください。」


「で、目的はなんじゃ?」

「私が言う人を呼んできてください。自分の無実を証明したいんです」



「ふむ。まぁ、ライバが勝手に色々していたし、無実を証明する機会を君たち主体でやってもいいじゃろう。呼んでこい。」

 王は兵士に命令し令嬢達を呼びに行く。


「お父様っ!」

 そして、タイミングよくライバ王子が息を荒らげながら現れた。


「今から彼女の話を再度聞く。スピリ嬢を呼んでこい。」

「……はい。」

 王子は言うことをすんなりと聞き探しに行った。



 数時間後、全員が揃い重苦しい空気が流れた。



「もう見たくもないです」

「スピリ、少し時間をください」

 スピリは目を逸らせて王子に擦り寄っていた。ウェルに頼めば1発で終わりそうだけど、社会的に終わらせないと意味ないよね。



「ガベット、話を始めろ」

 ウェルは読み取ったのか人の姿に戻る。これは頼んでもやってくれないだろう。


 気を取り直して、よし。



「まずは令嬢達についてです。彼女達は私に命令されたと言っていました。それが1番大きいのでは無いでしょうか。しかし、」

 私は無言の令嬢達に魔創石を投げると、黒い魔素が姿を現し吸い込まれ、魔創石が真っ黒になってしまった。



「これは」

「細工した魔素だと。本来は光を扱うものの魔素は白です。最初のパフォーマンス時にスピリ嬢は何の力も使わずに木を完全修復したと感じました。」



「はっ私はなにを!?」

「カラリア嬢、これはなんですか?」

 令嬢達は戸惑って辺りを見ていた。



「しかし、それは周りが言っていたからそうだと思い込んだだけです。貴方の魔法は、私に似た創造魔法か偽装魔法では?」

「……」



 スピリは黙り込んでいるので、私はスピリから貰った「ふせん」を取り出した。


「これは彼女から貰ったものです。彼女の本に沢山挟んでいるので彼女の手元を後で探してください。ウェル」

「あぁ」

 ウェルが手をかざすとただの紙と光に別れ光が消えていった。


「彼の力は魔素を分離することが出来ます。そして、令嬢達の魔素を吸った石に」

「待ってっ」

 ウェルはスピリの声を聞かずに手を触れると、同じように光が現れ白い魔素が飛び散り、黒い泥のようなものが下に落ちると元の石の色になった。



「では、もう一度。皆さん私は何か命令したことはありますか?」

「いえ、ありませんわ」

「どうしましたの?」

「そういえば、スピリ様に会ってから記憶が」

 「湖でスピリ様がいたのを見て慌てて助けに行ったら……」



「そういう事です。」

 その瞬間、私は後ずさりをするスピリの足下に水をつくり引き込ませた。



「どうですか。王子。」

「確かに。そのふせんという物を私もスピリ様から貰いました。令嬢の話も変わっていて。……私の勘違いでした。カラリア、私は」

 王子の言葉を聞いて、スピリは言葉を失っていた。



「ふむ。なら追放や婚約破棄の話は」

「あと婚約の話しですが、私から願い下げです。だって人殺しですから」


「ね、エル王子」

「あぁ。」

 ウェルは自分の髪の毛を片手で後ろに束ねた。



「……その姿は」

 王は目を疑っていた。


「エル・ウルイと言えば分かるか」

「ウルイの国の第3王子。バスプラに風魔獣が襲われる前に、貴方が消えた事が機密情報として伝わっていました。」


「生きていらしたのですか」

「あいにく、もう少しで本当に忘れるところだった。」

 ウェルは獣のような睨みを王子に効かせた。王子はお化けをみるかのように尻もちをつく。



「セルディアの国王、この国にも魔風獣の研究をしている組織があるな。魔素を取り込み過ぎると人間も同じようになると聞かなかったか?」

「それは最近分かった事で……」



 ウェルは片目を見せた。

「俺が最後に会ったのはライバだ。その時、俺は剣を刺された後、様々な魔素を無理やり入れられてこの通りだ。」


 ライバ王子の剣技は確かに何種族もの魔力を扱っている。……そういえば、隣国の人がバスプラに来てたのも王子に会うためだったとか?



「実験台のデータにあるだろ?俺の名前を伏せた者が。」

 王は担当の者を呼ぶと焦ったようにうなづき、王の顔は真っ青になった。



「俺が居なくなった事で、バスプラの護衛どころじゃなかった。隣国のバスプラに捨てられたなんて分かるはずもない」



「お前の目的は遠く離れた森に、弱った俺をおき獣達に襲わせて隠蔽する計画だった。」

 王子は黙って剣を握りしめていた。


「しかし、弱った彼を見つけた私が保護しました」



「まさか竜が暴れるとは想わなかったんだ。バスプラだからと。」

 そういうと王子は後ろに下がっていく。



「仕方ないだろ! この魔力主義の国を正す必要があったのだ! 私は、ラナとしか婚約する気は無かった! だから、認めない世の中を荒らし人の価値を再度教える必要があったのだ」

 魔風獣をバスプラからセルディアまで襲わせるつもりだったってこと?


「バスプラの町からセルディアまでの人々や町が死んで滅んでもですか!?」



「ああ! 私は小さい頃からずっとラナを愛していた!! それをただ魔力のある無しで切捨てられる世界に絶望して壊したかった。諦めたと思った時にカラリアに会いました。……もし呼べばラナを傍に置けると考えて」

「……」

 王は凍りつき、王子は泣き叫ぶ。その光景のウェルは小さくため息をついた。



「この事実が分かれば、ウルイとこの国が戦争に近い形になるだろう。どっちが勝つかは分かっているはずだ。」


「せ、戦争する事もありません。貴方をこんな目に合わせた責任を取り、この国を渡します。罰するのも御自由に」

 王は深く頭を下げ、王子も膝を崩しながらも頭を下げていた。



「お前のものだけじゃないだろう。まだ三男の俺でよかったと思え。」


「ウェル?それだけでいいの」

「これから考える。親にも会ってからな。この姿じゃ信じてくれるかも怪しいが。」



「……本当に申し訳ない」

 王はより深く頭を下げるが、ウェルは何も言わなかった。



「これで終わりだ。行くぞガベット」

「えぇ。」

 私達は2人の様子を背中に立ち去ろうとした。無実とウェルの目的も達成したけど、これからどうしようかな。



 ――その時

「まぁ、やっぱり変にシナリオ変えるとこうなるのよね」

 スピリが沈黙を破るように声を出した。

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