想い
平凡に学校暮らしをしていると、友達のスピリに裏切られ、王子にも信じて貰えずに檻に入れられてしまった。
無実を証明するために、処刑のタイミングを狙い作戦を開始する
「ほ、本当に私でいいんでしょうか」
「はい。貴方を守れなかった償いをさせてください。それに貴方のような光の魔法を使える者は民に愛されます」
スピリは綺麗なドレスを着て、王子と花に囲まれながら紅茶を飲んでいた。
「皆が喜んでくれるなら素直に嬉しいです。……あの、カラリア様はどうなったのですか?」
「大丈夫です。もうあの方と会うことはないですから忘れてください。」
「はい!」
彼女が微笑んだその時、
「王子!!!」
焦りを見せながら、使いのレイが王子の耳に声をいれた。
「なんだと?逃げた?」
「……っ。」
「ウラサアアアアアア!!!」
真上から現れた獣は辺りを散らし、鎖を引きちぎった。辺り1面に砂が巻う中でウェルは私を掴んで飛び上がった。
「待て!!」
甲高い声が聞こえたが気にしていられない。
「1つバスプラでやりたいことがある。あの場所なら何か掴める気がするんだ。」
「何を掴むの?」
「指輪を拾ったのはあの森だ。あの石がもっと大きければある程度離れていても令嬢にかけられた魔法が解ける」
魔法?確かにいつもと違っていたけど。
「いいか?」
「え、ええ。」
とりあえず、皆が無事なのか確認しないといけない。でも、バスプラに行く事で危険になるかもしれないという気持ちがあった。
それでも、やりたいことがあるなら協力するしかない。
「そこにパンがあるから食べるといい」
「本当だ。ありがとう」
しばらく海を大きな翼で渡りながら、私も万全の状態になり余裕が出てきた。不意に暖かいウェルの背中をみて涙があふれながら強く背中を掴んでいた。
「泣くな。まだ終わってない」
「分かってるけど。嬉しくて、もうずっとあの中だと思ってた」
ウェルの姿に面影はなく、羽に角が生えた狼のような獣は私を見て笑っていた。
「飛ばすぞ」
「うん。」
ずっと帰りたかった町が少しづつ見えてくる。町に光が当たり希望のように見えた。
すぐに飛び降り、町に帰ると皆が悲しそうに私の家に何かを持って行く。
「皆、何しているの」
「うっ……う、、何って分からないのか?カラリアが……っえ?」
おじさんは泣くのを止めて目を丸くしていた。
「カラリアなのか!!」
「……カラリア?」
「無事だったのかい!? 死んだって」
私の家に向かう人達が足を止め、一斉に私に向かって詰め寄ってくる。
「あの待ってください。」
このままじゃ動けない。
「皆待て! 何か事情があるんだろ」
「国から逃げてきたんでしょ?」
私に流れる人混みをシグルとエルワが止めた。後ろにはお母さんとお父さんが涙をボロボロと流しながら抱き合っている。
「そうなの。少しだけでいいから時間がほしい。」
「わかった。聞いたな?おそらく国から人が来るかもしれねえ! 俺達でカラリアを守るぞ!!!!」
「「……おおおおう!!」」
シグルの命令を聞き一目散に人が散っている。皆、私のために抗うつもりなんだ。
このバスプラを守るためにも無実を証明しよう。
「ガベット、時間がない。」
ウェルは人混みをかき分けると、手を引き森に向かう。
「カラリアーー! 貴方なら何とかなるわ!」
「お前のためなら命くらい捨ててやる! だから、好きなようにしろ!」
家族の叫びに手を挙げて反応した。今は話す時間もない。国が追ってくるはずだ。
皆が傷つく前に何かしなきゃ。
私達は森に足を踏み入れてしゃがんだ。
「力を貸してくれ。もう少しで何か思い出せそうなんだ。」
ウェルは指輪を外し私は手を握った。
傷ついた記憶を治して。
――っ国が来たぞ!
何か言っているけど聞こえない。今は
「カラリアッ」
「……っ」
焦りながら叫ぶ声に私は意識を戻した。気がつくと私達の握っていた手から見たことない虹色の光が見えた。
その光を見ることなく、ウェルは上空に飛んでいた飛行艇をプロペラを分解させ海に落とす。
「すまないお前を守りたくて。この力を……ん?」
ウェルは虹の光を見た途端に、何かに気づき咄嗟に私を引っ張って奥に入っていく。
「カラリア、魔素が強い場所は何処だ」
「貴方が前にいた場所が1番強い」
言った通り、初めて会った場所に連れて行ってくれた。ボロボロの風魔獣になりそうだったあの子がウェルだったなんて。
「……思い出した。お前に会った時、王子の存在に気づいた俺はお前を助けたくて魔力を使おうとしたんだ。上手く出来なかったがな。」
ウェルは手を伸ばした。
「俺の力は壊し、お前は癒しすらも創り出す。この相反する力を合わせることでまた何かが起きるかもしれない」
「分かった。信じるから」
私もウェルへと手を伸ばした。この地なら魔力は十分にある。
「「――――――!!」」
魔素を崩壊させる力と、魔素から創りだす創造の力。
ぶつかり会うことで創造と破壊がぶつかった衝撃に反応するように魔素が沢山集まってくる。
最後の鍵は魔素が荒れた地。魔素が沢山ある場所なら何倍もの力が出る。
――バスプラ外
「なんだこれは!」
「速く通せ!!」
町にはとんでもない数の兵士が押し寄せていた。
「……」
「兄さん」
ルービリは魔道具を使い、魔法に対する障壁を合わせた物理的なもの全てに対する結界を張り巡らしていた。
「魔工学は立場が弱い人間を平等へ導く力がある。だから弱き人のために使うのは間違っていない。このままいけば町の人が死ぬのは分かりきっているからね。」
「でも、お兄さんが」
「彼女が無実ならこれも横暴だ。信じてるんだろ?」
「それは」
その時にバチッと切り裂く音がした。
「やっぱり来るよね」
王子が剣を結界に突き刺し破壊する。光がバチバチと鳴り稲妻のように纏う剣を見て2人は驚いていた。
「国の妨害とはどうなるか分かっていますよね」
「分かっているけど、僕は納得出来なくて。可愛い妹の居場所をくれたのは感謝しているんですが」
「……」
「その場所を壊したのは誰ですか」
王子はルービリに剣を向けた。
「あいにく僕は剣の相手が苦手でね。」
ルービリはすぐに後ろの結界を元に戻し、王子はすぐ壊そうと剣を振り上げた。
「だから、お前の相手は俺だ」
「……ッ」
ベルが放った炎を王子は瞬時に反応する。
「ベル!? 邪魔をしないでください」
「それはお前だ。カラリアの邪魔はさせない。するなら俺が相手だ。」
「やっぱり貴方とは気が合いませんね」
ベルは王子に刃を向けた途端、一斉に走り出し炎と稲妻の攻防が始まった。
「はあアアアアアアアアアアアアアアッ」
「グッッッッッッッッッ」
荒れ狂う地に風は乱れ森林は消えていく。獣達はその様子を怯えるように遠くから見ていた。
形は、想いは1つになっていく。
あの時、助けたいと願った私と、助けようとしてくれたウェルのように。
灰色の光りが大きく広がり、魔素を束ねながら収束していく。
「「―――!」」
光が消えると私達の間には大きな石があった。 指輪と一緒だ。
「やったやった!!!」
「あぁ!!!」
私達は喜び抱き合った。ウェルの指輪と全く同じ色を何度も確認する。
「魔鉱石に似てるけど、全然中身が違うし創ったから魔創石ってどう?」
「そうしよう。じゃあすぐに令嬢の元に行くぞ。まだ終わっていないからな」
「ええ!」
すぐにウェルは王子達に見えるように低い位置からセルディアに向かっていく。
「さあ、あの令嬢と王子にガツンと言ってやるのよ!! 私と貴方達の反逆開始よ!!!」
「ウリュウアアアアアア!!!」




