僅かな希望
学校で平凡に暮らしていたある日、友達のスピリに裏切られ国に捕まってしまう。
無実だと必死に訴える中、学校の仲間が現れる。
朦朧とした意識の中、気がつくと目の前にはベルが必死に呼びかけていた。
「ベ、、ル、様」
「カラリア様!!」
「 ガベットさん!!」
後ろには、ラナとルービリも来ている。
「話しは聞いた。お前は本当にやったのか」
私はただ無気力なまま、それだけは違うと首を左右に振った。
「くそっ。よりにもよって学校外の組織呼びやがって。まあ、お前がまだ生きてて良かった」
ベルは素のような態度で私が生きていた事に喜んでいた。
「安心しました。でも、こんなに痩せてしまって」
「ご飯は僕が持ってきた。ちゃんと食べるんだよ」
ルービリは暖かそうなご飯を置き、ラナは泣きそうになりながら檻にもたれていた。
「いいかカラリア。お前には恩がある。俺の嫁になれば、もみ消す事ができる」
「……それは」
「余計な事言わないでくれるかな?彼女混乱してるでしょ」
予定外だったのか、ルービリがイラつきながらも笑顔で訂正した。
「本命の案だ。もうすぐウェルが来るから話を聞くんだ。その目的を達成するために俺が守ってやる」
バスプラに行くって……
「逃げるって事ですか」
「はい。ざっくり1ヶ月後に、婚約発表と共に王家継承の儀式がありますので狙うなら忙しい今でしょう。しっかり荷物も持っていますから」
「でも」
そんな事をしたらラナや皆が。ただでさえ、ラナは魔力が無くて。
「大丈夫です。ルービリ兄さんと小さい店でも営みます」
「妹のために頑張ってくれたのは僕が一番分かっている。僕は絶対に嘘だと信じてるから助ける」
「ははっ……変に愛されちゃったな」
でも、迷惑をかけたら。助けに来てくれてこんなに言葉をかけてくれたのはうれしいけど。
「時間だね。もう少しだから頑張るんだよ」
「待ってますから」
「しっかりしろ。お前は俺の恩人だ。絶対に死なせない」
「……はい。」
とりあえず、ウェルが来るまで頑張らなきゃ。
毎日毎日、ただウェルが来るのを待っていた。絶対に負けるもんかって首を振る。おそらく婚約発表の1ヶ月前丁度に彼が私の前に現れた。
「ガベット」
「――っ」
消えかけそうな意識の中、ウェルが立っている事に気づき涙が流れた。
「悪い。タイミングを測っていた。」
「……大丈夫です。」
ウェルはそうか。と頷き私の目線に合わせた。
「前の話の続きだ。この目に見覚えはあるな。」
「うん。……元気になっていたんだね。」
「お前のおかげだ。もしお前が居なければ俺は確実に消されていた。」
ウェルの片目は獣のような瞳になっていても、しっかり私の目を見ていた。
「消されるって誰に?」
「……王子だ」
「えっ」
ウェルは淡々に答え片目を布で覆った。
「あまり長く置いていると、魔力のコントロールが出来なくてな。呪われた力といい不自由になったものだ。」
「それは」
「こんな時に話すのはなんだが、俺は隣国の王子だったはずなんだ。もう記憶がボロボロだから曖昧だが。」
ウェルが隣国の王子?
でも、そんな事起きたらこっちの国にだって噂が広まるはずじゃないの?
もう聞く気力がなかった。あと、一言二言話すしか私には力がない。
「明日、お前に審判が下る。俺はそのタイミングでこの檻を砕きお前と逃げる。その後に少しお前に頼みたい事があるからバスプラで手伝ってもらう。いいな?」
「……信じていいの?」
リスクが大きいのに。
「あぁ。信じろ。」
ウェルは力強くうなづいた。でも、皆無実だって信じてくれているから……そんな事をしてくれるんだ。
なら、賭けてみようかな。どちらにしろ失敗したら死ぬんだ。
「わかった。」
――次の日。ついに私に審判の時がきた。
国はあまり見せたくないのか外にでる事無く檻のまま始まる。
「カラリア・ガベット。お前は平等という環境をあらし、一人の女性を苦しみさせ、なにより王子の婚約者でありながら、その節度を持たなかった。」
「よって、ライバ王子の婚約破棄。この国からの追放を言い渡す」
もう終わるなら。ここで終わってしまうなら。悪徳令嬢だがなんがかしらないけど。
無実だと抗うしかない。
「ウェル!!」
私は残りの気力全てを振り絞り声をあげた。その言葉に応えるように
バギッ
叫び声と共に、檻をいとも簡単に壊す獣が私の前に姿を現した。




