ベルの誘い
王子に誘われ学校に来た私カラリア。
ある日、友達のスピリが令嬢達に嫌がらせをされているところを見て怒ったけど、彼女の表情が暗くなってしまった。
そして、とある授業で王子とスピリが仲良くするのを見てしまって……
「ねぇスピリ。帰ろー」
「ごめんなさいカラリア様。今日は少し用事がありまして。先に帰ってください」
そっか。もし帰れたら途中にスピリの悩みを聞かせてもらおうと思ってたんだけどな。
「じゃあ気をつけてね。」
「はい」
スピリに手を振り帰り道を歩いていく。前まではスピリと一緒だったのに、今日も一人だな。
「おい」
「……っ!」
驚いて後ろに振り向くとベルが不機嫌そうに立っていた。
「ごきげんようベル様。どうしたのですか?」
「いや、前のお礼をしたくてお前が食べたいものあったら買ってやろうと」
なんでお礼なのに上から目線なんだろう?でも、ここはうなづいた方がベルの機嫌がいいよね。
「分かりました。では近場のケーキが食べたいです」
「お前がどうしてもというなら買ってやる」
「いえ……そこまででは」
「いいからついてこい」
ベルはそっぽを向くように歩いていく。これが彼なりの接し方なのかもしれない。周りにみられたくないのか早歩きをしている。
「少し離れた方がいいですか?」
「そういう訳じゃ……あぁもう。」
彼はよく分からない動作をしながらも、ケーキ屋に連れていってくれた。
「なにがいいんだ」
「ではあのフルーツが沢山乗ったものを」
「フルーツケーキな。ちょっと待ってろ。」
ベルは私を椅子に座らせるとフルーツケーキとコーヒーを持ってきてくれた。
「ほら食え」
「頂きます!!」
パクッ
「んー美味しい!!」
何回かたべたことあるけど、店で食べるケーキは城で食べるものと違う特別な味がする。
「そんなに食いつくなよ」
「あっごめんなさ」
「怒ってない。いいから食え」
ぶっきらぼうだけど私が食べる様子を嬉しそうに見ていた。
ベルは苺が沢山乗ったタルトを食べていた。美味しそうだな。
「ん、食べるか」
「いいんですか?」
「あぁ、俺はいつでも食える」
私は苺が沢山乗った部分を取り、1口食べた。甘酸っぱくて美味しい!!
「ちゃんと言って無かったから、お前のおかげで退学させられなかった。お前が王子や俺に言ってくれたおかげだ。本当に、その……ありがとう。」
「思ったことを言っただけです。そんなに感謝されても困ります」
ベルはそれから酷い話しは聞かないし、きっとあの件から改心してくれたんだと思う。
「まだお礼するから」
「いえ、申し訳ないので」
「いいから。貴族のご厚意には甘えるもんだ」
「では……ありがたく」
そう言うと、ベルは分かればいいんだよ。と呟いた。
「ふふっ」
「なんだよ」
「いえ、少しかわいいらしいなって」
「はぁ!?」
ベルのタルトもまた1口もらって食べ、学校の話などをしてゆっくりとお茶会をした。たまに口を滑らせて、王子の事を話しそうになってしまうから危なかったけど。
「ここでいいのか?」
「はい。ありがとうございました。」
私はベルに送迎場所まで送ってもらった。
今から呼べばいいんだよね。と思いながら少し歩くとラナが当たり前のように待っていた。
「まだ呼んでないよ」
「前に言いました。遠くで見ていると」
あっ確かに。たまたま今日見られてたのか。……もしかして、お兄さんの近くにいた?
「あのカラリア様」
「なんでしょう?」
「なぜベル様とデートを」
「デート? 庭を歩いてないよ?」
その瞬間、ラナの顔が凍った。
「まさか庭を歩くことだけがデートだと?」
「そうじゃないの?」
その後、ラナからデートについて教わったが、よく分からなかった。
とりあえず、2人であまりくっついて歩くなと言われた。そして、友達作りも大事だからとラナは王子に言わないでくれた。
友達とデートって難しいな。
「あっでも、また連れて行ってもらうと約束してしまいました。貴族の好意は聞くもんだって。」
「あーあのひと、そうきましたか。そんなに構ってほしいんですね」
どういうこと?
「なんで分からないんですか」
デートはよく分からないけど、今日の王子とスピリすごく楽しそうでモヤモヤする。
「カラリア様、今日の2人を見てモヤモヤしているのですか?」
「なんで分かるの!?」
「貴方は分かりやすいので分かりますよ。それに貴方と同じ状況なら私も焦るかもしれません」
ラナはそうですね。と考えたが、すぐ諦めたのか
「直で言いましょう。直で」
「えっ?」
「私、不安なの。誰よあの女! って言えばいいんですよ。」
「あの女の人は私の友達スピリだよ。」
「そうではなく、私は貴方の婚約者だよね?と確認するんです。すると、王子はハッとするか、妬いてくれてる!?って感動します」
なるほど。直で言ってみるか。
ラナが言うんだから、きっと効果はあるよね。
――夜
「どうしましたか?カラリア」
「私……本当に婚約者ですか?」
「はい。どうしたんですかカラリア?」
私はスピリとの関係を軽く尋ねてみた。
「あぁなるほど。あれは本当にただ教えていただけですよ」
「そうですか?」
王子は私の顔にふれて口を近づける。
――!
「これで分かったでしょ?」
「あっ、はい」
「ふふっ」
王子は顔を真っ赤にさせた私を見て微笑んでいる。
「あっそういえば、」
「どうしましたか?」
「いえ……実は、ある方が貴方の取り巻きにいじめられていると言っていたんです。まあ嘘だと思いますが。気をつけてくださいね。」
え?
「取り巻きってなんですか?私の知り合いはスピリくらいですよ?」
「分かっています。あくまで確認と、利用されないようにとの忠告です。私は貴方を信頼しているのですから。……でも弁当を拾って食べるのはやめてくださいね?」
「……はい」
見てたのかあ。




