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悪徳令嬢に仕立てあげられた少女は、この世界に抗い生きる。  作者: 大井 芽茜


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魔法工学

 ――次の日


「おはようスピリ!!」

「あっ、おはようございますカラリア様。」

 いつものスピリだけどなにか引っかかるよーな?少し眉が下がってるように見える気が。



「なんかいつもと違う気がする。大丈夫?」

「いえ、お気になさらないでください。私はいつも通り元気ですよ」


「本当?」

「はい。そういえば、今日はカラリア様の分も弁当を持ってきたのです。いかがですか?」

 スピリは美味しそうな匂いのする弁当を2つ取り出した。



「美味しそう!」

「ふふっ、ではまた昼食で会いましょう。」

 そっか。今日から選択授業が入るんだ。



「うん!楽しみにしてるね!」

 スピリの顔は話しているうちにどんどん良くなっていくように見えた。なにか悩みとかあるならちゃんと聞かないと友達として駄目だよね。本当に辛そうだと思ったらすぐに聞かなきゃ。



「では、今日から希望調査による授業を初めていこうと思います。それぞれ、黒板にかいてありますので指定された教室へ向かってください。」

「はーい」



 私はFの2番か。

「カラリア様、ではまた後で」

「うん!!」

 教室には見知らない人ばかりだと思っていたが、ウェルが端っこで座っていた。



「ウェル様おはようございます。」

「おはよう、元気そうだな」

 ウェルは弁当が楽しみで仕方ない私を見て少し笑っていた。



「はい。では皆さん、魔法工学の授業を受けてくださりありがとうございます。僕はこの授業のリーダーであるルービリ・パルデと申します。」

 パルデ……?確かラナもパルデだったような。


「この授業では、先生はあくまでサポートで主体は私達学生で行っています。授業内容は皆さんご存じの通り、この国の人にとって役に立つ道具を使うことです。」

 白衣を着た先生は端で見守っていた。学生が主体なんてあるんだ。



「道具を作る上で、大切なことは3つあります。1つは誰でも使えること。2つめは複雑な操作を必要としないもの。3つ目は色合いなどのデザイン性に気をつけることです。見るだけでなにかワクワクさせるものがグットです。」


 ルービリ・パルデはスラスラと黒板を書いていく。私も必死に書いているとウェルは不思議そうに私のノートをみていた。


「ウェル様、ノートは取らないんですか?」

「必要ない」

 見て覚えられるタイプだろうか?本当に分からないな。この人。



「――っと、基本的にはこれくらいですかね。まずは皆さん自由にアイデアを書いて見ましょう。出来なくてもいいんです。こんなのあったらな。という単純な考えでいいですから」

 ルービリが説明し終わると、周りの先輩達が紙を配ってくれた。1つの机に1人はついてくれているらしい。



「では描いていきましょう」

 白い紙。まずは誰でも魔力を使える道具。あと、お父さんの移動が便利になったらいいな。瞬間移動装置みたいなものとか。あと、農作物が大変だから軽いクワ。あと、獣を追い出してくれるものかな。



「誰でも魔力が使える。か。いいね君」

 振り向くと、ルービリがニコニコとしていた。


「あっガベットって確か。……いもうっ、英雄さんだね。来てくれて嬉しいよ」

「よろしくお願いします」


 ルービリは何かを誤魔化すように笑うと、次はウェルの机にいっていた。

「うん、魔風獣から魔素を吸い取る道具か。確かに困っている人はいそうだね。いいと思う。」


「……」

「っなんかごめんね。」

 ルービリはウェルの視線に逃げるように他の人のアイデアを見て褒めていく。

 流石リーダーと言われるだけはあるな。



「はい。じゃあ今日は終わりです。今回はアイデアだしについての授業でした。一年に一個作る予定だから、他にもいいのはないか?とか今日考えた道具の仕組みを考えてくるときっと授業に役に立つよ。ではこれまで」


 授業が終わり昼食へ行こうとするとルービリが追いかけてける。

「ガベットさん、少しいいかな?」


「いいですけど…」



「流石、カラリア様! 田舎から来たのにもう先輩に目をつけられるなんて流石ですわ」

「聞きました?カラリア様、どんな人でも魔力が使える道具を作るようですよ」

「本当!?そんなの出来たら貴族入りどころじゃありませんわ」



 ルービリに呼ばれ部屋に残っていた。誰もいなくなると彼はふぅと安心しきったのか椅子に倒れ込み、しばらくすると口を開いた。



「君がガベットさんだね。妹から話しは聞いているよ。とても良い人だって。」

「こちらこそ迷惑かけているような」


「ははっ、そういう話しもよく聞くよ」

 やっぱり言ってるんだ。



「仲が良さそうでなにより。でさ、あのアイデアは妹のため?」

「ラナだけでなくて……やっぱり魔力がないと生きずらそうって思いながら生きてきたんです。町の皆が困ってて」


「そっか。」

 ルービリは小さく呟いた後、険しい顔をした。



「でも、やめといた方がいいかもしれないね。だって本当に出来たら偉い人達が消そうとするかもしれない。実際に作った人なんていないし、もし妹が魔力を持ったら君の人生だって」



「それでも創りたいんです。バスプラのような魔力が使えない人のために、貴族として生きずらい人のために」

「……そっか。なら反対はしないよ」

 ルービリは微笑みながら立ち上がった。



「なにか分からないことがあったらいつでも聞いて。僕も妹が生きやすくなるのは嬉しいから。できる限りは応援するよ」

「ありがとうございますっ!!」


 私は礼をして部屋から出て行った。

 とんでもなく心強い人を味方にできたような気持ちになった。


 私が食堂に行くと、スピリの顔が真っ青になり周りに令嬢が集まっていた。

「ごめん! 遅くなっ……」


 スピリの視線を辿るとひっくり帰った弁当箱があった。



「カラリア様っやっと帰ってきましたわ!」

「また教えて頂きたくて」


「待ってください。一体なんの騒ぎですか?」

 私は、そう言ってスピリの前に立った。大体察しがつく。私といるスピリに嫌がらせをしているんだ。



「私によくしてくださるのはありがたいですが、スピリになにかをするのはやめてください」


「私はカラリア様の健康を思って」

「誰もこんな事して欲しいなんて頼んでないです。今日は帰ってください」

 私は令嬢達を追い返しスピリの弁当を拾った。



「ごめんなさい、私のせいで」

「謝らないでくださいカラリア様、こんなものを渡そうとした私が悪いんです。」


 私はひっくりかえった弁当を拾い、綺麗なところだけを食べる事にした。


「あのっ、もう一つありますから。」

「いえ、私のために用意したのはこっちだからこっちを食べる。汚れちゃったのは手ではたいてワンコロにあげてもいい?」


「っありがとうございます」

 スピリは泣きそうになりながら頷いた。



 ――ランチ後の昼休み

「カラリア様、良かったらこれを使ってください。」

「これは?」


 勉強会をしていると、スピリはあるものを渡してくれた。

 沢山の小さな紙が丸い鋼のような物でまとめられている。



「これは暗記メモというんですよ。表に問題を書いて裏返しには……」

 答えが書いている。ペラペラとスピリは唱えながらにめくっていく。



「どうですか?」

「すごい! 是非使わせてもらうね」

 こんな便利なアイテムがあるとは。



「ちなみにこれはどこに売っているの?」

「実は手作りで」

「これを!?」

 こんなアイデアを思いつくなんて。


「凄い!感動! スピリはアイデアの天才なんだね!」

「あ、ありがとうございます」

 スピリは頬を赤くしていた。



「炎を出す」

「うっ……魔素よ、ホビ・サンっ!!」

 昼の授業が始まり、今回は多種の魔力を扱う課題をだされた。水が手から流れながらも、わずかにボッと炎が指から出た。



「やった。」

「流石ですわカラリア様。」

 これで合格と。

 そういえば、スピリはどこに行ったんだろう。



「こうするんですよ」

「はいっ」

「……っ!!」

 いつの間にか、スピリは王子に教えて貰っていた。王子はスピリの手を添えて教えている。



「本当になんなのですか、あの女は」

「ベタベタと!!」

 令嬢達はハンカチを噛みながら二人を見ていた。



「光の魔法を使える方がいなくて中々教われないので、助かりました。」

「いえ、光と炎は似ていますがその分調整が難しいので、なにかあればまた教えますよ」

「はい。」

 なんか二人お似合いだな。

 いやいや、私が婚約者なんだ。しっかりしないと!!



「授業は終わりだ。しっかりと復習するように」

 少しモヤモヤが残りながらも授業は終わった。

 ま、まあ、成績が良ければ婚約を発表するんだから。余裕をもとう。余裕を。

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