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読むと死ぬ手紙

作者: 千子

秋というとメディアも書店もこぞって読書を勧めてくる。

私もたまにはそんな世間の波に乗って読書でもしてみようかと古本屋に足を伸ばしてタイトルを順に見ていく。

なかなか興味を引かれる物はなかったが、それでも何点か選び会計を済ませる。


帰宅し夕食を済ませ一冊目をパラパラと開くと一通の手紙が挟まれていた。

こんなもの、気付かなかった。

封がされているそれを開けてもいいものか。

悩んだが古本屋に売り払い、それを購入した時点でこの手紙の持ち主も私だと言ってもいいだろう。

ハサミで開けて中の手紙を取り出す。

中身は謝罪文だった。


手紙の本文は内容もとっ散らかって要点がよく分からず文字も古く歪で、何度も読み返しようやく理解できる範囲になった。

手紙の主は誰かに何かを謝罪しているようだったが、そこまでしか分からなかった。

内容は分からないが、誠心誠意謝罪していることだけは伝わった。


なんとなく不気味なものを感じて、手紙を封筒に戻して捨てるのも気が引けて机の引き出しに仕舞う。

そのまま購入した本を読み耽り、夜を過ごした。




その日はテレビでホラー映画をやっていた。

とある人形を見たものは、その人形に呪い殺されるというものだった。

三流ホラー映画だったがそこそこ怖く、観終わると忘れるかのように早々に寝ようとした。

そこで思い出した。

映画の中で人形の元には手紙があった。

それは、その人形を託した者が死んでしまうことへの謝罪の手紙だった。

ふと、机の引き出しに仕舞い込んでいた手紙を思い出す。

内容は分からないが、あれも謝罪の手紙だった。

映画につられてか、臆病風に吹かれてか、消した電気をつけて机の引き出しから手紙を取り出す。

相も変わらず内容はとっ散らかって分からない。そこで歪ながらも死という単語を初めて見付けてしまった。

途端に怖くなり、明日はこの手紙の内容をしっかりと調べようと決意した。

翌日から一字一字、古い歪な文字を検討し、内容を整理し、調べること一週間。

大体のことが改めて分かった。

分かりたくないことが分かってしまった。


この手紙を読んだ者は、死ぬのだという。

だからの謝罪なのだろう。

呪いかなにかは分からないが、この手紙は読んだ相手を殺してしまう力がある。


つまりは、読んだ私も死ぬのだろう。

どういう方法で、どうやってかも分からないが、私は死ぬ。

乾いた笑いが出た。

まるで三流ホラーだ。

しかし私は役者ではない。人間だ。

まだ、生きている人間だ。




供養してもらおうと神社に頼みお払いをしてもらった。事情を話し手紙は燃やしてもらった。

神社から帰ると、供養してもらいお払いをしてもらったにも関わらず、いつか訪れる死に怯え部屋から出られなくなっていった。

なんとなくわかるのだ。

私は死ぬ。

あの手紙を読んだから。

そして、あの手紙は燃やされてもまだ存在してどこかにあるのだろうと思えた。

これは縁の力かわからないが、なんとなくわかるのだ。




そして、私は怖くて部屋から出れず餓死して死んだ。



呪いの手紙での死というよりは思い込みの激しい私の死の話かもしれないですし、本当に呪いの手紙の力だったかもしれない私の話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 秋の公式企画から拝読させていただきました。 これは怖いです。 ホラーというよりサイコホラーの感があります。
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