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祝勝会

 教会へ戻ると、みんなが祝福をしてくれた。

 ラキまで普通にお祝いに参加してくれていたのは驚いた。

 ソレーヌは落ちると思っていなかったと言ってお祝いのパンケーキを準備してくれていたらしい。


「おめでとう、テル」

「おめでとうございます」


「もうテルさんのカッコよかったことといったら、みんなにも見させてあげたかったですよ」

「テル良かったわね。念願の夢が叶って」


「ありがとう、母さん」

「さぁて、さっそくみんなで乾杯しましょう」

 ノエルがみんなに飲み物を配ってくれる。


「成人している人はお酒もあるわ」

 ノエルはどこから持ってきたのかお酒を大事そうに抱えていた。


「ノエル……追われている身なのに大丈夫なの?」

「もちろん。私、絶対酔わないので」


「おっノエル姉さん飲めるんですか? それなら俺もいいの持っていますよ」

 ポーロが腰につけていた袋から濃い紫色のワインを1本取り出した。


「これって……本物ですか?」

「もちろんです。これは俺が大事にとっておいた秘蔵のワインの1本です。これだけで小さな小屋を建てられますよ」


「もしかして……天使の涙の幻の30年物ですか?」

 以外にも食いついてきたのはソレーヌだった。


「シスターはお酒禁止じゃないのか?」

「うーん禁止ですね。でも今日だけシスター辞めます」

 かなり調子のいいシスターだ。


「それじゃあカンパーイ!」

 僕はソレーヌが準備してくれたりんごのジュースを飲む。

 生まれて初めて飲んだけど甘くて美味しい。


 こんな美味しいものがあるなんて、知らずに生活していた僕は人生を損していたみたいだ。

 プラスも、少し飲みたそうだったので小さなグラスに移してあげる。


 器用にグラスを持ち上げると美味しそうに一気に飲み干した。

 まるでぷふぁーと言い出しそうないい飲みっぷりだった。


「美味しい?」

 プラスは大きく頷き、今度は僕のコップに魔法で何かをいれてくれた。


「これは?」

 どうやら飲ませたいらしい。

 それはプラスが魔法で作ったりんごジュースだった。


「美味しい!」

 プラスは飲んだ飲み物を魔法でコピーすることができるらしい。

 なんとも便利だ。


 お母さんを始め大人たちはみんな、お酒が進むにつれて、もう収集がつかなくなっていた。僕はそれを見ているだけですごく楽しい。


 こんな夜を迎えられるなんて……。

 しばらく、騒いでいるとプラスもお酒を飲んでしまった。プラスは飲んだお酒も完全コピーしたらしく、魔法で密造酒を大量生産して喜ばれている。


「これは金の匂いがする」

 そんなことを言っていたが、作る度に全員が酒をあけてしまい、まったく残らなかった。


「はぁ、テルのお祝いだか、あいつらが騒ぎたいだけだかわからないな」

 いつのまにやって来たのか、カムロンがグラスにオレンジジュースをいれて僕のところへやってきた。


「仕事は終わったの?」

「とりあえずは予定がたった。それに今日はテルの入団祝いなんだから来ないわけにはいかないだろ?」


「ありがとう。カムロン」

「いいってことよ。でもテル、これからが大変だからな。王国騎士団になるってことは今までとは全然変わる可能性だってあるんだから」


「わかっているよ。でも、僕は母さんを……ここにいるみんなを守りたいんだ」

「そうか。それなら、これ以上は何も言わないが、一つだけ覚えておいてくれ。俺は何があってもお前の味方だし、仮に王国騎士団を敵に回してもお前のために動くからな。何があっても絶対に俺を信じろ」


「どうしたの? 柄にもない」

「ん? 大人の酒にあてられたかもしれないな」

 カムロンが少し恥ずかしそうに頬をかきながら、大人たちが本気ではしゃいでいる方へ視線をそらした。


「お酒の美味しさはわからないけど、でもあぁやって大人になっても騒げる環境があるっていうのはいいことだな」


「本当に僕もそう思うよ。特に母さんなんてずっと一人で僕を育ててくれていたからね。楽しそうに笑っている方が何倍も素敵だね」


 だいの大人たちが年齢も気にせずにバカ騒ぎをしているのを微笑ましく見ていると、壁を通過して白い鳩が教会内に飛び込んで来た。


「カムロン、あれはなに?」

「マジック鳩だな。遠くの仲間に魔法で伝言を飛ばすことができるんだ。なかなか教会関係者が好んで使う魔法だ」

 その鳩は、僕の前にあった椅子に止まる。


「ソレーヌ! 鳩が飛んできたよ!」

「ん? 鳩? あぁどうせ私への文句だから適当に聞いといて」

 そう言ってまたすぐに飲み会へと戻って行った。

 鳩は首を傾げていたが、空中に綺麗な女性が映し出される。


「ソレーヌ! 話を聞きなさい! なんて言ったところであなたはこれを見ていないんでしょうけど。あなたいい加減、定期的に連絡をしなさいよね。みんな心配しているわよ。って今回はそんな話をするつもりではないよ。副大臣のガフィルがボットム内を王国騎士団から逃げている騎士を徹底的に探すって話よ。あなたはすぐにトラブルに巻き込まれるんだから、注意しなさい。今回は運よく聞いてくれることを祈ってるわ」


 どうやらソレーヌは今までもトラブルに巻き込まれてきたらしい。

 ここに来てもさっそくトラブルに巻き込まれていた。しかも、全然たいした理由ではないのに。

 鳩は伝言を伝えると映像が消え、そのまま光の粒となって消えていった。


「ガフィルが動き出そうとしているのか」

「カムロン、ガフィルって人知ってるの?」


「あぁ、昔色々あってね。あいつは絶対に許せない」

「この国の副大臣と揉めるってすごいね」


「まぁ、俺くらいになればな、この国を巻き込んだスケールになるんだよ。テルだってすぐにそうなれるよ。なんて言っても王国騎士団になるわけだからな」


「僕は、できるだけ問題が起こらないで生きていければ嬉しいな」

「まぁ無理だろうな。テルは天性のトラブルメーカーだから」


「ちょっと待って! 僕は自分からトラブルに飛び込んだことなんてないからね!」

「そうかぁー?」


 その日、僕たちは夜遅くまでみんなで語り合い、騒ぎ、おおいに盛り上がった。

 最近いいことばかりで嬉しくなる。こんな日々がずっと続けばいいのに。

カムロン「同作者の小説が明日発売だな」

ソレーヌ「もう予約したわよ」

カムロン「売れないと引退だからな」

ソレーヌ「もちろん一人一冊協力するわ」


★★★★★


挿絵(By みてみん)

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