聖魔法を覚える。
ポーロたちがやって来た午後、僕は第三王子が募集している騎士になるための礼儀やマナーなどを教わっていた。
ボットムから人を集めるくらいなので、礼儀作法などは必要ないのかもしれないけど、知っておいて損はない。
そんなことを思っていたんだけど……。
「テル……あなたに教えることは何もない」
「なんで?」
「12剣舞できるのは、まぁここから見ていたから仕方がないとしましょう。仕方がないではすまないんだけどね。だけど、基本的な礼節から基礎の動きまですべて叩きこまれているのよ! 正直ありえないわよ」
ノエルはこれがどれだけすごいことなのかというのをボーロが途中で止めるまでずっと話し続けた。あの後、ラキとカムロンは用事があるからと帰ってしまったが、ボーロだけはなぜかそのまま残っている。
ずっとニコニコしながら側にいるので帰ってくれとも言いにくく……そのまま一緒に訓練をしていた。
ノエルの力はまだ戻らないとのことだったが、意外にも途中からポーロが役に立った。
全盛期の力には遠く及ばないといいつつも、ボーロはノエルのリハビリにちょうどいいレベルらしく、二人とも楽しそうに剣で斬りあいをしていた。
「いいリハビリになるわ」
「俺もいい訓練になります」
ボーロは身体も心もバッキバッキになるまで付き合わされていたが、非常に楽しそうだった。
そのあいだ僕は、ソレーヌに聖魔法を教わっていた。教会の補助魔法というのは本来門外不出のものらしく、他者に伝えてはいけないものらしいのだが、ソレーヌは、
「誰でもかまわず教えるのはよくないけど、テルなら大丈夫でしょ」
と軽くいわれしまった。
聖魔法はこないの魔法とは違って僕との相性が抜群だった。
どうやらラキの呪いを引っ張り出した時のものも、聖魔法だったらしい。
クリーンの魔法は生活魔法に分類されるが、クリーンの上位に浄化などがあり、僕は聖魔法に適性があると褒められてしまった。
「テルに教えるの楽しいわね」
「僕も魔法をこんなに使えるとは思っていませんでした」
こないだの植物系の魔法はなかなか覚えられなかったが、僕はあっという間に9個の聖魔法を覚えていた。
簡単な傷を治すものや、毒、麻痺、浄化、ライトボール、ライトアローなどなど。
ソレーヌは戦闘時にバーサクモードに近接系の戦士かと思ったが、そうでもなかったらしい。
「私って器用貧乏なんです。ある一定までのことは簡単にできてしまうんですけど、そこから先が上手くいかなかくて。戦う時にバーサク状態にならないように色々なことを学んでいたらいつの間にかできることは増えていたんですけどね」
「バーサク状態は制御できないの?」
「段々と……感情の高ぶりが激しくなってきている気がします。シスターになったのも、このバーサク状態をなんとかする方法があるのかと思ったからなんですけどね。結果はよくありませんでした。私の中の力を封印するにはかなり強い力じゃないとダメみたいで。いずれは自分自身を失ってしまって獣のようになってしまう人が多いみたいなんです。だから私は死ぬまでに好きなことをしようって思って。あっでも、私から聖魔法教わったって言っちゃダメですからね」
ソレーヌは一瞬、物悲しげな乾いた笑みを浮かべたが、すぐにそれを隠しわざと元気に振舞っていた。
だけど、僕はソレーヌの手が小刻みに震えているのを見逃さなかった。
僕は優しく、ソレーヌの頭に優しく触れ、もう片方の手をぎゅっと握る。
「ソレーヌ、辛いことを教えてくれてありがとうね。ずっと一人で頑張ってきて大変だったよね。僕に何ができるかわからないけど……それでも、僕はずっとソレーヌの味方でいるよ」
「テルさん、ありがとう」
ソレーヌと目があう……なんだろう……彼女の顔が妙に赤く……。
いつの間にかプラスが腕輪から妖精状態へと姿を変え、ソレーヌの顔に思いっきりウォーターボールをぶつけた。
「この……クソ羽虫がぁ」
「ちょっと、ソレーヌ! バーサク状態に簡単になったらダメだって!」
ソレーヌの耳にはすでに僕の声は届いていなかった。プラスはヒラヒラと飛びながら塔から下りて行く。ソレーヌはそのまま階段を下りて行ってしまった。
プラスも、ソレーヌにだけやたらと絡むのをやめてあげればいいのに。
僕は今教わった魔法を復習しようとすると、なぜか僕の肩を見るとプラスがあくびをしながら座っていた。
「あれ? なんでここにいるの? さっきソレーヌに追いかけられて下にいったんじゃないの?」
プラスは僕の前で小さな水鏡を作ると、自分そっくりな妖精を作り出し、それを飛ばしてみせた。どうやら、今ソレーヌが追いかけているのはプラスの偽物らしい。
「あんまりソレーヌをいじめちゃダメだよ」
プラスはなぜか自分の胸を任せなさいと言わんばかりに叩き、僕の手を握りながらウォーターボールを作り出す。
「プラスも僕に魔法を教えてくれるの?」
プラスは少し照れたような満面の笑みで頷いてくる。どうやら、僕に魔法を教えるのにソレーヌを他に連れていったのだろうか?
「プラスが魔法を教えてくれるのは嬉しいけど、ソレーヌを追い払っちゃダメだよ」
プラスは首を思いっきり振る。
「違うの?」
プラスはコクリと頷くが、それ以上は一生懸命伝えようとしているのはわかったけど、何を伝えたかったのかは僕にはわからなかった。
それからしばらくして、落ち着いたソレーヌが戻ってきた。
プラスを追いかけていたら、急に頭の中がスッキリしたとのことだった。
ソレーヌとプラスと目をあわせなかったけど、それからも時間の許す限り僕は訓練をした。
明日は騎士団の募集試験だ。
結局騎士団の試験に必要なことをまったくやってないけど大丈夫だろうか。
ノエルは大丈夫だって言っていたけど……。
僕はなかなか眠ることができなかった。
★友人からの推薦編★
なんと7月5日 同作者の
『幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!2』
が発売になります。
友人A「これを読んだらすごく良く眠れました」
友人B「もうなんていうか、なんていうかです。肩こりとか治りそう。知らんけど」
友人C「紙の質がね。やっぱり違うなって思って。さすがドラゴンノベルスですね」
友人D「絵がとても綺麗で飾っておきたくなりました」
なんて友人たちの声を集めたかったんですけど、リアルな友人いないことを思い出し、諦めました(´;ω;`)
もし、よろしければ予約してくれると嬉しいです。
友達いる人は友達にも勧めてもらえると一人で歓喜の踊りを家で踊ります。
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