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妖精に遊ばれキレるシスター「しばき倒してやんぞ」

「テルさん、魔法剣士目指されるのすごいですね。心から応援しています」


「ありがとうございます。ソレーヌさん、斧の使い方とても上手なんですね。すごくカッコいいと思います。女性でそれだけの技術を身につけるのって大変だったんじゃないですか?」


「わかってくれます? もう本当に大変で。でも今まで男性からは苦虫を潰したような顔でしか見られなかったのでカッコいいって言ってくださって嬉しいです」


 色々な反応はあるだろうけど……これだけの技術を身につけるためには相当な努力があったはずだ。

「いやー斧が回転しながら戻ってくるのとか、本当にすごかったですよ。ねっ! ノエル」

「そうね。王国関係者の中でもあそこまで上手く扱える人はそういないと思うわ」


「ありがとうございます。実は小さい頃に呪いをもらってしまったようで……それでずっと心と身体を鍛えさせられたんです」

「呪いですか?」


「えぇ時々破壊衝動が過激になって先ほどのように口が悪くなり、最終的には敵味方関係なく攻撃してしまう狂戦士、バーサク状態になってしまうんです。だから、先ほどはまだ力を抑えて気を付けてはいるんですけど、あれが続くと本当に制御できなくなってしまって」

 ソレーヌはできるだけ、明るい声で僕たちにそれを伝えてきたが、その表情はどこか悲しそうだった。


 そんなシリアスな空気の中、プラスが僕の顔をペチペチと叩きだした。

 プラス、今そんな空気じゃないよ。


「この子可愛いですね。アサプラスの妖精ですか? 妖精がこんなに人に懐くなんて珍しいですね」


 ソレーヌがプラスの前に指を持っていくと、プラスはその指をペシッと弾き、問答無用で顔面に水魔法を放った。そのまま固まるソレーヌ。

「まぁ小さな妖精のしたことですから。大好きなテルさんを取られてしまうと思ったのかな?」

 ソレーヌの顔が一瞬鬼人のように見えたが、すぐに微笑む。

 

 にこにこしているソレーヌの顔面に、プラスが水鉄砲のような魔法を放った。

 プラスは馬鹿にしたような笑いを浮かべている。


 なにかがブチ切れるような音が聞こえた。

「おんどりゃ舐め腐りやがって。羽ひん剥いて素揚げにしてやんぞー!」


 シスターが大激怒しているのにも関わらず、プラスは俺の肩の上で腹を抱えて大爆笑していた。   

 先ほどの戦いを見ていたせいで、わざとからかって楽しんでいるようだ。意外と性格が……。

 プラスはそのまま空中にふわりと浮くと、ソレーヌが届かない場所へと逃げていった。


「こりゃ、下りてこんかい! しばき倒してやんぞ」

 プラスは楽しそうにソレーヌの手が届きそうで届かない絶妙な位置を飛んでいる。

 

 手をだした方がいいのかな?

 僕がノエルの方を見ると、ノエルはゆっくりと首を横に振る。


 しばらく遊ばせておくか。触らぬソレーヌに祟りなしだ。

 それから、しばらく様子を見ているとソレーヌの方が先に諦めた。


「ハァ、ハァ、絶対に後で捕まえてやる」

 結局ソレーヌはプラスを捕まえることができず、プラスは楽しそうに手を振って俺の腕輪へと戻っていった。いい意味で力が抜けたのか、怒っているようでもソレーヌの顔から険しさが抜けていた。


 斧を使ったりしないあたり、本気でやっていたわけではないようだ。


「ふぅ、申し訳ありません。少し取り乱しました」

「いえいえ、僕の方こそすみません。それよりも話の途中で邪魔されてしまいましたが、ここに配属されたんですよね? ここ聖堂の天井に穴が開いていたりしていますけど、大丈夫なんですか?」


「それなら心配いりません」

 彼女が腰から一本の小枝を取り出すと、魔法を唱えだした。


 それは神様に祈るようなそんな呪文だった。

 徐々に彼女を中心に魔法陣が浮かび上がっていく。

 そして彼女が天井に向かって杖を振ると、そこに向かって大きな植物が伸びていった。


 天井へ到達すると植物が次々に穴を塞ぎ、不要な部分の植物は自動で切り落とされてきた。その落ちて来た植物もどんどん萎んで、拳大の大きさの木片になってしまった。


「今のは、なんの魔法なんですか?」

「植物結界魔法の応用です。伸びた蔓で穴を塞ぐことができ、不要な部分は自動でカットするんです。植物には化石化の魔法がかけられているので、天井部分は乾けば元の状態よりも固くなるんです」


「すごい! 僕にも教えて欲しいです」

「もちろんいいですけど、簡単には覚えられないと思いますよ?」


「それでもいいんです!」

「それなら……この魔法は特に秘密というわけではないですからいいですよ。でも最初は、植物を育てる魔法と、化石化の魔法、それに切り離しの魔法を別々に教えますね」


「わかりました!」

「私も一緒に教わってもいいですか?」


「もちろんですよ。ノエルさんも一緒にやりましょう。魔法のやり方は知っていても損はありませんからね」


 僕と一緒にノエルも教えてもらうことになり、ノエルも使える魔法をソレーヌに教えることになった。


 さすがにずっと魔法で遊んでいるわけにはいかなかったのと、クリーンの魔法のように簡単には習得できなかったけど、ノエルにもソレーヌにも才能があると言ってくれた。


 今まで母さん以外に褒められることがなかったので、照れてしまって素直に喜べなかったけど、とても充実した時間だった。

 今まで知らなかったことを教わるのって面白い。

 僕は生まれて初めて学べることの楽しさを知った瞬間だった。

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7月5日 同作者の

『幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!2』

が発売になります。

大絶賛、予約受付中です。ぜひ近くのお気に入りの書店、またはネットでご予約お願いします。

★★★★★


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 今度は植物・化石化・切断それぞれの魔法の習得か。 いきなり攻撃魔法を習得しないあたりにテルの扱う戦術にトリッキーさが加わりそう。 [気になる点] 誤字報告の欄に書くべき…
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