可愛いシスターとその仲間たち
いつのまにか僕の肩にはプラスが座って手には美味しそうな小さな果物を片手に持ち、目を輝かせながら応援している。
「お前らやってしまえ! 俺たちにはもう後がないんだ」
男たちが勢いよく飛び出してくる。
「おぉー戦の神よ。今この迷える子羊たちを運悪く、あなたの元へ送り届けることをお許しください」
ソレーヌは大げさに祈ると、そのままゴロツキたちより少し遅れて駆け出した。
華麗なステップを刻みながら、すれ違いざまにゴロツキの顔を斧の平らな部分で殴り付けた。
一発で意識を刈り取り、その場に倒れていくその姿はシスターというよりも鬼神だった。
「へぇー彼女なかなかやるわね」
どうやら、あぁは言っても殺すつもりはないようだ。
ノエルは彼らの動きを見て、静観することに決めたようだ。
「テル、お姉さんは弱い者いじめしたくないからここは任せるよ。大変なら手を貸してあげるわ」
「誰が弱い者だ! 思い知らせてやる」
「姉さん、僕に任せて」
僕はノエルが挑発してくれたおかげで、一直線に切りかかっていく男たちを捌きながら、致命傷にならない程度で怪我をさせていく。最低限逃げることはできるくらいにはしておいてあげよう。
ノエルは僕が戦いやすいように、ゴロツキたちを誘導してくれている。
彼女の声に反応するように動いてくれるので、非常に楽だった。
「いったい、なんなんだこいつらは……」
「可愛いシスターとその仲間たちに決まっているじゃない」
ソレーヌは血しぶきを全身に浴び、その笑った顔は、可愛い悪魔のような、そんな恐ろしさがあった。
「ダメだ。兄貴! このままじゃ俺たち全員が再起不能になっちまう。逃げよう」
ゴロツキたちの何人かは、そう言われる前にすでに敗走を始めていた。
恐怖は集団に伝播していく。
意識の高い騎士団などは、戦わずに敗走などすることはない。
でも、烏合の衆では勝てないとわかった時点で逃げ出すのは当たり前だ。
僕たちと彼らとの間にはそれだけの差があった。
「こんなはずじゃなかったのに。ほんの少しの手数料じゃねぇか。なんでそれくらい払わないんだよ」
「あんたの常識で語るんじゃねぇよ。なんでこんな弱い奴らに手数料なんて払わなきゃいけないんだよ。私は私の道を歩んでいくんだよ」
ソレーヌが思いっきり斧で相手のリーダーを殴り飛ばすと、残っていた男たちも完全に戦意を失ったのか塵尻になって逃げていった。
彼は兄貴って呼ばれていたのに、負けると切り捨てられるのは、そこまでの関係だったってことだろう。慌てて相手のリーダーも転がるようにして逃げていったが、これに懲りたらもう来ないでもらいたい。
蹴り破られた扉と、ソレーヌが意識を刈り取った男たちが聖堂内に転がっている。
「お前ら、これを持って行け。次襲ってきやがったら全員の大事なところを切り落としてやるから覚悟しな!」
それにしてもソレーヌの威勢のよさにはビックリしてしまった。
まるで別人のように豹変している。
「テル、意外といい動きをするんですね」
「僕も剣の扱いは慣れているからね。それより、ソレーヌさん、すごい斧捌きでしたね」
「あっ……テルさんすごく怖かったです。もう必死で何がなんだかわかりませんでしたわ」
「うん。僕も今、何がなんだかわからないよ」
一瞬、頭がくらっとくる。なにこの変わりよう。
シスターの変わりようにプラスが手を叩きながら大爆笑していた。
できるなら僕も笑ってしまいたいが、心が追い付いていない。
いったいどうしたらいいというのか。
とりあえず、全員でゴロツキたちを外に放り出した。
ソレーヌ「グへへへ……よいではないか、よいではないか」
悪役シスター現る
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