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決着 進化するメタルゾンビちょんぱさん ①

「なん、なんだ……あいつら寄ってたかって」


 もう無事な所を探すのが難しくなってきた議員会館の三階、このフロアは基本的に従業員の休憩室や更衣室、食堂などが備えられていて……ようやく何とか人に見えるようになったゾンビちょんぱさんは女子更衣室に潜んでいた。


「大体なんで僕に付きまというんだよ? 僕はあのおもちゃで遊びたいだけだぜ?」


 実際には国を跨いで悪い事を繰り返しているテロリストとは思えないほど子供のような主張である。


「くっそ……好き放題やりやがって。おかげであんなに用意した予備が後一つじゃないか。もういいや、(ホーン)を回収してさっさと逃げよう。何回でも仕切りなおせるんだし」


 この国で人身売買した時に手に入れた分はすでに加工が終わっていた。だからこそのゾンビちょんぱなのであるがもうそのストックが尽きようとしている。そもそも何の準備も無ければキズナの初回キックで意識を保てたかどうかも怪しい。


 ――ばたばたばたばた……


 真っ暗な更衣室の外では偶に数人の足音が響いている。キズナたちがゾンビちょんぱを捜索(サーチ)して(アンド)破壊(デストロイ)する事を諦めていない証だ。


「だけど、なんで今は転移できない事がバレてるんだ?」


 もうちょっとだけ身体を治してから行こう。せめて人ごみに紛れる事が可能なくらいに。

 幸い服はここにあるのを適当に見繕えばいい。




 ―― そのころの洞爺達 ―




「意外と逃げ足が速いぞあ奴」

「一体何回ぶっ壊せば良いんだありゃあ……姉貴よりしぶてぇなメタルゾンビちょんぱ」

「いい加減その呼び名も語呂が悪いのう」


 たったったっ、と軽快な足取りで三階を探索する洞爺とキズナ。

 お互い刀を扱うためか間の取り方とかが似通っていて即席にしては良いコンビとも言えた。しかし悲しいかな、まだ一度もメタルゾンビちょんぱを見つけられていない。

 ちなみにダントツで半狂乱夜音&暫定鈍器の牡丹ペアは二桁に届くほど遭遇していたりする。


「姉貴がいりゃあ見つけやすいんだけどな」


 エキドナ本人は『ちょっと気になるからこの階を探すねぇ。任せた二人とも!』と先ほどの狩場で何かをし始めていた。


「無いものねだりしてもしょうがあるまい、む?」


 廊下の突き当り、暗闇で見えづらいが誰かが駆け寄ってくるのが視界に入る。


「洞爺、キズナ」


 夜音たちと合流したはずのクワイエットだった。


「そういえばあのパンク娘の泣き声止まったわね」

「じゃな、なんぞ通達か?」


 確かにこのまま闇雲に探しても見つからなさそうなので相談したい、同時にクワイエットにはちょんぱのしぶとさの秘密とかを共有しておかなければならなかった。


「夜音と牡丹は二階で逃走経路をつぶす。俺たちで各部屋をしらみつぶしに探そう……エキドナは?」

「姉貴は上の階で何か調べてる、あたしとじいさんはとりあえず走り回っていた」

「……三人一組でやるか。まずは……ここからかな?」


 ――『女子更衣室』――


 片側開きの木製の扉、そのど真ん中に分かりやすく札がかけられていた。

 普段であればここで働くメイドさんや職員さんが着替えている場所。


「じゃな、嬢ちゃん。済まんが見てきてくれるか?」

「は? いいじゃん一緒に行けば」

「……男子禁制じゃろどう考えても」

「緊急緊急、パンツ位盗んでもあたしは誰にも言わない。パパならこれ幸いとばかりに品定めまですると信じてる」

「妻が居るから結構じゃ。ええい、問答する時間が惜しい……クワイエット殿、出入り口の警戒を頼む。儂と嬢ちゃんで行く」

「了解、まあ一発目から出くわすことは無いだろうが」


 フラグ建築屋クワイエットさんである。

 しゃきん、と手入れが行き届いたナイフを両手に構えて周りを警戒しつつも肩の力を抜いていた。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「お主意外と古い言い回し知っとるの」


 目線で洞爺がキズナに扉を開けるよう促す。

 軽く頷いてキズナは刀の持つ手を反対側の手、左手で押すが……ぎしっ、と軋むだけで開かない。


「……手前開きか?」


 今度は洞爺がドアノブに手をかけて退くが……みしっ、とドアの枠が当たる。どう考えても押し込むしかなかった。


「鍵かけてんじゃねぇ? あたしが開ける」


 なるほど、言われてみれば夜音が脅かしていたとはいえ帰る際に施錠位はするか。

 洞爺も納得し、キズナに場所を譲る。


「こんな簡単な鍵ちょちょいのチョイ……」


 ――かちゃん

 ポケットから針金を数本出したキズナがあっという間に開錠する。


「よし、じゃあ開けるぜ!」


 キズナが意気揚々とドアノブを捻った。そもそもこの期に及んで鍵が締まってるならこの中にちょんぱはいないだろう。居るなら鍵は空いてるはずだからだ。

 ぐっと押し込むと……開かない。


「あれ? 開かねぇ……くぬっ」


 ガチャガチャとドアノブを捻るとどうやら……鍵がかかっている。


「なんで? あたし開けたよな?」

「もしかして今の音、鍵が()()()()のではないかのう?」

「こういうのってやたらイライラするのよね」

「「……(わかる)」」


 面倒くさくなりキズナは即断即決、刀で扉を斬る。

 無造作に分割された木製の扉はがらがらと……ドアノブだけをその場に残して崩れ去った。

 そして、扉の開かなかった原因が姿を現す。

 立って居たのは曖昧な笑みを浮かべる金髪で青い瞳の半裸の少年……ではなく。なぜかメイド服を着ているちょんぱだった。


 一秒……二秒…………三秒。

 

 たっぷり三秒間、世界は止まる。


「何やってんの?」

「に、逃げ遅れて」


 ある意味嘘は言ってないが、どう見ても変態さんである。

 洞爺は牡丹である程度慣れているのか、きっとメイドにでも変装して逃げ遅れた振りをしつつ逃げおおせる真っ最中に踏み込まれかけてやむを得ず身支度途中でドアを開けさせまいと奮闘していた。

 という百点満点の推察をしている。


「却下だ、変態女装メタルゾンビメイドちょんぱ」

 

 力任せにキズナは刀を振り下ろした。

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