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弥生のお仕事ベルトリア共和国編 ③

「という訳でさ……ここであの妖怪『金髪首だけ野郎』と鉢合わせしてね? 仕方なかったんだよ。誰が操られてるのかそうじゃないのかは僕には判別できなくてね? 仕方ないから洞爺と牡丹と片っ端から目についた相手を殴って気絶させるしかなかったのさ。これは不可抗力と言っていいんじゃないかな?」


 うんうん、と洞爺と牡丹。それから夜音が正座をしてエキドナに同調する。


「で、本当はどうしたんです?」


 長々と5分にわたるエキドナの言い訳タイムを経て、弥生は核心に迫った。

 文香はエキドナの嘘に騙されて目をキラキラさせて冒険譚の続きを所望だが、残念ながらあと5分で面会時間が迫ってるので後回しにする。


「ごめん、僕がミスった。不死族の隠密が居たらしくて嵌められちゃった。助けて弥生秘書官様」

「すまぬ、儂も気づけんかった。エキドナが捕まったと早計して正面から押し入ってしまった」

「良くわかんなかったけど洞爺さんが殺すなって言うから殺さなかったわ」

「弥生ぃ……この3人の手綱どうやってとればいいの? というか私まで牢屋に」


 若干一名反省以前の問題で事態を把握していなかった。

 

「まあ良いですよ。とりあえず夜音ちゃんと洞爺お爺ちゃんは釈放で手続きしましたから」

「エキドナ姉と牡丹姉はここで反省だってさ。だめだよ人を叩いちゃ」


 洞爺と夜音に関しては弥生の護衛という立場で身分証明を発行していたので、ちゃんと手続きを踏んで弥生本人が身元引受人となることで釈放となる。


「ふむ、儂と夜音は弥生の護衛じゃからな」

「ちょ!! 僕とコレは!?」

「エキドナ、これ扱いなんてひどいんじゃない? 人を指さして行儀も悪いわ」

「お前一番多くぶん殴ってたじゃないかぁ!? しかも超楽しそうに!!」

「楽しかったわ」

「エキドナ姉、糠に釘ってこういう事なんだろうなって勉強になるよ僕」

「真司ぃ!! 君は僕を見捨てないよね!? ね?」


 必死に鉄格子を握りしめ、うるんだ瞳で真司に期待を寄せるエキドナさんだが現実は非常だった。


「むり」


 これでも真司は頑張ったのだ。

 姉と一緒に非力アピールをしてこの国に先行入国して自分の身の安全を確保するためのやむを得ない行為だったと主張。

 しかし、そもそも魔法大国ミルテアリアの魔法士ギルド最強のフィヨルギュンと同行してる時点で護衛も何もいらないじゃないかと言われてしまう。


「そんなぁ……」

「2~3日反省したら出してくれるってさ」

「エキドナおねえちゃん、おつとめ終わったら続きお話してね!」

「はいこれ、守衛さんに許可貰ったから後で二人で食べてね」


 そういって真司は肩掛けバックの中から紙包みの菓子パンを取り出す。

 ほい、とエキドナに手渡す際。

 真司はエキドナに二度ウインクする。


「本当は()()()食べるといいんだけど。仕方ないよね」


 パンにしてはやたらとずっしりしたその紙包みをエキドナは受け取った。


「へえ、そっかぁ……ありがとうね真司。後で味わって食べるよ」

「お酒はあるの?」

「牡丹姉、空気読んで……」


 ごちん! と洞爺が申し訳なさそうに牡丹へ拳骨を落としたところで面会時間が終わる。


「さあ、時間ですよ。ウェイランド統括ギルドの秘書官さん、今度はちゃんと上の方に話を通して人員を派遣してもらいたいもんですね」


 弥生達を牢獄から出るよう促す衛兵さんは多少納得いかないところはあるのだろうが、弥生が丁寧に説明したこともあって嫌みこそ言ってはくる。

 しかし、それ以上の事はしてこない。たとえ右目に真っ青なあざをつけていたとしてもだ。


「はい、今回の件はこちらの落ち度になります。きちんとした謝罪と補償をウェイランド統括ギルドでさせていただきます。まずは……衛兵さんのけがの手当てから……すみませんでした」

「ああ、いや。君が悪いわけではない……こちらもそっちの金髪チビの言葉を一切信じなかったからな。まさか本当に人身売買組織がかかわってるなんて思わなかったからなぁ」

 

 最初、衛兵たちは殺気立っていた。

 いきなり顔を出したかと思えば子供連れのウェイランドの隠密が堂々と姿を見せる。

 しかもその子供の中の一人がウェイランドのトップ、監理官付きの秘書官なのだ。


「はい、ご迷惑おかけした上で申し訳ありませんが……またご協力いただくこともあるかと思いますのでよろしくお願いいたします」

「わかった、そこの二人も反省しているようだったら早めに釈放もあり得る。秘書官さんがお泊りの宿を教えてください、何かあればこちらからも人を行かせますので」


 当然聞く耳を最初は持たなかったのだが、弥生はまず彼女の知り合いが起こした騒ぎについてずっと頭を下げ続ける。

 突き飛ばされても護衛と思われるウェイランドの隠密をけしかけもせず、ただただ謝り続けたのだ。


「本当にありがとうございますぅ……じゃあ、洞爺おじいちゃんと夜音ちゃん。外で待ってるからね? ちゃんとみんなに謝るんだよ?」

「うむ」

「あいあいー」


 短くではあるがちゃんと申し訳ないと思っているのか洞爺と夜音の声音はいつもよりちょっと低かった。


「なあ秘書官さん、お城に行くんですよね? 門番の衛兵に頼んどきますんで誰の所に行きたいか教えてください。案内してくれるはずです」


 だからだろうか、なんか弥生には手を貸したいと衛兵たちが思ったのは。



「秘書官さん、城に行くんですよね?」


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