パーティーを二つに分けますか?
「という訳で僕は修羅の道に入るよ……」
「エキドナ姉、そんな情感たっぷりにそれっぽいこと言うんだったら口にくわえたお菓子と両手に持った買い物袋離してから話しなよ……」
関係者を集めた弥生とオルトリンデの執務室でエキドナは開口一番でコントを始めた。
「それ以前に監獄襲撃計画を私の前で練らないでください。ウェイランドの監理官が許可したなんて曲解されたらどんな事になるか分かってますよね? エキドナ?」
「真司もオルちゃんも上手いこと言うね~。あ、文香これお土産だよ。ビスケット特盛」
「おねえちゃんありがと~! ミリーちゃんと一緒に食べようっと」
「そうじゃ牡丹、レンの引っ越し籠が一月ほどでできるのじゃが儂が迎えに行く間ここを任せてよいか?」
「良いですよ。レンの鱗を数枚置いてってもらえると生活費潤うのでよろしくお願いします」
「心得た」
「ねーねー、コーヒーってないの? お茶ばっかりじゃない。くっそう……」
……収拾がつかないから誰か進行してくれないだろうか?
「見事に好き勝手って感じだよね僕ら」
「エキドナ姉が全員集めるだけ集めて待たせるからじゃないか……ほらほら皆、やっとエキドナ姉がいろいろ説明するってさ。姉ちゃん、文香……ぼりぼりビスケットかじるの止める。洞爺じいちゃん、牡丹姉との話は後でお願い……後そこの誰かわかんないパンク女は部屋の中を物色しない!!」
ぱんぱんと手を叩いて真司がそれぞれに注意を飛ばす。
「ありがとうございます、真司。さて……エキドナ? ちゃんとわかるように話してください」
「あーその前にオルトリンデ、これから話す事なんだけどさ? 割と突拍子もない感じなんだけど聞く?」
「突拍子もないって……度合いにもよりますが。貴方達が悪い人間じゃない事ぐらい承知していますから大体信じますよ」
まだ一、二か月程度の付き合いとはいえ弥生達が何か犯罪を企んでいたりするような事は無い。
むしろ一生懸命にウェイランドに馴染もうと努力している姿を見てきたのだ。
これでだまされるならそもそも監理官として自分が未熟なのだとオルトリンデは思う。
「それにですね、一応この場にいる全員の身辺調査ぐらいはしています。エキドナと洞爺は気づいてて知らんぷりしてましたよね?」
「む、そうだったのか?」
「え? そうだったの!?」
……ちなみに二人とも全然気づいてなかった。
無意識に尾行などがついてこれない速さだったりルートを選択しているというだけだったりする。
「……(諜報部の面目丸つぶれなのだが、引退しようかな?)」
実は天井裏にその時の諜報員さんが一生懸命気配を消して潜んでいたりするのだが……誰も気にしていなかった。
「なんで気づいてないんですか!? 今も天井裏で頑張って待機してるのに!!」
「!?……(あいえぇぇ!? 傷えぐりされるんですか!?)」
「あ、本当だ。腹這いでこっち見てた」
「男じゃな。ご苦労じゃの……すまん、気にしておらんかった。こっちに来て茶でも飲まんか?」
「そこは気づいてもスルーしてあげるのが人情じゃないかな?」
「……(少年!! そう、その通り!! 良いぞ! もっと言ってやれ!!)」
もうなんだか可哀そうになってきた諜報員さんに弥生達はきっと天井裏で涙しているであろうと瞑目する。オルトリンデも言わなければ良いのに。
「まあいいか。簡潔に話すと僕らは時間転移してきた人間で……オルトリンデ、君らの生まれる前の世代の人間だってことさ」
「古代人……という認識で良いですか?」
「そうだね。それでいいよ……そういう意味で言うと一番古いのが弥生達なんだけどね」
ふい、と弥生と視線を交わすエキドナ。
もちろん彼女はこの話をする前に弥生と洞爺にはその話を事前に通していた。
知っている技術、歴史のすり合わせの結果だ。
「ふむ、信じましょう」
「ずいぶんと呑み込みがいいわね。逆に疑いたくなるわ」
「ああ、すみません牡丹。前例があるんです……それほど多くないんですが」
そう前置きして牡丹の言葉にオルトリンデは話し始める。
「今のウェイランドをはじめとした各国家ですが、多分貴方達と同じように何かしらの要因でこの『時代』に来た誰かが建国に関わっているんです。わかりやすく言えばこの国の城門、弥生は知ってる風でしたよね?」
「うん、あれ自動ドアの応用だよね。あの操作用の端末もスマホそっくりだし」
「そういうことです。アレを創ったのは当時建国に携わったアリスと言う女性です。今は故人ですが様々な事に関わってこの国の基礎を作ったといっても過言ではありません」
「そかそか、アリス……アリスね」
先日ミルテアリアで出合った二人組、桜花とカタリナの話の中で出てきた名前だなぁ。と脳内で保管しながらエキドナはくるくると袋を回す。
「危ないよエキドナ姉、で? 姉ちゃんどうするの?」
「私はベルトリア共和国にエキドナさんと行くよ」
あっさりと弥生は言い切った。
オルトリンデの言葉を聞いていたのだろうかと真司が心配する。
「まあ、弥生ならそう言うでしょうね。良いですよ」
「ありがとう! オルちゃん話が分かるぅ!!」
むぎゅうっとオルトリンデを抱きしめる弥生だが、オルトリンデも一筋縄ではいかなかった。
「ベルトリア共和国で一仕事頼みたかったんです。ついでに真司と文香も連れて行っちゃってください」
「了解だよ!」
なんだか殴り込みというよりもピクニックになりそうだ。
「ねえ、オルトリンデ……いくら何でもそれはちょっと困るというか」
大人数になればなるほど動きは鈍くなる、ましてや今回は始めてから終わるまでに速度が求められる案件でもあった。自分の身を守れる洞爺と牡丹ならともかく弥生達の同行に今回はメリットが無い。
「何もエキドナと行動を共にする必要はないんですよ。エキドナ達はエキドナ達で、弥生たちはあくまでも私の管轄で仕事をするのです」
にやりと悪い事を考えていますといったオルトリンデさんにこう言われてはエキドナも引き下がるほかない。
「わかったよぅ。おねーさんは今回別行動……オルトリンデに弥生達の事は任せるよ?」
「ええ、任されました。妹さん無事に助けられるように私も祈っておきます」
「りょーかい、じゃあ洞爺、牡丹、夜音。僕らは明日ベルトリア共和国に出立だ。弥生、無理はしちゃだめだよ? 真司と文香もいるんだし」
「うん、終わったら合流しようね? エキドナさん!」
「はいはい、仕方ない。弄ばれてあげるよ……おねーさんはアドリブにも強いんだぜぃ」
どうやらオルトリンデが何か企んでいると見たエキドナはあえて乗っかる事にした。
弥生たちが絡む以上二重三重に安全策を講じているだろうとオルトリンデを信頼して。
「ふふ、何のことですか?」
「やれやれだよ」
ひょいとかざしたオルトリンデの右手を軽くエキドナが叩く。
悪い気はしないエキドナだった。




