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ミルテアリアにて ④

 弥生を飛竜の待機所へ送って行った後、オルトリンデとエキドナはフィンの執務室へ来ている。

 先日の危険人物について弥生を抜きにしてもう少し踏み込んだ話がしたかったからだ。

 それぞれ適当な席に座り、ギルド員に紅茶をもらって会議は始まる。口火を切ったのはエキドナだ。


「まずは爆薬について触れようか。あれは簡単に言えば燃える粉を固めて筒に押し固めた物だよ……火が付けば一瞬でぼん! となる代物で、作り方さえわかれば意外と簡単に作れるけど入れ物はそうはいかない。大量生産かつ規格品のアレを少なくともウェイランドで僕は見たことが無い、多分僕の住んでいた所で作られたものだ」


「なるほどね。じゃあその二人組がウェイランドに出た危険人物と同じような所から来た可能性は高いって事か……。至近距離なら鎧で完全武装の騎士ですらノックアウト、私たち魔法士じゃ障壁が間に合わなかった時点で即死かしら?」


 紅茶をふうふうと冷まして飲みながら、フィヨルギュンは冷静に危険度を認識していく。

 魔法士というのは準備が整って初めて戦力となるので当然不意打ちなどにはめっぽう弱い。


「即死を免れてもその場で戦闘不能だろうね。ピン抜いて投げるだけだからさ、背を向けられたら予備動作すら見えないよ。相性は最悪なんじゃないかな」

「何か手はないの? 連発できないとか」

「残念なお知らせだけど、連発は可能で何個持ってるかによるけどトラップにも使えるんだ。ワイヤーつけて通り道に仕掛けておけば引っかかったらどかん! ってね。僕みたいに使い方を熟知してる連中ならもっと酷い使い方も思いつくよ」

「例えば?」

「ピン……安全装置の棒を溶けるようにして小動物に丸呑みさせて相手の陣地に放逐」


 確実性は薄れるが無差別ならば効果は高い、その動物を調教すればさらに確実性は上がる。

 エキドナがそこまで言って手のひらをぱっと開いた。その意味は当然爆発でオルトリンデとフィヨルギュンが息を呑む。


「エキドナ、貴女なら対処できますか?」

「できるよ。けどねぇ……正直僕の探してる家族とは別口なんだよね。相手が何を目的にしてるかによるんだけど戦闘になったらちょっと僕一人じゃ大変かな」

「バックアップに魔法士がいても、かしら」

「ごめん、実は魔法士のバックアップは僕と相性が悪い。かえって戦いづらくなると思う……連携が取れないんだ」

「そう……」

「話は通じそうなのかな? 戦闘ありきで今話してるけど交渉の余地があるなら僕は良い牽制になるよ」

「どうかしら、この間は……まあ不法侵入者って事もあったけど。まず事情を聞かせてって言えば話す余地はあると思いたいわ、その気になればこっちを殺せたのにわざわざ目くらましで逃げたんだもの」


 言われてみれば確かに、その気になれば閃光手榴弾ではなく火力の高い手榴弾や爆弾を使ってもよかった。手持ちがなかったのかもしれないが視覚と聴覚を失っていた魔法士など、ナイフで一刺しするだけで事は済む。フィヨルギュンの希望的観測も全くの的外れではない。


「そうだねぇ……なら単独で僕が動こうか? オルトリンデ監理官殿、良いかな?」

「無理はダメですよ? 壊れても直せばーって真司に言ったの聞いてますからね」

「たはは、しないしない。あくまでも探してコンタクトをとるだけだよ。そんなしかめっ面しないでおくれよ。おねーさんは思慮深いのさ」

「まったく……わかりました。一時弥生の護衛からは外しますから代わりにフィン? 私の国内での武装許可をください。代理で私が弥生の護衛を務めます」

「え? オルトリンデ戦えるの!?」


 想像の範囲外だったオルトリンデの言葉にエキドナが目を丸くする。

 ついでにつま先から頭のてっぺんまで見てもインドア派にしか見ないのだ。

 確かにここまでの道中歩き通した割には疲れた様子もないのである程度体力はあると思っていた。


「……オルリン、言ってないの?」

「いや、その……まさかこういう事態になるとは思っていなかったもので」


 はぁぁ……とため息をつきながら手持ちの旅行鞄を開けるオルトリンデ。

 その中から出てきたのは一本の鞭、ぐるぐると巻いてあるがエキドナの見立てでは4メートルくらいはありそうだった。


「これでも統括ギルドではNo.2の腕です。元、と但し書きが付きますが」

「よく言うわよ、魔法も有りだったらぶっちぎりで今でも最強じゃないのあんたは……」

「とても最強には見えなかったけど、人は見かけによらないねぇ」

「ふむ、では試しますか?」

「そうだねぇ……そうだ! 二人で来てよ。僕さぁ、ちょっと鈍ってるみたいでこの間変態相手に不覚を取っちゃってね。魔法相手の戦い方ってのを鍛えておきたくてさ」


 この場において二人を差すのはフィヨルギュンとオルトリンデだ。

 にやり、と不敵な笑みを浮かべるエキドナに困惑する。


「ええと、本気なの?」

「正直舐めてたんだよね。普通の達人や魔物程度には負ける気しないんだけどさ……弥生とオルトリンデが会った男は別格っぽいし」

「そういう事でしたら……ただし、危険と判断したらそこで止めますよ?」

「いいよん。僕も怪我したいわけじゃないし」


 仕方なくフィヨルギュンとオルトリンデは了承する。

 実際にエキドナの実力を知らない二人は軽い訓練程度の考えだが、後ほどそれを激しく後悔することになるのであった。

 

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