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無理っぽいので先に行きましょう。byオルトリンデ

「どうだい? 乗り心地は……って聞くまでもないか。寝心地良さそうだね」

「ジェミニ、あまり甘やかさないでくださいね? 弥生……執務室で何を作ってたかと思えば着る寝袋とか技術の無駄遣いじゃないですか」


 オルトリンデとエキドナがそろってため息をつく。

 二人とも旅支度で頑丈なシャツとスラックス。なめし皮のチョッキとフード付きの外套(マント)といった統括ギルド支給の服装だ。ちなみに色は茶色……お金を払ってでも染め直す者が多い、不人気色だ。


 現在ウェイランドの東門から出て半日ほどの所にある中継村のノルテリアへ向かう3人と1匹は、お日様の光が温かい街道をのんびりと歩いていた。


 結局弥生は体力作りは一旦あきらめてジェミニの好意で乗せてってもらえる事になったのだ。

 まあ、いっそ馬でも馬車でもいいのでは? と当初はオルトリンデが呆れ交じりに提案したが、ジェミニ自身が良いリハビリだからと弥生を背に乗せてニコニコしてたので彼女が折れた形になる。


「うあ~最高。ジェミニの背中でお仕事したい」

「何を馬鹿なことを言ってるんですか。ジェミニもそれはありかも!! みたいに頷かないでください!?」

「いいねぇ、面白いねぇ。竜って気位が高いとか気難しいとかそういうイメージだったんだよね。後は厄介な敵として現れるとか」

「昔はそうでしたよ。竜族は基本的に人と交わらないというか排他的で狩猟本能が非常に高く、各国で手を焼いていた時代がありましたから」

「ぎゃう」

「……なんかそうなんだよ。みたいに反応するジェミニからは想像つかない話だねぇ。後あの真っ黒な竜のレン」


 エキドナの偏見だと言われればそれまでなのだが、ウェイランドの住人は言葉が通じて害が無ければそれでよいという風潮らしく。レンもすっかり文香のクラスで先生が板についてきた。

 最近は城門の前にクラスの生徒が帰る時の送り出しまでしているほどだ。


「私が生まれる前の話ですが、一人の英雄が竜族と戦って盟約を結んだらしいです。それ以来確かに竜の被害は減って、その代わりこうして共存していますからね」

「魔物もそうなればいいんだけどねぇ」

「? 魔物はどうしようもないじゃないですか」

「え、なんか変なこと言った?」


 エキドナの中では魔物も知性さえあれば問題ないのでは? と言う意図だがどうやら違うらしい。

 

「いえ、たまにそんなことを唱える学者が居るのでそこまで変じゃないですが。魔物はそもそも魔素に侵された『野生動物』ですよ。竜は野生、というとおかしな話ですが……解説しましょうか? そんな百面相して理解に苦しむくらいなら」

 

「じゃあ、随時指摘頂戴。魔狼って元々狼?」

「狼だったり犬だったり、熊が魔素に侵されればインパクトベアとかですかね?」

「……わかってきた。魔素に侵された竜は魔物、竜は僕ら知生体の括りか。じゃあ、人は?」

「めったに無いのですが人族が魔素に侵されると一度不定形になり、その在り方が変わります。……この時点で魔物と判断され、多様化します。大体は成りたてで弱いのですぐに処理されますよ、放置すると魔人になって大災害を引き起こしますから」


 両手をぱっと開いて爆発を表現。

 オルトリンデの眼には寂しいような、憤りが混じったものがよぎる。

 それにエキドナは気づいていたが見ないふりをした。きっと当事者だったのであろう事は予測できたが。あえて今触れる必要はないと判断した。


「魔人、ねえ。どうなるのかな?」

「私も一度しか遭遇していませんが、とにかく理不尽です。頭を吹き飛ばされても再生したり、良くわからないな主張をしてきたりと……」

「魔物より厄介、それだけ分かれば十分さ。死霊はじゃあ……死体が魔素に侵された。かな?」

「その認識で構いません、基本的に生き物は魔素に耐性を持っていますが死んだ際は別です。死体は魔素への抵抗力が極端に減ります。そうなると死体は一度分解されて魔物化します、それが集まると……」

「わかってきた。亡霊は生前の姿を取り戻して完全な人型――『魔人』になりたい訳だね」


 物理的な干渉が制限される存在から、より使い勝手のいい体への急激な変化。

 それはまるで『進化』とも言えるのでは? エキドナの頭によぎる推測は言葉にはされず、今後の考察に引っ張り出されていくことになる。

 とはいえ、今はオルトリンデの説明におかしなところは見当たらない。彼女もエキドナの察しの良さに驚きつつもほぼ完ぺきな理解に満足していた。


「正解です。優秀な生徒で助かります」

「ご教授ありがとうございます。オルトリンデ先生(せんせ)

「よろしい……で、もう一人の生徒なのですが」

「ぎゃう」


 おとなしく聞き役に徹していたジェミニが『しっ!』と口元に爪を持って行って二人に示す。

 その背中には幸せそうによだれを垂らす統括ギルドの秘書官(やよい) が寝そべっていた。


「寝てるね。まあ戦闘要員じゃないから良いんじゃない?」

「それはそうなのですが、こうも堂々(どうどう)と寝られると教師として釈然としません……額にいたずら書きでもしましょうか? 鼻提灯(はなちょうちん)で乙女失格の顔ですから……『残念』とか」


 こうして初日の目的地『ノルテリア』の村に到着するまで、二人と一匹は有意義に過ごせていたのであった。

 目を覚ました弥生が額の文字に気づかず、宿の女将さんに指摘されるまでは。



 

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