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後始末は大人の仕事 ③

「さてあたしは何しようかしら?」


 タンクトップにジーンズ姿、茶髪のショートで猫目と……いかにも活動的です! と言わんばかりの容姿。170センチの身長は女性にしては高くモデル体型と言える。


 先日の工房地区での死霊事件で大活躍した拳闘士『桜坂牡丹(さくらざかぼたん)』は暇を持て余していた。洞爺が弥生の護衛役を買って出た後、牡丹は真司の護衛役に付くことになり、今日も真司と一緒に魔法士ギルドに来ている。


「暇だったら訓練の相手でもしようか?」


 すっかり真司と行動を共にすることが多くなったエキドナが手首をぷらぷらと揺らしながら、牡丹に申し出た。同じ肉弾戦が得意ということもあり、手合わせを通して仲良しといってもいい。


「そうね、お願いしようかしら……どれくらいかかるの? 真司君は」

「今日は杖の術式を刻む日だから昼まで出てこないと思うよー」

「じゃあ、今日こそ一本取らないとね……貴女異常に強いんだもの」

「そりゃあ、軍用のアンドロイドだよ? 生身の人間には……ごめん、君は本当に人間? 洞爺もだけど」


 自信たっぷりに胸を貸したエキドナにあと一歩という所まで食い下がる牡丹、何より信じられなかったのはつい力が入ってエキドナが牡丹を派手に蹴り飛ばしてしまった事があった。

 しかし、激突した壁が陥没したのにその直後……笑いながら突撃してくる牡丹。


 思わず失礼を承知で、彼女は牡丹の身体を全力スキャンした位だ。

 結果は『どこからどう見てもただの20代の女性』、しかもほぼ無傷……エキドナが人間か!? と疑うのは無理もないのである。


「レンが言うには……魔力みたいな何かを無意識で纏ってる、らしいわ。興味ないけど」

「へえ、僕の家族もそういうのありそう……特に母親」

「私はむしろ……貴女が機械だなんて信じられなかったわ。首や腕をそんなポンポン外してるのを見たら信じるしかないけど」

「そこらへん認識合わせしたいなぁ……」


 エキドナは洞爺、牡丹、レンとすでに顔合わせを済ませて日本人である事を知っているのだが……どうにも弥生達、自分、彼らの言う日本が少しづつズレている気がするのだ。

 

「正直そこらへんはあたし興味がないから任せるわ。そもそも……私に限れば日本に戻りたいわけじゃないし、真司たちもそうなんでしょ?」

「まあ、ね。僕は元の場所に戻らないといけないから君らの経緯を解析してうまく生かしたい」

「なら協力するわ。うまくいったら向こう側でこちらとの行き来ができない様にしてくれるならね」

「それくらい請け負うよ……で、つい話し込んじゃったけどやるかい?」


 思いの他、二人は会話が続いてなんとなく動くのが億劫になってきていた。

 

「どうしようかしら……ところでどこで手合わせするつもりだったの?」

「え? ここ」

「……ダメに決まってるじゃない。ここ、通路よ」

「市街地での屋内戦を仮定して、は必要だと思うんだけど」

「間違って職員に当てたらあのロリっ娘監理官(オルトリンデ)にマジ説教されるわよ」

「……じゃあ探索者ギルドの試験場でも借りる?」


 多少暴れても問題ない場所の定番、探索者ギルドの試験場はちゃんとお金を払えば練習場としても借りれる。しかし、その提案をエキドナがした瞬間。牡丹は嫌悪感丸出しで胸やおしりを手で隠して彼女に告げる。


「あれはあり得ない」


 誰の事かは口にしない、口にしてはいけないあの人と同じ扱いなのだ。

 事故案件をわざわざ掘り出す必要はないのである。


「大丈夫、受付の人にお金払って()()がいない日をちゃんと把握してるから」

「いくら払ったの?」

「金貨二枚」

「…………妥当ね」


 おかげでエキドナは探索者ギルドにストレスなく通うことができている。

 今後はエキドナが行く日に合わせよう、と牡丹も便乗する気でいた。


「そういや、冒険者ギルドは今回動かなかったけどどうしてなのかな。戦える連中居るはずなのに」

「知らないわ。というか探索者と冒険者って何が違うの?」


 この国に来たばかりの牡丹が素朴な疑問をエキドナに投げる。


「大きく分けると距離だね。国内の未開拓区域を開拓するのが冒険者。国境を跨いで未開の地を探索して各国に情報を渡すのが探索者」

「……ざっくりね」

「後は国境を超える際にその国で都度都度登録しなきゃいけないのが冒険者、どこの国でも通用するオールマイティパスが探索者」

「…………冒険者の上位互換が探索者、オーケー?」


 聞いておいてその反応はどうなのかと思うエキドナ、たった数日だが牡丹について思うのはただ一つ……超マイペース、なおかつ興味とかの振れ幅がとんでもない事。ただし正義感と闘争本能は上限突破……どこかのスーパーヒーローかこいつ。


「こまけぇことはイインダヨ、嫌いじゃないよ。そういうの、考えるのは僕の得意分野だしね」

「助かるわ、洞爺さん……無鉄砲だから」

「……レンから君と洞爺が振り回すから楓さんだっけ? 仕方なく移住先決まるまで向こうで待ってるんでしょ? 死の大地」

「ひどいわエキドナ、私は品行方正よ。ちょっと酒場でストリップしてお持ち帰りされそうになって貴族っぽい奴を再起不能にしただけよ」

「ここで絶対やるなよ? いいか、絶対だ」

「フラグね(わかったわ)」

「本音と建て前が逆だよ!? フラグじゃねぇよ!?」

「あなた、面白いわ」

「楓さんとはめちゃ仲良くできそうだよ!! 主に君の取扱いについて!!」


 本当に突っ込み不在の弥生一行で、常識人枠っぽいエキドナと苦労人気質の真司が大体被害にあう構図が出来上がりつつあるのだ。

 被弾率を下げるために肉か……的を増やしておきたいと心底思うエキドナだった。

 

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