ギルド祭の準備をしよう! ②
すみません、出社前になんか書けてしまったのでこのまま投稿いたします(´ω`*)
「という訳で今期のギルド祭、企画運営は弥生秘書官に一任します。反対はありますか? ありませんね? あるならお前が発案しやがれ、以上」
暗黒がそこに在った。
会議が始まって一時間、秘書官と書記官の反乱によりギルド祭の舵を切っていたオルトリンデ管理官はその任を追われた。だって……
「反対意見はありません、オルトリンデ管理官。いくら何でも料理士ギルド以上に美味しいメニューと王城の夜間メイドを招集した挙句、空挺騎士団の飛竜を使ってベルトリア共和国、ミルテアリア魔法国から食材を調達とか……職権乱用も良い所ですよ」
そう、オルトリンデはある一定の時期だけ使い物にならない、と言うか去年まで統括ギルドは散々な目にあっていたのだ。普段は頼れて強い、ついでに可愛い最高の上司なのにギルド祭の時期だけは面倒くさい、暴走する、大体めちゃくちゃになる壊れ幼女となる。
しかし今年は違った。女神が居た。オルトリンデ自身が認め、彼女に物を申せる新鋭気鋭のぶっ壊れ秘書官。
「きちんと判断できる弥生秘書官に、今だけは管理されてください監理官。我々もせっかくですから楽しみたいのは同じなのです」
長年各ギルドの申請作業やら管理やらでこの時期は統括ギルドが繁忙期、大した出し物ができていない現状だ。せいぜい普段あまり使ってない来賓室や、新人のギルド員に勉強も兼ねて統括ギルドツアーなる面白みのないイベントに終始している。
「何か楽しい出し物にできるよう、書記官一同で弥生秘書官をサポートしますから!!」
「お願いですから純粋に祭りを楽しむ側に回ってください!!」
「僕らの成長を見てください!!」
彼らは必至だった、本来であれば不運にも先輩方に押し付けられた新人書記官……弥生の同期である彼ら彼女らがオルトリンデの暴走に巻き込まれると冷や冷やしていたのに。希望の星、日下部弥生秘書官がついているのだ。
「しかし、今期はギルド祭50周年記念……私だって特別な思いが……」
ぷう、とほほを膨らませ仕草は可愛いのに瞳は闇色に染まりある種の狂気がにじみ出ている監理官を打ち砕く勇者はここにいる。
「オルちゃん。よく聞いて」
「何ですか裏切者」
「現場を知る事は良い事だよね?」
「ええ、そうですよ。例えどんなに机上で優秀な働きができても現場の気持ちを知らない者に現場は任せられません」
「そうそう、だったらやっぱりこの特別なギルド祭の『現場監督』は特別な人がやるべきだと私は思うの」
「……一理ありますね」
ねぇよ、現場の人間に卒倒レベルのストレスかかるじゃねぇかよ。とキズナが会議室の隅っこでつぶやくが誰もその言葉は拾わない。
「だからこそ、今回は私が企画運営の総監督をするの。でも私は初めてのギルド祭、とても現場までは目が行き届かないんだよ」
そんな事ねぇよ、あんたどんな現場にもいるじゃねぇかよ。
ベテラン書記官が弥生の言葉に思わず突っ込みを入れたくなるが、ぐっと我慢だ。
今の所弥生が上手く監理官を光の道に戻せるかどうかの瀬戸際、余計な事は出来ない。
「そうですね……」
「そんな時、大ベテランの熟練者が縁の下を支える。これこそ理想な新人育成じゃないかと私は思うんだよ」
言葉だけを聞くと大変ホワイトだが、そもそも弥生が原因で働き方を望んでブラックに染めた職人書記官何人出たんだろう。と言う事実は蓋をされる。
「……弟子に教わるとはこのことですね」
「オルちゃん!!」
ふっ……と物憂げに吐息を吐くオルトリンデだが、ただ単に雰囲気に流されているだけである。普段から彼女は実践している事ばかりなので、何をいまさら……と本来なら笑い飛ばされるのがオチだ。
「では『美人どころを揃えて見えるか見えないかギリギリのスカートで給仕をするメイドカフェ。メニューは一律! 王城でふるまわれる美味にメイドさんの愛がトッピング!! 透けてる不死族メイドさんが貴方の眼前に来るかも!』はあなたに託します」
「しないからね?」
「なんでよりによって50周年でそんな特定の客層にしか受けない上に、運営の権力でごり押ししたかのような企画なんです」
弥生を旗頭にした年配の書記官が頭を抱える。
ちなみにこの発案者は牡丹であり、よりによって一番参考にしてはいけない相手に意見を求めた結果だった。
「お色気は強いんです」
「弥生秘書官! オルトリンデ管理官がご乱心だ!! 施療院にぶち込んできてくれぇ!」
不退転……オルトリンデの眼にそう書いてあったのをベテラン書記官は見えた気がした……気がしたので速やかにご退場願う。素晴らしい連携のもとに書記官達はオルトリンデの両手を引いてずーるずる、と外へ連れて行って文香の元へと連行した。なんでって? 文香に叱ってもらうためである。
「という訳なのだ」
「一切合切、承知……」
これはあかん、確かに一番の新人の弥生に白羽の矢が立つ訳であった。




