タイミング
(あ。電車来た)
F田さんは、椅子で待とうとして止めた。
プラットホームに、四つ連結しているタイプの、待合用の座席で、となりにはもう一人、若い男が座っていた。
朝の【快速急行】に乗って、大学に向かう。
冬の寒さは、ぎゅうぎゅう詰めの車内に入るなり消えた。
授業を終えて、F田さんは自宅に帰ってきた。
リビングのテレビを点けて、夕方のニュースを見る。
通学に使っている駅が映っていた。
現場には血の跡がビシャリと付いている。
殺人事件があったらしい。
犯人は既に捕まっていて、それは今朝方、F田さんの丁度隣にいた男だった。
彼は犯行の動機について、こう語っている。
『次に自分の横に座った人を、刺そうと思っていたんです』
※この物語はフィクションです。
読んでいただき、ありがとうございました。
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