杉本佳奈絵インタビュー 歌うことに自信をくれた人との出会い
シンガーソングライター・杉本佳奈絵が鮮烈なデビューを飾ってから1年。
デビュー曲「明日の居場所」は配信開始から1年経ち、MyTubeでのMV再生回数が1億回を超えるヒットを飛ばしている。
ポップで可愛らしい曲調に乗せた、儚くも前向きな歌詞は、聞く者の心を掴んで離さない。
メディアでその名を見ない日がない程に、話題の彼女である。
筆者もファンの1人であることは言うまでもない。
彼女が観客が一人もいない中で歌い続けたところから、デビューに至りその才能を開花させた話は、この記事を読んでくださる人なら誰もが聞くところだろう。
そんな彼女のデビューに至る経緯や楽曲の紹介は、他の媒体でも取り上げられている。
今回は、彼女がデビューする前の、プロデューサー・MEIと出会うきっかけとなったエピソードが聞けたのでご紹介しよう。
――デビュー前は、○△駅の前で歌っていたそうですね。
杉本「はい。あの頃は自分に自信がなくて、終電後の誰もいない時を見計らって駅に行っては、誰も聞いてないのを確認してから歌ってましたね。家で歌うとご近所迷惑になるし、誰かに聞かれるのも恥ずかしかったので」
――あんなに歌がお上手なのに!
杉本「ありがとうございます(笑) でも私、カラオケもみんなの前では歌えなかったんですよ。その位、自分の声にも歌唱力にも、自作の歌にも自信がなかったんです」
――歌が上手なのと歌に自信があるのとでは、やっぱり違うという事ですか。
杉本「自分では今でもそんなに上手だとは思ってないんですが、そうかも知れません。そんな私に自信をくれた人と、そこで出会ったんです。あの人と出会っていなかったら、私はデビューもしなかっただろうし、当然ここでこうしてインタビューなんかも受けていなかったんだろうなと」
――その運命の出会いは、やっぱりプロデューサーのMEIさんですか?
杉本「それが、違うんです。誤解されてる方が多いみたいなので、ここで言わせてもらって良いですか?」
――もちろんです!
杉本「あの人を初めて見たのは、MEIさんに出会うちょっと前だったんです。いつものように歌って、歌い終わってから人影が目に入ったんですよ。私、誰もいないと思ってたから驚いて、逃げちゃったんですよね。自分の歌を聞かれてたのが恥ずかしくて恥ずかしくて、その日は家に帰ってからずっと布団を被って悶えてました」
――誰にも聞かれてないと思っていたのに人がいたら、そりゃ驚きます。
杉本「でしょう? でも、一晩中布団にくるまって転げ回って、ふと思い出したんですよ。あの人の表情。私が気付いたのに気付いて当然びっくりしたんですけど、その前、一瞬。とっても優しい目をして、何というか、一生懸命な子供を見守るみたいにこっちを見てくれてたのが。多分、私の邪魔をしないよう、静かに聞いてくれてたんですよね」
――杉本さんの歌を間近で聞いたら、僕もそんな表情になると思います。
杉本「それは喜んで良いんですかね」
――ぜひ喜んでください!
杉本「あはは。それで、申し訳ないやらありがたいやら、そんな気持ちになって。次の日、謝りに行ったんです。もちろん駅にいるって保証はありませんでしたけど。もしいなかったら、今までと同じように、また会える時まで毎日歌おうと思って」
――会えたんですか?
杉本「会えたんです! だから、昨日は逃げてごめんなさい、歌を聞いてくれてありがとうと伝えました。あの人は笑って首を振って、私に歌ってほしいって言ってくれたんです。それが嬉しくて。恥ずかしいって気持ちよりも、私の歌を聞いてくれて嬉しいっていう気持ちが上回ったのは、それが初めてだったんです」
――その人が、杉本さんに自信をくれたんですね。もしかして、恋愛に発展したりとかは?
杉本「どうなんでしょう。それからは、毎日隣で歌いました。私は、私の歌が好きだって言ってくれて嬉しかったし、一緒にいられて楽しかったんです。でも、あの人は私のことだけ聞いて、自分のことを話してくれなかったから、それ以上踏み込めなかったんですよね。私の片想いだったと思います」
――それは切ないですね。
杉本「でも、それで良かったのかも、とも思うんですよ。あの人とは連絡先も交換してなかったんですけど、もし繋がっていたとしたら、MEIさんと出会うこともなかったでしょうから」
――MEIさんと出会ったのが、その人と出会ったのと同じ駅だったということと、何か関係があるんですか?
杉本「はい。MEIさんと出会った日は、終電前に駅に行ったんです。あの人に歌を聞いてもらって、好きって言ってもらえて自信がついて、もっと色んな人に聞いてほしいって欲が出ちゃったんですよね。そこでMEIさんに聞いてもらえたんです。考えてみたら、全部あの人のお陰なんですよ。あの人に出会ってなければ、私は終電前に駅に行くことは絶対にしなかったでしょうから」
――運命的ですね。その後、その人と会うことはありましたか?
杉本「残念ながら、1度もありません。MEIさんと出会ってから、とんとん拍子でデビューが決まって、しばらく終電後の駅に行けなかったんです。少し時間ができるようになってから何度か行ったんですけど、やっぱり出会えませんでした」
――いつか出会えると良いですね。もしかすると、これを読んで何らかの形で連絡をくれるかも知れませんよ。お心当たりのある方、ぜひ編集部にご連絡を!
杉本「あはは。連絡があると良いんですけど、多分ないと思います。あの人はこういう媒体を見ないって言ってましたし。それに、実はMEIさん、何度か終電後に歌う私を見かけていたらしいんですよ」
――それは初耳でした。
杉本「私も初めて言いました(笑) それで、MEIさんは私があの人の隣で歌ってた時も見かけたそうなんです。でも、よく話を聞くと私は1人で歌っていて、そばには誰もいなかったって言うんですよね。つまり、そういうことです」
――え、まさか杉本さんの妄想、もしくは幽霊ですか?
杉本「私は、あの人は本当にいたと思っていますけど、どう思われるかは、聞いた方次第ですね」
――杉本さんがいると仰るなら、僕はいると信じます! では、その人に向けてコメントをどうぞ。
杉本「あはは。そうですね……。急に会えなくなってごめんなさい、あなたのお陰で今の私がいます、ありがとう。また会えたら嬉しいです。でしょうか」
――ありがとうございました!
杉本「こちらこそ、ありがとうございました」