表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ハンブンチョウダイ・・・

ん〜〜〜っ!やっぱこれこれ!

アタシぐらいの達人になるとさ、もうモチモチとかプニプニとかの食感じゃ物足りないんだよね〜。

この噛み砕いた時のバリバリッ!ガリガリッ!って音聞かないと『タピオカ食ってるっ!』て感じがしないのよ〜。

そうそう、このタイプのタピオカの店ってなかなか無いからさ、めっっっっちゃめちゃ!探したんだよね〜。この

【頑固おやじの店 俺様のタピオカ】!!

いや〜この店さぁ、TVはもちろんネットでもほとんど話題

になってないからさ、たどり着けたのほぼ奇跡!

でもでもぉ、苦労した甲斐は大あり!

味は大満足!100点寄りの100点だよね〜。

も、アタシここの店でしかタピれないもん。

いつ来てもガラガラだから、並ばなくてもいいしね。

・・・うん?プッ、あっははは、アンタにはまだこの店は

ちょっと早かったかな?まだ春水堂やゴンチャあたりに有難がって並んでるタピオカルーキー、略してタピオカルーキーだもんね〜。ま、アタシクラスのタピオカマスター、

略してタピオカマスターとは味覚のレベルがかなり違うか

ら、なかなかこの店の奥深さが・・・・・・えっ?なに?

さっきの話の続き?・・・・ん〜〜〜、ま別にいいけどぉ

そんな面白い話でも無いよ?単なる子供の頃の思い出話だからね。


あ〜っと・・・どこまで話したんだっけ?

あっそうそう、だからさ《もう一人のアタシ》がいたのよ

ちっちゃい頃ね。

物心がつく前から当たり前みたいに側にいたからさ、パパにもママにもその子の姿が見えてないってのも特に不思議には感じてなかったんだ〜。

そうそう、アタシにしか見えなかったの。

うん、もう見た目は完全にアタシと全くおんなじ。

顔も髪型も着てる服とかも。

ううん、毎日一緒って訳じゃなかったよ。

3、4日連続で居る事もあったけど、1週間くらい出てこない時もあったし。

平均すると、週に2日くらいだったと思うけど、あんま良く覚えてないや。

いやだってさ、特にあの子との思い出とか無いんだもん。

ほとんど喋んなかったからさ、あの子。

アタシの側にいてジーッとこっち見てるだけなのよ。

いくら話し掛けてもさ。

ただ、たま〜に一言だけ喋ったのよ


『ハンブンチョウダイ・・・』って。


アタシがごはんやおやつ食べてる時とか、新しいオモチャや洋服なんかを買ってもらった時に。

今になって考えると、なかなかの厚かましさだよね〜。

一口ちょうだいとか、一個ちょうだいとかならまだしも、


『ハンブンチョウダイ・・・』だもんね〜。


うん、基本的にはあげてたよ、半分。

アタシが頼むと、ママはごはんもおやつも必ず2人前用意してくれたし、パパもおねだりすると服もオモチャも同じのを2つ買ってくれたんだ〜。

あははっ、確かにパパもママもアタシには大甘だったけどさ、それだけじゃないのよ、理由があるんだわ。

実はね、《もう一人のアタシ》の正体ってわりかしはっきり分かってたんだよね〜。

アタシが小学校に上がる時にパパとママからちゃんと話してもらったんだけどね、アタシってホントは双子だったんだって。

ママが妊娠した時にはね。

でも産まれて来るちょっと前に、お腹の中で死んじゃったんだって、お姉ちゃんだか妹だかわかんないけど。

だからアタシが自分達には見えない《もう一人のアタシ》の話しをするのを聞いて、パパとママはちょっと嬉しかったみたい。

死んじゃったもう一人の我が子が、完全に消えて無くなった訳じゃないんだって思えたんじゃないかな。

だからさ、あの頃のアタシの部屋ってさ、事情を知らない人が見たら結構不気味だったと思うよ。

オモチャもぬいぐるみも洋服も、全部同じのが2つづつあったからね〜。

1人部屋なのに2段ベッドだったし、最終的には勉強机まで2つあったんだもん。


ううん、今はもういないよ。

もうだいぶ前から。

うん、覚えてるよ、あの子がいなくなった時の事は。

はっきりとしたきっかけがあったからね。

アンタにはまだ言ってなかったと思うけどアタシね、小学校6年の時に結構長い事病院に入院してたのね。

ん〜っとね〜、実はなかなかややこしい病気でね〜。

ま、簡単に言うと、内分泌系の病気だったのよ。

いや別に命にかかわるって程では無かったんだけどさ、でも完治するまではまだまだ何年もかかるってお医者さんからは言われててさ〜、マジ地獄よ。

とにかく治療がめっっっちゃしんどくてね〜。

いろんな薬しこたま飲まされるんだけどね、これがアタシの体には合わなくてさ〜。

も、ず〜〜〜っとキッツイ訳よ。

な〜んも出来ないの。

なんもしたく無いしさ。

ホントにただ病院のベッドの上でメシ食って屁ぇーこいて

寝てるだけよ。

そ〜だぁ〜ね〜、間違いなくアタシの人生で最悪の大暗黒魔王降臨時代だったよね〜。

しかもさ、しかもさ、実は入院するまでアタシさ、小学校でガチ寄りのガチでイジメられてたんだよね〜。

も、最悪よ、なんもかんもが。

そりゃ荒れるでしょ。

完全無欠の自暴自棄だよね。

ママにもパパにもお医者さんにも当たり散らしてさ。

毎日毎日絶&望が鬼てんこ盛りな訳。

ま、そんな感じで入院してから1カ月くらい経った頃だったかな?初めて病室に《もう一人のアタシ》が現れたのさ、久々ぶりぶりにね。

うん、そん時はママもパパも誰もいなくてね。

で、いつも通りあの子は部屋の隅っこでポツンと突っ立って、アタシの事ジーッと見てたのよ。

でもさ、そん時のアタシの精神状態って最悪じゃない?

おもっきり怒鳴りつけちゃったんだよね〜。

『何しに来たのよ!一人にしてよ!アンタなんか消えちゃえ!』とかなんとか。

結構長めのサイズでわめき散らしてたんだけどね、やっぱあの子は黙って、ただアタシの事ガン見してた訳よ。

んで、しばらくたって怒鳴り疲れて、アタシ泣いちゃったんだよね、メソメソメソと。

したらあの子、その状況で例のあのフレーズぶっ込んで来たのよ。


『ハンブンチョウダイ・・・』って。


アタシあったま来ちゃってさぁ〜。

「ふざけんな!今のアタシが何をあげられるってのよ!」

ってまた怒鳴った訳さ。

そしたらあの子、初めて違う事喋ったのよ。


『アナタヲハンブンチョウダイ・・・』って。


いや、そりゃ今冷静に考えたらスゲ〜怖い事言われてるってわかるけどさ、そん時のアタシってばもう頭大パニクりまくり大会だったからさ、なんか逆に・・・ま、なんの逆かわかんないけど、わらけて来ちゃってさ〜。

「はっ!アタシなんかが欲しいの?いいよいいよ、欲しけりゃあげる。半分切り取って持ってきなよ、ほらほら!」

ってゲラゲラ笑いながらあの子が言った訳。

それ聞いてあの子、笑ったんだ〜初めて、ニコッて。

んで、そのままスーッて消えちゃったの。

うん、それが最後。

理由は分かんないけど、もうそれっきり。

ま、関係あるかどうかは知らないけどさ、ちなみにアタシ

その直後に初めての生理が来たんだよね〜。


それはともかくさ、問題はその後よ。

次の日から急に減り出したんだわ、体重がさ。

いや、そりゃ嬉しかったよ、最初はね。

それまでの生活とな〜んも変えてないのにダイエット出来てたんだもん。

でもさ、でもさ、止まんないのよ。

そ、どんどん減ってくの、体重。

ガチで止まんないの。

うん、マジでなんもしてなかったよ、運動とかさ。

でも止まんないの、ゴリゴリに減ってくのよ。

10日後には8キロ近く痩せててさ。

病院の先生も、さすがにこれはおかしいってなってさ、色々な検査とかやったんだけどね、結局理由は分かんなくてね〜。

ごはんの量もさ、結構な感じで増やしたりとかしたんだけどね、止まんないのよ、これが。

何をどうやっても、ガンッガンに痩せてくの。


結局ものの2ヶ月で元々の体重の半分になっちゃったのよ。

そう、ガチでぴったし半分。

で、退院したの。

治ったから。

お医者さん達、みんな首かしげてたもん。

完治するまでまだ後何年もかかるはずだったのに、たった2ヶ月で治っちゃったからね。

「完全に健康体です」って言われたもん。

んっ?体重?その時?

43キロだよ。

元々は86キロあったんだもん、アタシ。

そ、小6の時、150㎝で86キロ。

さっき言ったでしょ?内分泌系の病気だったって。

ホルモンバランスがおかしな事になっててさ、もー水飲んだだけでも太っちゃうのよ。

だからすっごいデブだったの、アタシ。

うん、学校でイジメられてたのもそのせい。

それがゲンキンなもんでさ、痩せてから登校したら、それまでアタシの事先頭切ってイジメてた男子グループの奴ら

急に手のひら返してやんの。

なんかもう、いろいろと優しいのよ。

それ見て「あらやだ、アタシってかわゆいのね」って初めて気付いたんだよね〜、へへへ。

ま、そっからは転げ落ちるようにギャル化の一途を辿り続け、今日に至る訳ですわ。


ん?なに?

感動的?

めっちゃいい話?

あ〜、まぁそうか・・・。

たぶん《もう一人のアタシ》が、病気と脂肪のかたまりの

アタシの半分を連れて天国に行ってくれたんだよね。

そのおかげでアタシが助かったんだもんね・・・。

・・・クックックッ・・・

そう・・・だよね・・・。

クックックッ・・・感謝しなきゃだよね・・・・


・・・クレテアリガトウッテネ・・・


ん?ううん何でもないよ。

あ!んな事よりさ、それもう飲まないの?

その“とんこつこってりバリカタタピオカましましバトルロイヤルミルクティー”?

飲まないんだったらさ、




ハンブンチョウダイ・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 明るい語り口調が却って怖さを誘いますね。 もう片方は彼女の中に同居しているのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ