4.突然の出会い
※前話が長かったので分割しました
もさ、もさ、もさ。
翌朝。
俺は顔に当たるフサフサとした尻尾の感触で目を覚ました。
「うーん。サブローさん、くすぐったい」
俺は目の前のフサフサ尻尾を退けようとしてハッと目を覚ました。
何か、この尻尾大きいぞ。
しかもサブローさんの尻尾はくるんとしてて白っぽいのに、この尻尾はブワッと真っ直ぐで黒っぽい。
恐る恐る尻尾の主を見ると、そこに居たのはクマみたいに大きなキツネだった。
「うわっ!」
思わず大きな声を出して後ずさりする。
ここ、キツネの巣だったのか!!
見ると周りにはワラワラと小さいサイズのキツネもいる。
ここはキツネ親子の巣だったのだ。
すると巨大キツネがベロリと俺の頬を舐めた。
「ひえっ!」
びっくりした。食われるかと思った。
横を見ると、サブローさんは小狐の中に紛れて眠そうに寝返りをうっている。
「クンクン」
寝言を言いながらビクビクと体を動かすサブローさん。どんな夢を見てるんだろう。
「サブローさん、色が似てるから違和感が無いな」
そんなサブローさんのことも、大きなキツネはペロペロと舐める。
なぜか分からないが、このキツネには特に俺たちに対する害意は無いようだ。
それどころか、どうやら俺らのことを自分の子供だと思っている節がある。巣穴の匂いと同じだからだろうか。
俺はサブローさんが巣穴に体を擦りつけていたことを思い出す。
もしかしてあれが良かったのだろうか。
穴の外は霧が出ていてかなり冷え込む。俺はサブローさんとキツネたちの毛の中に潜り込んだ。
暖かい……。
俺はモフモフの暖かい毛の中で二度寝した。
◇◆◇
日が昇り、暖かくなってきた頃、俺たちはそろそろとキツネの巣から這い出した。
「さ、そろそろ行くか、サブローさん」
「ワン」
「今日こそは人の住んでる町か村を見つけないとな」
「ワン!」
何しろ昨日から何も食べてない。そろそろ限界だ。
「くん?」
しばらく森の中を歩いていると、サブローさんが急に上を向いて鼻をヒクヒクさせ始める。
「どうしたんだサブローさん」
一目散に走っていくサブローさんの跡を追うと、急に視界が開けた。
「あっ」
目の前に広がっていたのは河原だった。
「良かった。これで飲み水が確保できるぞ!」
それだけじゃない。川に沿って下流へと歩いていけば人里に辿り着く可能性も高い。ようやく食べ物と寝床が確保できるぞ。
「冷たい。体に染み渡るようだ」
川で水を飲むのに夢中になっていると、突然サブローさんの叫び声が響いた。
「キャイーン!」
「サブローさん?」
慌ててサブローさんの方を見ると、ブルブルと何度も体を震わせたりして、明らかに様子がおかしい。
「どうした?」
サブローさんに恐る恐る近づく。前足をバタバタ動かして、鼻のあたりをしきりにこすっている。明らかに何か変だ。
「サブローさん、どうしたんだ?」
近寄ってみて分かった。
サブローさんの鼻に、水色がかった透明のアメーバみたいなのが張り付いてる。
「なんだこれ」
サブローさんの鼻からアメーバを引きはがそうと引っ張る。
だが、みょーんと伸びるばかりで一向に剥がれる気配はない。
「きゃうん……」
悲痛な声を出すサブローさん。
「クソッ、一体どうしたら」
すると、どこからか甲高い声が響いてきた。
「どいて!」
「え?」
反射的にサブローさんから離れる。
続いてこんな声が聞こえた。
「アイス!!」
ピキと音がした。
まさかと思いサブローさんの鼻を見ると、サブローさんの鼻が凍りついてる。
「サブローさん!」
「きゃん」
サブローさんがブルブルと震えると、パキパキに凍ったアメーバがボトリと地面に落ちた。
ほっと息を吐き出す。
「良かった」
俺は再びサブローさんに近寄ろうとした。
だが――
「ちっ、仕留めたのはスライムだけか」
木の影から、弓矢を持った金髪の少女が現れた。
「誰だ?」
女の子は俺の問いには答えず、弓を構える。
「なんだヒトか。動くな。その獣から離れろ」
年のころは十四歳くらい。
艶のある長い金髪を肩に垂らし、色白の肌に緑の目をしている。ピンと尖った長い耳が特徴的だ。
ちょっと待てよ。昔、こういうのファンタジー映画で見た事あるぞ。
「私は近くの村に住むエルフ族のトゥリン」
そうそう、エルフ!!
俺が納得していると、突然現れたエルフの少女、トゥリンは弓を構え、険しい顔をした。
「そこをどけ。その獣は私の獲物だ!」
は?