28.現れし四天王
「誰だ!!」
声のした方に視線をやると、木の葉の間から、不気味な黒いローブの男が現れた。
「お前は!?」
サブローさんも歯をむきだしにして低い唸り声を上げる。
「黒いローブ……まさか、町で私たちの事を尋ねていたというのは」
クックック、と男が低い声を漏らす。
「そうだ。探したぞ、伝説の勇者」
やはりそうか。
風で不気味に揺れる黒いローブ。フードを目深に被っているため、その表情は見えない。
「勇者?」
モモがトゥリンに尋ねる。
「シバタの事だ」
「ご主人を探してどうする気です!」
フッ、とローブの男の口元が緩む。
「……殺す!」
「なっ!!」
トゥリンが弓矢を構える。
「させるかぁ!」
ヒュン!
空を切り裂き飛んだ矢は、黒いローブの男に命中する。が――
パサリ。
男の身にまとっていたローブが地面に落ちるものの、男の姿はどこにもない。
「あいつ、どこにいった!?」
モモが鼻をヒクヒクさせる。
「ここにいるさ」
目の前に現れたのは黒い霧。
「まさかあいつ、実態が無いのか!?」
「何っ!?」
「ククククク。我が力はまだ復活途中。今日は代わりにこいつにお前らの相手をしてもらおう」
そう言って、黒い霧は消えた。そして現れたのは――
グルルルル……
現れたのは、見覚えのある三ツ目の熊。
黒い霧に操られているのか、その目は赤く充血し、涎をボタボタこぼしている。
「なんだテルティウス・グリズリーか」
流石に見るのは三回目なので少しは冷静に身構える。
「ふふふ、よく知ってるな。鋭い爪と牙を持つこいつは『森の王者』とも呼ばれる凶暴な獣よ。いかに勇者と言えど」
「サブローさん」
俺は黒い霧の言葉を遮り言った。
「ワン」
「サブローさん、炎」
俺が命令を出すとサブローさんは大きく息を吸い込むと、真っ赤な炎を吹いた。
「何っ!?」
ゴオオオオオオオ!!
竜をも焼き尽くす高温の炎がグリズリーを襲う。
「グオオオオ」
たちまち丸焦げになるグリズリー。
実は前にドラゴンを倒してから、ひっそりと炎をどうにかしてお座りや待てのように命令化できないか訓練を続けていたのだ。
「オラッ!」
仕上げに、俺は黒焦げになったグリズリーの第三の目にサブローさんのウ〇チシャベルを突き立てた。
ガキッ。
目玉ではない何かに当たる感触。
見ると、黒い水晶玉だ。
あの時の、ドラゴンの体に入っていたものと同じ。
「まさか」
砕け散る黒水晶。そこから黒い霧が吹き出し空へと向かっていく。
「ふふ、少しはやるようだな。だがそいつは魔族の中でも下っ端。これからはさらに強力な魔物がお前を襲うことだろう! ふははは……ハハハハハハハ!!」
響き渡る声。
「我が名は魔王軍四天王が一人ゾーラ。覚えておけ」
「四天王……」
水魔法で木に燃え移った火を消していたトゥリンが声を上げる。
「つよそうですね」
尻尾を下げしゅんとなるモモ。
「ああ」
魔王軍四天王。一体どんな奴らなんだ?
◇◆◇
四天王の一人に遭遇してからしばらく歩いていると、急に道が開けた。
「村だ!」
モモが飛び跳ねる。
「イクベの村ですか!?」
ブンブンと尻尾を振るモモ。
目の前に広がる緑色に広がる畑と、崖沿いの洞窟に穴を掘って作った家。
「ああ、たぶん」
「良かった、日が暮れる前に村に着きそうだ」
オレンジ色の光を落とし始めた太陽。トゥリンはため息をつく。
「しかし、宿屋なんかあるのかな」
シロツメクサが一面に生えた田舎道を歩きながら村へと向かっていると、農民風の服を着た第一村人を発見した。
「お、丁度いいところに」
俺は村人に駆け寄った。
が、何だか様子がおかしい。まず身長が小さい。130cmくらいだろうか。それから帽子で覆われた頭は大きいし、手足の様子も何か変だ。
「ん? まさかコボルトか?」
トゥリンが顔を引きつらせる。
「コボルト?」
「あのーすみませんっ!」
モモが声をかけると、村人はビクッと身を震わせ振り返った。
「は、はい?」
俺は振り返った村人を見て息を飲んだ。
鼻のあたりに皺が寄った特徴的な顔。
大きな丸い瞳に、毛色は薄茶色で黒い垂れ耳。
「パグだ……」
俺は思わず呟いた。
振り返った村人の顔は、パグそっくりだった。
◇柴田のわんわんメモ
◼パグ
鼻が低く、ギュッと真ん中に寄ったシワの多い顔に、垂れ耳が特徴。毛色はフォーン(薄茶色)かブラックが多い。チベットの僧院で飼育されていたものが交配の結果小型化し、その後中国に入り飼われるようになった。人気犬種16位。




