18.奴隷ショップ
俺とトゥリンは、男について奴隷ショップへとやってきた。
「本当にこんな所に犬が?」
大きな瓦屋根の屋敷を見上げる。
「騙されてるんじゃないのか? きっと高い値で奴隷を売りつける気なんだ」
トゥリンは顔をしかめる。
「売りつけられそうになったら逃げるよ」
そう言って門を潜ると、突然声が響いた。
ウウーーーー!!
アオォォーーーン!!
建物の中から響く遠吠えのような声。
「なっ……オオカミ!?」
動揺するトゥリン。
「あおーーん」
すると突然、サブローさんも鼻を上に上げて遠吠えし始めた。
「どうしたんだサブローさん」
「サブローさんは、他の犬が遠吠えしてるとつられて遠吠えすることがあるんだ」
ちなみに他の犬の遠吠え以外にも、救急車や竿竹屋、石焼き芋、選挙カーにも反応する。
これは犬の遠吠えとマイクの周波数が近いためだ。
「ふふ、仲間の声に反応しているようですね。さあ行きましょう」
奴隷ショップの中に入る。
中には、人間やエルフ、角や羽、尻尾のついた人間が牢の中に繋がれていた。
俺は思わずサブローさんがいた犬の保護シェルターを思い出した。あそこの方がまだ広くて綺麗でマシに思える。
「きゅん……」
小さく震えるサブローさんを、俺はギュッと抱きしめた。
「大丈夫だ」
「さて、着きましたよ、ここです」
一番奥の部屋を指さす男。
そこには、白い毛に黒の模様が入ったオオカミのような生き物が横たわっていた。
「モモ、お客さんだよ!」
男が呼びかけると、モモと呼ばれたその獣はピクリと耳を動かすと、ゆっくりと身を起こした。
体はサブローさんと同じくらいの大きさだが、顔つきは幼く、まだ幼獣のように見える。
トゥリンが眉をひそめる。
「なんだ、ただのオオカミの子供じゃないか」
「いや」
俺はその獣をじっと見つめた。
確かに、見た目はハイイロオオカミに似ている。
けど――
「ワン」
モモはサブローさんを見ると、びっくりした顔で小さく吠えた。
「こら!」
途端、奴隷商の男はモモをバシリと鞭で叩く。
「きゅん」
モモは丸まってビクビクと震えた。
「すみませんねぇ、まだ子供なので、躾がなっていないんですよ」
「いえ」
俺はサブローさんをトゥリンに預けると、モモにゆっくりと近寄りその体をじっと観察した。
いや、狼じゃない。
「イヌだ。子犬だな。シベリアンハスキーだろうか」
異世界の犬種はよく分からないから、もしかすると全く未知の犬種かもしれないが、どちらにせよこいつは犬だ。俺は確信した。
「そうですか! 実はこの子、中々人に慣れなくて引き取り手が居ないんです。銀貨5枚でお譲りしますがどうでしょう?」
揉み手をしながら嬉しそうに奴隷商は言う。
俺は即答した。
「いいだろう」
「ちょっと、シバタ!!」
わなわなと震え出すトゥリン。
「この子を飼うのに何か手続きは必要なのか?」
「いえ、特に獣を飼育するのに届け出は必要ありませんよ」
「そうか」
ぐい、とトゥリンが俺の腕を引っ張る。
「どうすんだ、うちにはサブローさんも居るんだぞ」
「一匹も二匹もそんなに変わらん」
「ええ……」
俺は問答無用で支払いを済ませ、モモの鎖を引っ張った。
「見ろ、鎖も首輪もついてる。なんてお得なんだ」
「は、はあ」
「ケージとかは必要かな? トイレシーツとかこの世界にあるのかな。そもそもトイレトレーニングは」
ブツブツ呟く俺に、トゥリンは大きなため息をついた。
「勝手にしてくれ」
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◇柴田犬司 18歳
職業:勇者
所持金:銀貨5枚、銅貨4枚
通常スキル:言語適応、血統書開示
特殊スキル:なし
装備:柴犬、猟師のブーツ
持ち物:レッドドラゴンの首輪 散歩用綱、黄金のウ〇チシャベル、麻のウ〇チ袋
仲間:トゥリン (エルフ) 、 モモ (犬?)new
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「シバター、晩御飯出来たぞ」
トゥリンの声で目を覚ます。
どうやら買い物の後ベッドで少し横になるつもりがいつの間にか寝てしまったようだ。
「ああ、今行く」
俺はベッドから起き上がろうとした。
が、その時異変に気づく。
「起きたですか、ご主人」
見知らぬ女の子の声。
恐る恐る横を見る。すると――
俺の横には、犬の耳と尻尾が生えた、見知らぬ裸の女の子が寝ていた。
メッシュみたいにところどころ黒い毛の混じった銀色の長い髪。
ピンと立った獣の耳にフサフサの尻尾――そして人間の体。
「ごはんですか、ご主人。早く行きましょう!」
女の子はパタパタと尻尾を振ると、ニコリと笑った。
え? 何これ?
◇柴田のわんわんメモ
◼シベリアンハスキー
・白地に黒、茶色などの毛。オオカミに似たも外見の大型犬。シベリア北部で先住民が犬ぞりを引く犬として飼育していた
・かつて『動物のお医者さん』に出てくる犬として大ブームを巻き起こしたものの、捨て犬が続出するという悲劇に見舞われた




