第二十七章 篠ノ目学園高校(木曜日) 2.放課後
本話は少し短いので、二話分同時掲載です。
時折小雨が混じる薄曇りの天気。校庭の隅で話すのにも親水公園に行くのにも不適当という事で、僕たちは今日も「幕戸」に立ち寄って話をしている。
「……じゃあ、当面は匠のチームも血小板は要らないんだね?」
「あぁ、何人か食い付きそうなやつはいるが……さすがに俺たちだけで死刑宣告者に向かうなんて自殺行為だからな。……あ、でも『黙示録』が動くようなら教えてくれよ?」
「ケインさんたちが許可してくれればね。一応、個人情報になるんだから」
「あぁ、勿論それで良い」
「けど、蒐君は相変わらずぶっ飛んでるね~」
「どういう意味さ、茜ちゃん」
品行方正が服を着て歩いているような僕を指して言う言葉じゃないよね。
「だって、何か騒ぎが起きたら、大抵は蒐君が関わってるじゃない」
「蒐は普段おとなしいくせに、いざとなると思い切りが良いからな」
「何でさ! 原因は大抵匠じゃん!」
いつだって僕は巻き込まれているだけだよ!
「混ぜるな危険、って言われてたものね」
「「何でだよ!」」
一頻り無実を主張したところで、他のお客さんの迷惑になるからと宥められ、話題を転換する事になった――僕は納得してないけどね。
「で、蒐君は他に何か見つけたの?」
「何で僕ばっかり訊問されるのさ……種子を拾ったくらいだよ」
「質問の答えは、経験則だから、だな」
「実際、何か見つけてるし……種子?」
三人が不思議そうな顔をしているので、ナントさんと話した事を説明しておく。
「……あぁ、そう言えばあったな。発芽しない種子の謎」
「勝手なものを栽培できないようにしてる……っていう意見が支配的だったけど」
「蒐君の話だと違う?」
「蒐、試してないのか?」
「畑も無いのにどうやって試すのさ?」
「あ~……それもそうよね」
「けど、この事が知られたら、生産職が騒ぎそうよね」
「転職済みの連中から恨み言が聞こえてきそうだな……」
「む~、早く情報を流した方が良いのかな?」
「でも、どこに流すのさ? 僕、お百姓さんに知り合いはいないよ?」
「ナントさんは?」
「心当たりが無いって」
「俺も無いな……」
八方塞がりかと思い始めたんだけど、要ちゃんに心当たりが有るみたいだ。
「心当たりという程でもないんだけど……栽培スキルを取っていそうな魔法職を知ってるから、話を通してみるわ」
「あ、ひょっとして……?」
「えぇ、そう。あの娘なら興味を持ちそうでしょ?」
「よく解らないけど……種子はどうすればいいの?」
「そうね……やっぱりナントさんに預けておいてもらえる?」
「うん……ナントさんの許可が貰えればね」
明日にでもナントさんに相談してみよう。




