第二十七章 篠ノ目学園高校(木曜日) 1.昼休み
今日は天気が好くないので恒例の屋上はやめて、食堂で昼食を摂っている。今日も要ちゃんが参加しているから、人数は四人だ。
「で、蒐は【錬金術】と【調薬】のレベリングは進んでるのか?」
「う~ん……順調なのかそうでないのか……邪道スキルの割に順調、っていうのが正解かな?」
「……つまり順調に遅々として進んでいる、と」
「何というか……要ちゃんの言い方は日本語としておかしい気がするけど、状況は的確に伝えてるね」
「地道に努力が実ってる、ってところか?」
「そんなところかな。あ、そうだ、紫斑毒って知ってる?」
そう訊いたところが、三人とも急に真面目な顔つきになった。
「そういう台詞が出てくるって事は……」
「何か手に入れたの?」
「教えて!」
凄い食い付きなんだけど……。
「いや、何でそんな反応なのさ? 何か問題でもあるの?」
「あ~、蒐君は知らないか~」
「昨日話したでしょう? 私たちの依頼」
「あ、ナントカの沼がどうこうってやつ?」
「ゴッタ沼だ……覚えてねぇのかよ」
「そこの近くにね」
「出るのよ」
「七面倒なレイドボスが」
あ、ひょっとしてナントさんが言ってたやつかな?
「ひょっとして、死刑宣告者ってやつ?」
「何だよ、知ってるんじゃねぇか」
「名前だけはね。ナントさんに聞いた。で? それが?」
「だから、ナンの町の西側のフィールドに出るのよ」
「βテストじゃ、あいつの毒で幾つものパーティが壊滅したからな」
「ヒールの魔法も効かないし……」
「あ、それって、自己免疫反応だからじゃない?」
何気なく言い放った蒐一の言葉に、三人が詰め寄りそうになる。
「蒐! 何か知ってるのか!?」
「隠すのはナシ!」
「自己免疫って……そうなの?」
三人の血相に少し引き気味の蒐一であったが、気を取り直してナントと話し合った内容を説明する。
「突発性血小板減少症ね……成る程」
「正しくは特発性血小板減少性紫斑病っていうらしいけど……ゲームの中ではそれに似た症状を引き起こす毒って扱いみたいだね」
「自己免疫で血小板を破壊しているんじゃ、治癒魔法やポーションは確かに逆効果ね」
「運営も意地が悪いよね」
会話が成立している蒐一と要の脇で、ポカンとした感じで取り残されているのは匠と茜の二人である。
(「……なぁ、何を話してるのか解るか?」)
(「何か難しい事を話してるのは解る」)
(「事故の話……だよな?」)
(「免責とか言ってたよね」)
(「で、決勝で上手くいかなかったと」)
(「え? 決定版が壊れたんじゃないの?」)
ヒソヒソと見当外れの事を囁き合う二人を見かねたのか、蒐一と要が声をかける。
「二人とも、違うからね?」
「免疫も血小板も生物の教科書に載ってる……っていうか、血小板は中学校でも話には出てきたじゃん」
「うぅ~……そんな昔の事なんか……」
「覚えてる訳無ぇだろ……」
投げやりな二人に溜息を吐きつつ、蒐一と要が内容を噛み砕いて説明する。
「……つまり、蒐君の薬があれば西の沼地の攻略が進むの?」
「いや……茜が言うほど簡単じゃないな。死刑宣告者は紫斑毒が無くても硬いボスだからな。……やっぱりレイド単位の戦力が必要だろう」
「薬があるという事で、参加者を集め易くはなるかもね」
「ちょっと待ってよ。実際に効果があるかどうかは判らないよ? 正しい使い方も不明だし」
「そうね……濃厚血小板と同じ扱いなら、飲んでも浴びせても効果が無いかもね」
「……だったら、掲示板に流すのはまだ早いか?」
「一度は試してみないと駄目でしょうね……私は嫌よ?」
「あたしもパス!」
「うちのチームだけじゃあ手が足りないしなぁ……蒐、『黙示録』は動かないのか?」
「あ~……ナントさんが連絡してみるとか言ってたけど」
「だったら、もし『黙示録』が動くようなら教えてくれるか? 場合によっちゃ一枚噛みたいしな」
「あ~……確約はできないけど、そうするよ」
「あ、そろそろ予鈴だよ?」
「んじゃ、続きは放課後な」
次話が少し短いので、同時に公開します。




