表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
915/931

第百六十三章 プリズン・ブレイク~Afterward~ 3.その名はスカラベ(その2)

今回も解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。

 球形なるが故に、全方位に即時の方向転換が可能であり、容積に対して外表面、つまり攻撃を受ける面積を最低限に抑えられる。それ故に外圧に対しても強い抵抗力を示し、下手な要塞などよりずっと高い防禦(ぼうぎょ)(りょく)を持つのだという。



「……しにてはショボくね? コレ」

「これは完成形の雛形(ひながた)に過ぎん。本来のメガ・ボールは直径二十メートル、重量は三百~五百トンになる」

「あ、全長五十メートル、体重二万トンとかじゃないんだ」

「その重さでは慣性が大き過ぎて、停止や進路変更が難しいじゃろう」


(「あ……慣性とかあるんだ、このゲーム」)

(「そういうのはサックリ無視すんのかと思ってたな」)



 ――そんな事は無い。SRO(スロウ)にもちゃんと慣性の概念は存在する。

 何しろ「慣性制禦(イナーシャルコントロール)」があるくらいなのだ(笑)。



如何(いか)なる敵の攻撃も(たま)も撥ね返し、人馬も軍船も踏み潰して、山を越え川を過ぎ、進み行く戦車、精騎の味方となる筈だったのじゃ」

「いやいや、そんな馬鹿でかい図体、発見されて先手を打たれたら終わりじゃん」

「そこに抜かりは無いわい。ちゃんと隠蔽(ステルス)機能も付与してある」

「お、おぉ……姿を見せずに現れたり消えたりできる……の、か?」

(しか)り。万全無敵の戦車となる筈だったのじゃ。……なのに……あの解らず屋どもときたら……!」



 〝闇ギルドは社会の隙と歪みを()く事で利益を追求する集団であり、そのためには既存の社会構造が健全に維持される事が望ましい。よってギルドが世界征服を(もく)()む秘密結社となる事は無い〟……という理由の(もと)に、開発は却下されたらしい(笑)。犯罪結社としては或る意味正しいスタンスである。

 ただし、球体の乗り物というアイデア自体は評価され、申請より大幅にスケールダウンした形、即ち「メガ・ボール」ではなく「学究者(スカラー)(べー)」として、研究が続けられているらしい。



「近頃の若い(もん)覇気(はき)が足らん!」

「いや……良識を持ち合わせているだけじゃないのか?」



 プリプリしているドクター・ヘイを見て、どうやらこのオッサン、闇ギルドでも持て余し気味らしいと察する三人組。身内としておくには持て余すが、()りとて放流するのはもっと怖いという理由で、飼い殺しに近い扱いを受けているのだろう。

 ただ、完全に飼い殺しにするには惜しい才能の持ち主なので、適度に操縦しつつ開発研究を許している……というのが実態のようだった。



「次の質問なんだが……これって2号機だよな? ……1号機はどうしたんだ?」

「うむ……少々野心的な設計を詰め込んだのがいかんかったのか、爆さ……バラバ……ちと不具合を起こしての」

「……今、〝爆散〟とか〝バラバラ〟とか言わなかったか?」

「気のせいじゃ。……この2号機は、正直不満なところはあるが、保守的な設計を採用しておるからの。安全性は較べものにならんくらい高まった筈じゃ」

「……1号機はこれとは較べものにならないくらい危険だった……って事だよな?」



 そんな危なっかしさを秘めた球体戦車の巨大版――しかも新設計てんこ盛り――の開発建造など、とても恐ろしくてやってはいられない。闇ギルドの判断を(たた)えるべきであろう。

 この「学究者(スカラー)(べー)」にしても、不具合は大幅に改善してある()だと言うのだが……だとしても、進んでテストドライバーを務めたくなるようなマシンではない。


 しかし――である。

 立場と見方を変えてみれば、そんな危険な実験機だからこそ、死に戻り上等のプレイヤーの出番に打って付けと言えるのではないか?


 そういった判断の(もと)、三人は相談の上でこの依頼を受ける事にしたのだが、



「はぁ? 今からコレに乗ってシアの町へ行け? 冗談言わんといてくれるか?」

「こちとら運転っつーか操縦の仕方も習ってないんだ。座学も教習も補助員も無しで、どうやってシア(くんだ)りまで行けってんだよ」

「第一もう夜だろうが。俺たちゃログアウトしなきゃなの!」



 ブーブーと不平を鳴らす三人であったが、そんな些事(さじ)に頓着するようでは、「マッド・アルケミスト」の尊称(笑)など授かる訳が無い。



(あなど)るでない。そのくらいの事は百も承知、二百も合点(がってん)じゃ。この『学究者(スカラー)(べー)』を、そんじょそこらの乗り物と一緒にしてもらっては困る。地図と行き先をインプットしてやって、後は人工知能に任せてやれば、放って置いても目的地に着くわい」

「「「おぉ……」」」

「まぁ、正確な地図が()ぅてはどうにもならんのじゃが」

「「「――おぃ」」」



 ……とまぁこういった次第で、一抹(いちまつ)どころか()(まつ)三抹(さんまつ)の不安を胸に抱きつつも、三人はフンコロ……「学究者(スカラー)(べー)」に乗り込んで、まだ見ぬシアの町へと出発したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>進み行く戦車、精騎の味方となる筈だったのじゃ >お、おぉ……姿を見せずに現れたり消えたりできる……の、か? 元歌をよくぞここまで!! (^o^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ