第百六十三章 プリズン・ブレイク~Afterward~ 2.その名はスカラベ(その1)
今回解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。
さて、SROの攻略陣に多大な衝撃をもたらした脱獄三人組であるが、前日の夕暮れにナンの町の監獄を抜け出した筈の彼らが、如何にして翌朝シアの町に到着する事ができたのか。その理由を解してもらうために、まずは彼らのあの後について述べておくとしよう。
何やら裏のありそうな理由から、ドクター・Hなる怪人物――闇ギルド曰く「マッド・アルケミスト」――の助手に決まった三人組。その彼らに早々に下された任務というのが、
「……見るからに怪しげなメカの試運転だった件」
「無礼者め。これのどこが怪しげだと言うんじゃ」
「いや、如何にもイカれた外見じゃんよ」
「そうそう。これを乗り物だと言われてもな」
まぁ確かに、ソレが乗り物に見えるかと訊かれたら、十人中十二人、事によると十五人くらいまでが、力強く〝否〟と答えるだろう。
何しろそこに鎮座在しているのは、
「ボールじゃん」
「ボールだよな」
「あれな。ハムスターとかを中に入れて運動させるやつ」
――透明な外殻を持つ大型の球体であった。
ただ、ハムスターなどの運動用として普及していたペット用品とは違い、単なる透明な球体ではなく、内部に操縦席らしきものを備えた二重構造となっていた。案ずるに、窓を兼ねた外側の球体が転がっても、内部の操縦室は回転せずに水平を保つようになっているのだろう。
「バブ○マシン……いや、エンゼ○号か?」
「また古いのを持ち出したな……あれは宙に浮いて飛ぶんだろ。これはどっちかと言えばビッグ・○ーリーじゃないのか?」
「それも負けず劣らず古いけどな。こいつはボール形だから、差し詰めビッグ・ボーリーってところか?」
……などと、ミモザが聞いたら嬉々として乱入して来そうなネタで盛り上がっていた三人だが、そこへ傍若無人と言うか唯我独尊と言うか……とにかくそんな感じに割り込んで来たのがドクター・ヘイであった。
「何を訳の解らん事をくっちゃべっとるか。これはそんな軽薄な名前ではないわい」
「あ、名前あるんだ」
「何て名前?」
「聞いて慄け。これはメガ・ボールの実証試験2号機。その名も『学究者・B』じゃ」
ふんすという鼻息が聞こえてきそうな感じで大見得を切ったドクター・ヘイであったが……聴衆三者の反応は微妙であった。
「……スカラベ?」
「って……タマオシコガネか?」
「フンコロガシ……だよな?」
そうすると、この球体はつまり……
「いやいや、その件はちょっと措いといて……質問があるんだがいいか? 博士」
「うむ。質問なら随時受け付けておるぞ」
〝博士〟呼ばわりが心を擽ったのか、意外に上機嫌のドクター・ヘイに、三人組は交々に問いを放つ。
「まずなんだが……〝メガ・ボール〟って何だ?」
「うむ。大怪球メガ・ボールとは、敵兵も城壁も何もかも踏み潰して転が……進軍する、無敵の球体戦車じゃ」
「「「球体戦車」」」
「うむ!」




