第百六十二章 図書館自習室 1.使役獣と幽霊
リアル会です。三話構成になります。
今日は授業の無い土曜日であり、普段なら翌日曜日と合わせて生徒たちにとっては連休扱いなのだが……さすがに期末試験まで二週間を切ってくると、親たちの目も厳しくなる。蒐一たち――より正確に言えば匠と茜――にとっても状況は同じであり、いつものように連んで遊びに出かけるというのは難しい。その代案として要が提案したのが、〝勉強会という事で図書館の自習室を借りる〟という方策であった。
飲み食い乱闘――前に空手の稽古をやらかした馬鹿がいた――は禁止だが、一応は防音という事になっているし、余程の大騒ぎをしない以上は、多少の私語はお目零しというのが暗黙のルールになっている。
まぁ、黙々と読書や勉強に励む以外に、班単位での自由研究の相談などにも使われるので、私語の禁止を厳格化したら、折角の自習室が活用できないという事もある。なので或る程度の私語は黙認せざるを得ないという事情もあるし、それに付け込む者たちがいるのも事実ではあったが、あまり羽目を外し過ぎると又候ルールが厳格化されるのは目に見えているので、そこは付け込み側も程々にしている……というのが実情なのであった。
そんな事情を知っているだけに、匠と茜の二人は喜び勇んで「自習室」にやって来たのだが、
「あら? 試験が間近に迫ったこの時期に『自習室』を借りた以上、何をするかは明らかでしょう?」
――という、柔やかな氷の魔女の台詞に硬直する事となった。ちなみにその傍らには、やはり微笑を浮かべた微笑みの悪魔が降臨している。
……彼らに逃れる術は無かった。
だがしかし、そこは「飴と鞭」というものを弁え尽くした魔女――ちなみに、「黒幕の似合う女」というのが幼馴染みたちの一致した評価――の事。ちゃんとこの時も二人の集中力が切れる頃合いを見計らって、SROに関する雑談会に切り替える。
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蒐一レポートの前にまずは前座、自分たちの現状報告という流れになったが、生憎と匠の所属する「マックス」は馬車でアルファンの宿場に移動したばかり。報告するほどの事は何も無いという事で、茜と要の所属する「ワイルドフラワー」の報告という話になる。こちらも茜と要自身には何も報告すべき事は無かったのだが、
「へぇ、三人とも使役獣を確保できたんだ」
「えぇ。少し気になる点はあったんだけど」
〝傷付いた幼獣〟の種族が最初は未決定で、キーパーソンらしきNPCに出会った時点で種族が決定された。恐らくはどの「キーパーソン」に出会うかによって、その後の展開が大きく変わるのではないか……という話には、蒐一も大いに興味を惹かれる。何しろ【従魔術】【召還術】【死霊術】のみか、今や新たに【人形遣い】を加え、使役術のクアドラブル・ホルダーとなっているのだ。関心を抱かない訳が無い。
ちなみに、ミモザがパピィ・ジャガー・スパイダーの連続登場に感心していたようだという話には、蒐一も何やら思うところがあったようだが、特段口には出さなかった。
ただ――蒐一には別に思うところがあったようで、
「使役術繋がりだから、ここで話しちゃうけどさぁ……」
――と前置きして、カンチャン村への道中で会った幽霊(仮)らしき少年の事を報告したのだが、【死霊術】持ちには能くあるパターンだと軽く返されて凹む事になった。あの少年はやはり幽霊であったのか。
だが……嘗てトンの町の墓掘りクエストで見たボンヤリとした幽霊とは違い、今回は生者と変わらない姿に見えたのだが?
「あ、そりゃ単にスキルのレベルが上がったからだろ?」
「待てよ匠。僕は【死霊術】なんて碌すっぽ使った事が無いんだぞ?」
正確には【死霊術(聖)】なのであるが……とにかく、オカルトと名が付くものは遍く断固お断りを信条としている蒐一の事だ。(聖)の添え字が付いていようと、【死霊術】などという禁断のアーツに手を出す訳が無い。
だが……幼馴染みたちからの指摘は無情であった。
「それって多分、【使役術】に含まれてるからじゃないかな?」
「そうね。【使役術】という括りになってるから、【従魔術】や【召喚術】のレベルアップに引き摺られたんだと思うわ」
「なん……だって……?」
蒐一にしてみれば青天の霹靂……どころか、後から味方に斬り付けられたようなものである。まさかそんな罠仕様になっているとは。
「いや……どっちかと言うと親切設計なんだと思うぞ?」
――蒐一の視点では断じて違う。
が、それをここで主張しても仕方がないと思ったようで、
「……まぁいいや。それより、感謝の標としてお墓参りには行かなきゃだよね?」
「あー……それは、な」
「そうね。ゲームとしてもマナーとしても行くべきでしょうね」
「感謝の心ははっきり表すのが大事!」
「う~ん……けど、お墓の場所が解らないんだよね」
あの時は別に墓を探していた訳ではないが、幾ら記憶を辿ってみても、途中に墓標らしきものは無かった。これは後輩二人や村人に確認しても同じである。
「多分だけど、カンチャン村にある筈よ」
「だな。蒐の目的地がカンチャン村だった以上、墓もカンチャン村にある筈だ」
「そうなの?」
「うん! そうだよ!」
――どうやらそういうものらしい。
なら明日にでも、あの少年のお墓を探してみるとしよう。
蒐一「うん、『ジャガー』が鞭を使えるんじゃないかとか、『スパイダー』なら魔道具を扱えるんじゃないかとか、別にそんな事は思ってないよ?」
要「そう……」




