第百六十章 「ワイルドフラワー」使役獣獲得事情 7.続・契約
今回も解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。
契約は既定の方針となりつつあったが、それにつけても気になるのは、このような状況に至った経緯である。何かおかしなイベントが起きつつあるのなら、危機管理の上からも早めに察知しておく必要がある。
現在の状況と【鑑定】の結果から、三人が額を寄せ集めて推測したところでは、経験の浅い幼体二頭が、偶々出会ったのが不幸であったらしい。ミミックジャガー(変異種)の幼獣がトラップスパイダー幼体の張った網に躓いた、それが全ての発端であったようだ。
双方にとって不運な事に、経験の浅さが災いしたのか、トラップスパイダー幼体の張った網が無闇に頑丈強靱であった。網にかかった形のミミックジャガー(変異種)の幼獣が逃れようと暴れたが、憖糸が丈夫なせいで網を破る事ができず、宿主のトラップスパイダーは疎か巣を支えていた木まで巻き込んで、雁字搦めの一塊となったらしい。
モンスター(幼体)双方も理不尽な状況に立腹したようだが、僅かに残った網にかかった獲物を食し、天敵はミミックジャガー(変異種)がどうにかして追い払う事で、呉越同舟のままこれまで生き存えてきたようだ。しかし、栄養不足による衰弱は如何ともし難く、このままでは死を待つばかりという絶体絶命の状況で、噂を聞いてやって来た「ワイルドフラワー」の三人に発見された……というのがこれまでの経緯であったらしい。
取り敢えず、背後に事件性や危険性は無いようだと、ほっと胸を撫で下ろす三人。心置き無く契約に進めるというものだ。
「パピィに続いて、ジャガーとスパイダーの揃い踏み……順序はともかく、中々深いものがある」
「……何の話?」
妙に感動しているミモザの様子は、そこに何かの暗合がある事を窺わせるが……どうせあのミモザの事だ、碌でもなくマニアックな事に決まっている。
それでも一応はリーダーとして追及を試みたのだが、それはあっさりと躱されて、
「何でもない。それよりリーダー、こうして二体が揃って登場したからには、二体の両方と契約すべき。セットボーナスが期待できる」
「いや……セットボーナスって……防具とかじゃないんだから……」
ミモザの提言に戸惑いはしたが、あの捻くれた運営の事だ、こうして二体揃って登場したのには、何かの裏があってもおかしくない。運営の掌の上で踊るようなのは業腹だが、むざむざ利益を見過ごすのも、それはそれで癪である。
「ミミックジャガーの子供なら、あたしとしては不満は無いけど……ミモザはクモでいいの?」
「ん、問題無い」
それではというので二体にそれぞれ使役契約を申し出ると、このままではお先真っ暗という事をモンスターなりに理解していたと見えて、恙無く契約を結ぶ事ができた。何か弱みに付け込んだようで少し後味が悪いが、
「運営がこういう状況を設定した以上、これが正しい解決法と見るべき」
「あたしの場合も似たようなもんだったし、精神衛生上もその方が良いよね」
「まぁ……それもそうか」
「で、二人とも名前は何にするの?」
「あー……名前かぁ」
使役獣との契約は、使役主が名前を与える事で完了する。ここでいい加減な名前を付けると忠誠心にも響いてきそうだし、徒や疎かにしていいものではない。
「一応はミミックジャガーみたいだし、在り来りだけど『ミック』にしようかと思うんだけど……よし、通った」
使役獣の場合もプレイヤーと同じで、名前の被りは基本的に認められない仕様となっている。エリンの言うとおり〝在り来り〟なネーミングではあるものの、抑ミミックジャガーをテイムしようという豪気なプレイヤーがいなかったようで、「ミック」という名はすんなり承認されていた。
「ミモザの方は?」
「ん。スパイダーなら『アラシ』一択。問題無い」
「「そう……」」
なぜ〝アラシ一択〟なのか問い詰めたい気もするが、どうせこれも碌でもないネタに決まっている。二人は諦めたようにスルーしたのであった。




